2025/04/01
ジェネシスアームズ Gen-12 &G34コンバットマスター in ポーランド

ジェネシスアームズのボックスマガジンショットガンGen-12、そのTTIカスタムであるドラカリスと、同じくTTIのG34コンバットマスターにポーランドで出会った。アメリカで大人気のTTIカスタムは海を越え、ヨーロッパでも高い評価を得ている。
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映画『ジョン・ウィック』シリーズは、スタイリッシュなアクションと、実に凝った銃器の描写で知られている。スクリーンの中で展開される高度なシューティングテクニックは、映画的な演出は加えられているものの、シューティングマッチで実際に使われている技術をベースにしたものだ。
また主人公ジョン・ウィックが使用する銃器は、特にコダワリを持って選定され、第2作目以降は、アメリカのタラン タクティカル イノベーション(TTI)製のカスタムガンが選択されるようになった。その影響もあって、TTIのカスタムガンは高価であるものの、アメリカで大人気となっている。
TTIカスタムガンについては、本誌ライターのAkitaさんが何度も誌面で詳しくご紹介しているため、読者の皆さんも良くご存じだろう。
アメリカとヨーロッパは、いろいろ違うことが多い。文化も価値観が異なり、それはビジネスや人々の生活にも影響を及ぼす。当然それは銃にも当てはまる。
ベルギーのFNハースタル本社と、アメリカ現地法人FNアメリカとでは、一部扱っている銃が異なる。イタリアのベレッタと、アメリカのベレッタUSAも、FNほどではないにしても違いがある。ヨーロッパでよく売れている銃でも、アメリカではさっぱりウケないという場合がけっこうあるらしい。当然その逆のケース、すなわちアメリカで大人気であってもヨーロッパでは全然売れないということも多い。これはフランスに住む者として実感している。
しかし、映画『ジョン・ウィック』シリーズはヨーロッパでも大ヒットした。当然、使われている銃にも注目が集まり、大人気となっている。もちろんヨーロッパといえども、国が異なればいろいろな違いがあって、どの国でも同じというわけではないのだろうが、以前レポートしたスイスの銃器イベントでも、TTIの銃が販売されていて、注目度は高かった。
今回訪問したポーランド シューティングセンターのオーナーで、Kobe射撃チームを率いるマテウスもTTIカスタムガンのファンだ。映画第4作である『ジョン・ウィック:コンセクエンス』“John Wick: Chapter 4”(2023)で使われたジェネシスアームズGen -12のTTIカスタムと、グロック34ベースのTTIコンバットマスターを自ら愛用、実際にシューティングマッチで使っている。
今回マクミラン等の取材にお邪魔した時、その週末にはマッチが行なわれるため、それに向けてマテウスは練習中だった。ポーランドでこの2挺に遭遇するとは全く想定していなかったが、無理を言ってこの2挺を取材させて貰うことにした。

しかし、ここポーランドで、ジョン・ウィック仕様そのものを持っている人に巡り合うとは思っていなかった。

全長:781mm
バレル長:10.5"
マガジン装弾数:10発
作動方式:ショートリコイル、リコイルオペレーテッド
トリガー:HiperFire製ハイパータッチ ジェネシス2.5ポンド トリガー
セイフティセレクター:Battle Armsプロアンビデクストラウスセイフティセレクター
ロアレシーバー:Battle Arms
グリップ:BCMガンファイターグリップMod 1
ストック:BCM Mod 2 SOPMOD
チャージングノブ:左右装備
仕上げ:Disruptive Grey(ディスラプティブグレー)セラコーティング
ダットサイト:EOTECH EXP3-1ホログラフィックサイト
ハンドガード:Key-Modインターフェイス
Genesis Arms Gen-12
Gen -12は、アメリカのジェネシスアームズが開発したセミオートマチックショットガンで、AR-10プラットフォームをベースに設計されている。その開発経緯はGun Professionals 2024年5月号でAkitaさんが、メーカーのインタビューを含めて詳しく紹介している。
ショットガンとしてはタクティカルテイストに満ちたモデルであることから、アメリカはともかくヨーロッパの市場にマッチするのだろうか、とも思ってしまう。ヨーロッパのショットガンといえば、ベレッタやペラッチに代表されるストックの木目が美しい上下二連銃を思い起こしてしまうからだ。あるいはブレーザーなどの狩猟用上下二連銃もイメージとして浮かぶ。伝統的なコスチュームに身を包んだハンターがそれを手にした優雅な猟場の風景だ。
しかしよく考えると、ヨーロッパにもこの種のセミオートマチック タクティカルショットガンを生む土壌がある。ほとんどがイタリア製だが、80年代の映画で頻繁に使われたSPAS-12はイタリアのフランキ製だし、そのボックスマガジン仕様としてSPAS-15がある。もっと実用性のあるモデルとしては、同じくイタリアのベネリが作ったM3やM4があり、他にもファブラムSTF-12やベルナルデリB4といったものがある。
あと、ロシアにはAKをベースにしたサイガのタクティカル仕様とその派生形、そしてブルガリアなど旧東側諸国で作られるサイガのクローンが何種類もある。
また近年のトルコは“何でもあり”で、アーマライト風にアレンジしたタクティカルショットガンを各社が量産、その数の多さたるや、とても把握しきれないほどだ。トルコはその他にも、サイガであれ、イタリアンであれ、なんでもコピーし、独自の解釈を加えた製品を次々と生んでいる。その開発スピードがものすごく速いのだが、そこにメーカーとしてのポリシーやフィロソフィといったものは感じられない。
それらと比較すると、アメリカのジェネシスアームズは、時間を掛けてじっくりと製品を煮詰めており、単に見た目が派手なショットガンを次々と量産しているトルコの製品などとは、全く違う存在だ。

この銃はショートリコイルオペレーションなので、バレルに装着してスタンドオフデバイスを何かに押し付けた場合、バレルが後退してロックを解除してしまう。その対策としてマズルデバイスはハンドガード側に装着した。
右:チャージングノブがボルトボディに直接ねじ込みされている。クリーニングなどの際、ボルトを外すには、このチャージングノブを取り外す必要がある。
マガジンキャッチはレシーバー右側面でこれはAR系と同じだ。マガジンが大きく重いため、このARと同じデザインで良いのか、ちょっと不安ではあるが、操作性はこれが一番だろう。

ジェネシスアームズのGen -12は、一般的な12ゲージショットガンと比べて、よりモジュール化されたデザインとなっており、カスタマイズ性が非常に高い。ボックスマガジンを使用することで、通常のチューブマガジンを装備したショットガンより、戦術的な運用ができるようにしつつ、標準的なAR-10のロアレシーバーをほぼそのまま流用して、作動信頼性の高いショットガンを完成させた。

右:ロアレシーバーは7075ビレットからの削り出しで、このロアレシーバーはDPMS Gen1の.308アッパーレシーバーにも適合する。そのため、刻印はCAL MULTIとされた。シリアルナンバーはJWで始まるTTI仕様だ。


Genesis Armsは、アメリカ アイダホ州に2014年に設立された銃器メーカーで、AR-10プラットフォームの12ゲージショットガンの開発にそれから4-5年を費やした。
社名の“Genesis”とは、創造、始まり、起源を意味する壮大な言葉であり、12ゲージのボックスマガジンショットガンを信頼できるツールに“創造”していくにはそれだけの時間が必要だったのだ。
Gen -12以前にもボックスマガジンを使用する12ゲージのセミオートショットガンはいくつか存在した。前述のSPAS-15や韓国大宇USAS-12、Atchisson(アッチソン) Assault-12(AA-12)などだ。他にも試作レベルのモデルは少なからず存在したが、これらはどれも過去のものとなっている。
AKベースのSAIGAやそのクローン、そしておびただしい数のトルコ製AR風ショットガンは、現行品として生産供給されているが、それらは真の意味でのタクティカルユースではない。
これまでのセミオートのボックスマガジンショットガンは、信頼性を突き詰めていった場合、限界があった。
多数のショットシェルをショットガンで連続的に射撃すると、銃本体が高温になり、樹脂製のショットシェルが変形してくる可能性があるのだ。チューブマガジンなら装填できる数は多くても8発程度だが、ボックスマガジンだともっと多くの弾薬を装填可能だ。そして一気に再装填して連続で撃てる。しかし、ボックスマガジンはその構造上ショットシェルを変形させる方向に力が掛かる。普通の状態ならそう簡単には変形はしないが、その機関部は連続射撃でかなりの高温になっていく。するとショットシェルが軟化する可能性が高まるのだ。総金属製のショットシェルを作れば、この問題を回避できるが、特注でもしない限り、ショットシェルのボディは樹脂なのだ。
軟化して変形気味のショットシェルを射撃すると、チェンバーへの装填排莢時に樹脂の一部が剥離する可能性がある。それが高温化している銃の中で起こるため、その破片が機関部の中で溶着しかねない。
これまで名前を挙げたボックスマガジンのセミオートショットガンはどれもガスオペレーションで作動する。SPAS-15も、USAS-12も、AA-12も、SAIGAも、トルコ製もだ。ショットシェルから剥離し、溶け気味の樹脂破片がガスピストン部に入り込んだ場合、それが溶着して作動の信頼性を低下させる可能性はゼロではない。
ボックスマガジンのセミオートショットガンがこれまでいくつか作られてきたものの、軍用として本格的に使用されてこなかった理由がこれだ。思い起こせば、軍や警察が使用しているセミオートのタクティカルショットガンはほぼすべてチューブマガジンを装備している。