2025/05/11
FN ブラウニング モデル1910
FN BROWNING
Model 1910
Text & Photos by Toshi
Gun Professionals 2016年1月号に掲載
ブラウング モデル1910は、日本人に馴染み深い拳銃だ。戦前の日本には.32口径のこのモデルが多数輸入され、一般市民や警察が使い、戦中には将校の私物拳銃としても活用された。それらの一部は戦後、私服警官の装備となっている。そして1965年、MGCがこれをモデルガン化、1971年までの約6年間、日本製アクション映画に登場しまくった。さすがに最近では影が薄くなったが、ある世代以上の人達にとって、この銃は今でも胸を熱くする存在だ。
オイラのブロはFNだ
今(2015年)を去ること数ヶ月前の夏のある日、日本に住む知り合いから、「くろがねさんの『ヴィンテ-ジモデルガンコレクション』で、私のコクサイM1910を記事資料として採用して頂きました」とのメールが来た。どんなレポ-トになるか楽しみです、という内容だった。
2015年10月号のあのコーナーだ。自分もワクワクで読んだ。その少し前の6月号の同コーナーでは、マルシンのプラ製M1910も紹介されていた。
ああ、そろそろ自分もブローニングの“サンハチマル”、実銃を何とかせねばなるまい。あまりにも長い間、買い逃しが続いている。
と反省していたら、ひょっこり買えてしまいました。ガンショーで発見、FN製の.380口径です。
実は半年ほど前、同じショーで同じ人物が、この銃を売っていたのを自分はまんまと逃している。その日は確か、他の銃を買ったので手が回らず、後で散々悔やんだ。「売れてなかったんだ…」なんか、運命を感じたぜ。
自分の場合、わりとこーゆー再会は多い。ショップで買い逃した銃が数ヵ月後にショップに返品され、価格も下がって大喜びで買った例が二回ほどある。念ずれば通ずとはまさにこの事か。
今度こそは逃さないぞと覚悟を決めつつ、一応チェックを入れる。パッと見の程度は極上。一般にモデル1910は使い込みが激しく、このレベルのものはなかなか出ない。が、だ。サムセイフティを下げると、フレームに小さな丸い穴というか隙間が見える。「こんなだったっけ?」グリップのFNの花文字も、心なしか貧相に見えた。イメージ的には、MGCの左右にダイヤのマークが入ってるヤツを思い浮かべる自分。「う~ん、こんなだったっけ?」と、にわかに疑心暗鬼が広がる。
さらに、ブッシングに引っ掻いたような傷もある。多分コレは、銃の構造を知らないヤツが、ペンチか何かで挟んで回そうとしたのではないか。値段を聞けば380ドル、全然お手頃なのだが…すると、向こうから「325でいいから」と頼みもしないのに値段を下げてきた。顔色を読まれたか。
よし、もういいと、ようやく購入に踏み切ったのだった。325ドルは超破格値だ。転売したら即利益が出そうなくらい。
先々月のHK4といい、その前のハイパワーといい、長年ズルズルと買い逃しを続けたモデルが最近ポツポツ集まり出した。前にも書いたが、人生短いから、「もっと程度が良くてお値段お手頃なヤツが出るまで待とう」だなんて引き伸ばしはやめることにしている。テッポウ一挺でシアワセな気分に浸れるのなら、それでイイじゃないか、みたいなね。

ま、安っぽい持論はともかくとして、さっそくリポートかますかと思い、ブローニングを買いましたと松尾副編集長へ報告したら、
「いいですねえ。ちなみに戦後モデル、それともFNマークの戦前モデルでしょうか?すなわちコクサイ型か、マルシン、CMC、MGC型かということです」のご質問。で、FNですと答えたら、
「そりゃ良かった。もちろん、どちらも良いですが、おじさんはFとNを組み合わせた文字がグリップに刻まれたあのモデル1910がFN Browning 380なんだと思ってしまいます。子供の頃に見ていた日本のアクション物では、みんなあのブラウニングが大活躍でした。キーハンターとかね。スマートな(日本語的な意味でのスマート、正しくはスタイリッシュな)ブローニング380は当時の基本だったでしょう。私のような50代後半以上でモデルガンの洗礼を受けた人にとっては基本中の基本ですから。アレを観て、自分はオート派になりました」
自分は、松尾副編集長よりはちょっとだけ若い世代だ。FNとブラウニングでは、どっち派なのか良く分からない部分はある。基本的に古い物好きだから、その点ではFNだし、日本にMGCとCMCのモデルガンを持っている点でもFNだ。しかし、モデル1910で一番印象に残っているのは、旧Gun誌のイチロー氏のブラウニングの記事(79年10月号)なのである。ハイパワーとベイビーとの三つ並びに痺れたクチなのだ。その影響で、銃購入の直後から、さっそくフィンガーレスト付きのマガジンなども物色し始めたくらい。
そんなわけで、銃自体はFNでもブラウニングでも両方オッケーだったような…う~ん、でもやっぱり、心の何処かでは、FNのほうが“らしい”というか、オーソドックスなビンテージ感に惹かれている部分はあるかもしれん。いやはや、マニア心ってのはむずかしいもんである。