2025/04/27
【NEW】Rost Martin RM1C テキサス州で製造されている9mm自動拳銃
Text and Photos by Terry Yano
Special thanks to Oleg Volk
ポリマーフレームのストライカー撃発方式9mm自動拳銃は、米国内において公的機関のサイドアームや民間のディフェンス用の主流となって久しく、数多のブランドによる製品が販売されている。飽和状態といっても過言ではないこの市場にあえて参入した新規メーカーがロストマーティンで、同社が2024年に発売した初の製品がRM1Cだ。
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新しい米国の銃器メーカー
ロストマーティンは、米国テキサス州ダラスで2020年に設立された銃器メーカーだ。オーナーはご夫妻で、クリス・トゥーマー氏(Chris Toomer)は米国海兵隊第3海兵師団第3大隊の将校として国家へ奉仕、退役後はスプリングフィールドアーモリーの研究開発部や製造部に勤務したとのこと。奥さんのステファニーさん(Stefany Toomer)は、1970年代にスプリングフィールドアーモリーブランドを銃器業界によみがえらせたロバート・リース氏(Robert Rost Reese)の孫娘で、同社ではブランドコミュニケーションマネージャーであった。
そんなお二人であるから、独立して新規ブランドを立ち上げての銃器製造や販売に、どれほどの献身や努力、そして資金が要求されるのかを理解していたに違いない。新会社の名称には、ステファニーさん側の旧姓の一部であるRostと、クリスさんの祖母の旧姓であるMartinの組み合わせが採用された。
米国には、市民が武装する権利を保障する憲法修正第二条が存在する。ロストマーティンは、これを守るために高品質の銃器を人々に提供することを企業理念とした。9mm自動拳銃のマーケットは飽和状態ともいえるが、人々が望む機能を盛り込んだ米国製品をリーズナブルな価格で提供すれば商機はあると考えたそうだ。
しかし、製品の開発が始まった2020年初期はコロナウイルスが猛威を振るい始めた頃で、その後に続くロックダウンによって世界規模で経済活動が大混乱に陥った。ロストマーティンでの製品開発や製造計画も大幅に遅延したが、トゥーマー夫妻は焦らずに研究開発を続け、リーズナブルな製品を米国内で製造するためのパートナーの探索、プロトタイプの製造や初期製造品の5万発耐久テストなどに時間を費やしている。
2024年1月8日、ロストマーティンが満を持して公表したのが同社初の製品であるRM1Cだ。
Rost Martin RM1C with Trijicon RMR

RM1Cの概要
RM1Cはポリマーフレームでストライカー撃発方式の9mm自動拳銃で、銃身長は4インチ、マガジン装弾数は15発と、サイズ的にはグロック19に相当する製品だ。一方で基本構造は、スロベニアの銃器メーカーであるエイレックス ディフェンス社(AREX defense)のデルタ(Delta)シリーズに多大な影響を受けている。ロストマーティンが主張するRM1Cのセールスポイントのひとつは米国製であることだが、同社にとってスロベニアのエイレックスはデザインパートナーであることに加えて、特定のパーツの供給元でもあるとのこと。しかしながら単なるデルタシリーズのクローンではなく、米国のシューターたちが求めている機能を研究し、それらを反映させた改良型というわけだ。
Glock 19 Gen5

AREX defense DELTA GEN2 L

CZ P-10 C Suppressor Ready

トリガーメカニズムもデルタシリーズから継承されたが、形状・引きやすさ共に大きく改善されており、今回借用したブラックフレームのRM1Cのトリガープルは2.5kg(デジタルスケールの5回平均)であった。少々気になったのは、ロストマーティンのウェブサイトにはダブルアクションストライカー(DAS)と表記されていることで、これは誤解を招きかねない。銃器のトリガーメカニズムを示すダブルアクションという表現の本来の意味は、トリガーを引くことによってハンマーもしくはストライカーをコックすること、そして定位置でそれをリリースするというふたつの役割を担っているというものだ。
しかし、私はそれに加えて不発(ミスファイア)発生時に再度トリガーを引いて撃発を試みられる(セカンドストライクケイパビリティを有する)という意味も含むべきと考える。RM1Cのストライカーは一度トリガーが引かれて前進した状態では、再度トリガーを引いても後退しない。スライドが一定位置まで後退し、ストライカーが部分的にコックされることによってトリガーとの関係が復活するのは、グロックなどと同じで、いわゆるプリセットストライカーに分類される。ロストマーティンのように、これをダブルアクション(または変則ダブルアクション)と呼称する銃器メーカーや銃器ライターも存在するが、それではセカンドストライクケイパビリティを有すると誤解されかねない。プリセットストライカーやプリセットハンマーを言い換えるのであれば「変則シングルアクション」とすべきで、銃器業界で認識が共有できるまで主張し続けるとしよう。
閑話休題、RM1Cの安全機構はトリガーセイフティとストライカーブロックで、薬室に初弾を装填したままコンクリートなどに落下させたとしても、その衝撃で暴発する可能性は極めて低い。スライド後面にはコッキングインディケイタ―が備わっていることもエイレックスのデルタと同様で、ストライカーがプリセットされていれば赤い表示が視認できる。
ホワイトダット付きのフロントサイトと、Uノッチのリアサイトはどちらもスティール製で、ダブテイル上をドリフトさせることで若干の左右調整が可能だ。それらはスプリングフィールドアーモリーのXD/XDMと同じスタイルで、アフターマーケットのサイトに交換可能とのこと。
RM1Cのマガジンキャッチは左右のどちら側から押し込んでも作動するアンビ仕様で、マガジンはCZのP-10Cスタイル(ベースプレートの形状は異なる)だ。購入時には標準15連マガジンと延長17連マガジンが1本ずつ付属する。
スライド後部上面にはダットサイト装着面が加工されているが、これは2020年以降に開発されたハンドガンとしては当然といえよう。出荷時にはオプティックプレートカバーが装着され、付属品としてトリジコンRMR用のマウンティングプレートが同封される。
RM1Cのバリエーションとアクセサリー
2024年に最初の製品を発売したばかりのロストマーティンなので、その製品ラインナップはまだバラエティ豊かとはいえない。銃器はしばらくRM1Cのみであったが、フレーム成型色のカラーバリエーションが用意されている。私が借用したのはブラックとFDE(フラットダークアース)の2種類だが、ロストマーティンのウェブサイトにはストーングレイとグリーンの選択肢も記載されていた。




バックストラップ底部の切欠きとロールピンは、ランヤードの取り付けに対応している。


リアサイトはUノッチで幅は3.8mm、この写真では見えないがフロントサイトはホワイトダット付きで、ブレード幅は3.7mmであった。