2025/11/12
無可動実銃に見る20世紀の小火器 201 FNハースタル MINIMI
Mk3
2013年11月、FNハースタルは改良型Mk3を発表した。この改良は、過去約30年間の運用実績とユーザーからのフィードバックを反映したものだ。
Mk3は5.56×45mm仕様と7.62×51mm仕様がある。
Mk3という事から、当然Mk1, Mk2となるモデルが存在するわけだが、Mk1とはアメリカ軍が1982年2月に採用したM249 SAWがそれに相当する。これに対して1985年にPIPに基づく改良が加えられた。これ以降のモデルをMk2という。従って多くの国が採用したMINIMIはMk2に相当する。これは5.56×45mmモデルの場合だ。
7.62mm仕様は2001年に登場したが、その後に大きな改良をおこなうことがないままMk3となっている。従って7.62mm仕様にはMk1, Mk2は存在しない。強いて言うならMk3より前のモデルがPre Mk3、またはMk1という事になるだろう。
Mk3の改良箇所として、まずストックが挙げられる。新型は5段階に長さを変更できるテレスコピックタイプで、チークピースも6段階の可変型になった。もちろんリコイルを低減する油圧バッファーは新型ストックにも組み込まれている。ハンドガードは形状が変更され、且つ3方向にピカティニーレイルが標準で配置された。バイポッドの形状と操作性、および機能が改良され、コッキングハンドルもより使いやすい形状に変更されている。またフィードトレイも改良され、よりスムースにリンクベルトを交換できるようになった。
7.62×51mm仕様のMk3は、コンバージョンキットを利用して5.56×45mm仕様に変更が可能だ。一方、5.56×45mm仕様を7.62×51mm仕様への変更はできない。
新型Mk3はベルギー、ノルウェー、ポルトガル、ウクライナ、コロンビア、ベトナムなどで採用され、日本の自衛隊も2023年に既存のMINIMIとの入替で調達することを発表している。自衛隊に納入されるMINIMI Mk3は住友重機工業がライセンス生産を止めてしまったため、ベルギーのFNハースタル製だ。
要求仕様の変化
1982年以降、多くの国で採用されてきたMINIMIだが、その将来性には少し陰りが見えている。
USMCは2010年、HK M27 IAR(Infantry Automatic Rifle)を、M249SAWの後継火器として採用することを決定した。M27 IARは、ガスピストン仕様のM4スタイルHK416のヘビーバレルモデルであり、ベルト給弾機能もないし、クイックバレルチェンジもできない。そしてクローズボルトだ。とてもM249と同等の弾幕を張れる火器ではない。しかしUSMCは、M27 IARが持つ軽量さと高い射撃精度は、発射弾数で敵を制圧するM249 SAWより有効な小火器であるとして、M27 IARを配備した。
現代においてアメリカ軍ほど多くの戦争や紛争を経験している軍隊はない。様々な戦闘経験を持つUSMCが、M249SAWをM27 IARにほぼ切り替えたということは、フルオートマチックで制圧射撃をおこなうという戦闘状況が近年ではほぼ無くなったということなのだろうか。
一方、アメリカ陸軍は、M249 SAWの後継機として、SIG SAUERのM250 SAWを採用、すでに一部部隊で配備を始めている。この新型SAWはNext Generation Squad Weapon(次世代分隊火器)として採用された6.8×51mm口径のライトマシンガンだ。
このM250にはファイアコントロールシステムと称するレーザーレンジファインダー、バリスティックコンピュータ(弾道解析装置)、環境解析装置、レーザーサイト、デジタルコンパス、ワイヤレスコミュニケーションツールを一つにまとめた電子機器を搭載、正確な射撃をサポートする機能が加わっている。まさに次世代型マシンガンなのだが、このM250もまたクイックバレルチェンジ機能を持っていない。開発当初はその機能があったのだが、アメリカ陸軍は、軽量化を優先し、その機能を外すことを要求した。これは、アメリカ陸軍が今後はバレル交換を必要とするような制圧射撃をほとんどおこなわない方針であることを意味しているように思える。
M250だけではない。2021年5月、FNは軽量マシンガンEVOLYS(エヴォリス)を発表した。これもMINIMIと同じベルト給弾マシンガンだが、やはりクイックバレルチェンジ機能を持っていない。このマシンガンはアメリカのNext Generation Squad Weaponプログラムにエントリーしたモデルであり、M250と同様にクイックバレルチェンジ機能は不要だとアメリカ陸軍から言い渡されたのだろう。
だとしても、FNはこのプログラムから外れた段階でEVOLYSにこの機能を組み込むことはできたはずだ。しかし、FNはそれより軽量化を優先、クイックバレルチェンジ機能を持たないままエヴォリスを発表した。FNとしてはMINIMIとの差別化を図る意味があるのかもしれないが、一つだけはっきりしているのは、“クイックバレルチェンジ機能を持たないマシンガン”の需要が今、確実にあるという事だ。
さらに英国軍の判断にも注目したい。彼らはFNハースタル製のMINIMIであるL110A3の運用を、2018年で終わらせた。これはMINIMIが英国軍の求める射撃精度を持っていないため、敵を制圧する上でじゅうぶんな能力に欠けると判定されたこと、そしてMINIMIを運用するために必要な弾薬の量も多く、これを装備する兵士に掛かる負荷が大きいことも問題視された。その上で、従来MINIMIが担っていた部分は、アサルトライフルのL85A3とシャープシューターライフルL129A1でとりあえず補えるとも言っている。
L85A3は悪評で有名なプルパップアサルトライフルL85A1の2度目の改良型で2018年に採用されたもの、L129A1は2009年に採用されたLMT(Lewis Machine & Tool)製7.62×51mmのAR系バトルライフルで、シャープシューターライフル(一般的にはDMRと呼ばれるセミオートマチック簡易スナイパーライフル)として使用されている。この2つを組み合わせても、とても弾幕による制圧射撃はできないが、英国軍はそのような戦闘手法よりも精密な射撃による制圧をおこなうことが正しいとしている。但し、英国軍は必ずしもマシンガンが不要だとはいっていない。必要な時はL7A2 GPMG(FN MAG)で制圧射撃をおこなうとしている。その上でEVOLYSのような軽量マシンガンを導入する選択肢は持っているようだ。しかし、MINIMIの運用を止めてから7年が経過しているが、具体的な動きは見られない。

FN Herstal MINIMI PARA
使用弾:5.56×45mm
全長:750mm / 910mm
銃身長:349mm
重量:7.44kg(無可動実銃化加工前)
装弾数:30 / 100 / 200発
作動方式:ロングストロークガスピストン
回転速度:700-850RPM
無可動実銃
価格:¥1,650,000(税込)
(無可動実銃はボルトが溶接されているため、ボルト操作、装填、排莢等はできません。)
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Text by Satoshi Matsuo
Gun Pro Web 2025年12月号
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