2025/04/26
COLT DIAMONDBACK プレミアムなDフレーム
COLT DIAMON DBACK
プレミアムなDフレーム
Text & Photos by Toshi
Gun Professionals 2015年1月号に掲載
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ダイヤモンドバックは廉価版パイソン…そんな話を聞くことがあるが、実際のダイヤモンドバックを目の前にすればその印象は大きく変わる。小さく引き締まったフレーム、シックで硬質感のあるブルーそしてなによりもベンチレーテッドリブ付のフルラグバレル…地味なDフレームを華麗に変身させたモデルがダイヤモンドバックだ。そんなはずは無いって?ならばご覧頂こう。2.5インチと4インチ、そしてS&W Kフレームに6インチバレルをねじ込んだ自称ダイヤモンドスミスをここに集めてみた。
2.5インチ
「ダイヤモンドバックはカッコ悪い」と、昔は思い込んでいた自分である。
それは、CMCのモデルガンが原因だ。設計者の六人部さんのおかげである。
何処か貧相な、ひん曲がったような佇まい。とりわけ、短銃身モデルの妙な寸詰まり感がいけなかった。
そんな悪い印象を、根底から覆してくれたのがGun誌78年11月号のFurukawaさんの記事だ。実銃とモデルガンを比較して違いを見せてくれていた。実銃のバレル長は2.5インチでスラッとした印象なのに対し、モデルガンは2インチしか無く(カタログでは2.5インチと表示)、故にひどい寸詰まり感が出てしまっていたのである。ボディもモデルガンはひと回り小さく、それが弱々しい印象を醸し出していた。
このスペイン発の記事を読んた瞬間から、「ダイヤモンドバックはカッコいい」と、中学3年生の自分のイメージは180°回転した。以後、アクション映画等の中でその姿を追い求めることになるワケだが、コレがまた大変だった。なぜなら、パイソンに似過ぎていたからである。
ダイヤモンドバックは、1966年、パイソンのミニチュア版として登場した。口径は.38SPLと.22LRと.22WMRの3種で、.357は撃てない。ディテクティブのDフレームをベースに、ターゲットハンマー、ベンチレーテッドリブ、フルレングスのアンダーラグ、そしてフルアジャスタブルのリアサイト等々を加えて、王者パイソンの雰囲気をそっくりそのまま再現してある。
で、パイソンのミニチュア版としてあまりにそっくりなために、ダイヤモンドバックなのかパイソンなのか、画面ではなかなか見分けが付かないのだ。
その最たる例が、マックイーンの『ブリット』(68年)だ。結論から言えば、ブリットの銃は絶対にダイヤモンドバックだ。なぜなら、クライマックスの空港の銃撃戦のシーンで、辛うじてハンマーにノーズが見えるからだ。あれこそDフレームの証拠。パイソンのハンマーにノーズはないのだ。
しかしこんな細かい違いは、ビデオやらDVDやらが普及してからようやく確認できた事実であり、ビデオデッキなど無く、テレビ放映の一発勝負に賭けるしかすべが無かった中学3年当時の知識も浅い自分には、識別はほぼ不可能だった。おまけにブリットは滅多に銃を抜いてくれなかったから、余計に難しかったわけで。
そういえば、古いMGCの出版物を見ると、ブリットの銃はM19コンバットマグナムの2.5インチだとする記述が数多く見える。例えば昭和44年1月発行のMGCニュース第7号とか同年4月発行の第8号、さらにコンバットマグナムのカタログではマックイーンの写真までちゃっかり載せて「ブリットもご愛用」と紹介している。映画の公開当時、MGCはまだパイソンを出しておらず(昭和44年に発売)、ちょうど売り出し中のコンバットマグナム(昭和43年発売)の人気を高める為の確信犯的演出だったのかもと、うがった見方も出来るが。
実銃のダイヤモンドバックは、高級感ではパイソンにやや及ばないものの、他のDフレーム機種とは一線を画する、一枚上手の、一味違う独特の存在感を放っている。フレームがパイソンより小さい分、バレルが微妙に長く見え、全体としてスマートで軽快な印象だ。
キャラがシャキッと立っており、精悍さすら漂う(誉め過ぎ?)。少なくとも、俗に言う“廉価版パイソン”とか“パイソンもどき”の表現にあるネガティブ感やら安っぽさは、自分には一切感じられない。86年に生産が終了するまでに11万挺を超える数が造られたというから、人気のほうも十分高かった。
ご覧の個体は76年製だ。今から16年ほど前に、シスコのガンショーにて350ドルの格安で購入した。相当嬉しく、買った相手の顔まで鮮明に覚えている。大事大事で、まだ一度も撃った試しがない。
パイソンのいわゆるロイヤルブルーは光り輝くリッチな青だが、こちらは派手さを押さえたシックで硬質感のあるブルーだ。コレはコレで十分美しい。それにパイソンは、たまに下地の磨きがていねい過ぎてエッジがだれている場合もあったりするから(80年代の製品に顕著)、一概にどっちが綺麗と言い切れない部分もある。
そのパイソンとの価格差だが、76年時点でダイヤモンドバックが193.50ドル、パイソンが318.95ドル。その差は1.6倍以上。迷う人なら大いに迷う差といえるだろう。
なお、ダイヤモンドバックの登場と同時期に、Dフレームのグリップフレームの短縮化が始まっている。つまりこのモデルは、最初からグリップフレームが短い。ココが、パイソンとの識別のもう一つのポイントとなる。即ち、サービス・タイプのグリップの場合、パイソンはグリップフレームの底部が露出するが、ダイヤモンドバックはグリップが底部を包み込むカタチとなるのだ。この違いが画面で確認できればしめたものなのである。
ともあれ、あの硬派で地味っぽいディテクティブを、よくぞここまで色っぽく華麗に大変身させたものではある。他社のコピー物では決してこうはいかないだろう。本家コルトのセンスの良さが光るモデルだ。