2025/10/25
FN509 FNハースタルが認めたFNアメリカのポリマーフレームピストル

Gun Professionals 2018年8月号に掲載
ベルギーのFNハースタルのラインナップからしばらく消えていた9mmピストル。しかし、2017年秋にストライカーファイアのFN 509がラインナップされた。子会社であるFNアメリカによる意欲作を本社が取り込んだ形だ。“FN SECURITÉ”プログラムにあわせてLEマーケットに向けての展開が始まる。往年の傑作ブラウニング ハイパワーの末裔はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか?

2016年にベルギーのハースタルにあるFN本社を訪問し、FNハースタルの当時のカタログに載っているすべての銃器を試射する機会に恵まれた。しかしピストルはFN Five-SeveNしかなかった (2016年11月号ご参照)。FNXやFNSといったポリマーピストルが当時、FNのラインナップとして存在していたはずだが、その場には用意されなかった。担当者に聞くと「それらはFNアメリカの製品だ。FNアメリカはFNの子会社で、ここは本社のFNハースタル。子会社の製品はここにはない」という返事だった(同様の理由でハイパワーもなかった。あれも既にブラウニングアームズの製品となっていてFNの製品ではなかった)。
ヨーロッパの多くのメーカーはアメリカ市場向けにアメリカ本土に系列会社を置く場合が多い。アメリカで製造された“Made in U.S.A.”の小火器ならば、アメリカが外国製の銃器に課している多くの規制を回避できる。そうなると本国には存在しないラインナップが、アメリカ市場のみで展開される事も少なくない。以前にドイツのSIG SAUERに訪問した際、その当時話題になっていた1911のクローンであるSIG 1911が同じような状態だった。さらにSIG本社としてはアメリカ市場向けに、アメリカ法人で作られた製品を余り肯定的に受け入れてない様子だった。これは誤解かもしれないが、ヨーロッパのメーカーはどこも、たとえ同じグループ企業内であっても、アメリカで企画され、アメリカで製品化したモデルに対して、ちょっと否定的だ。そんな中、今回FNアメリカが企画したピストルFN 509がヨーロッパに“上陸”した。
FN 509全長:188mm |
サイトは背の高いコンバットスタイルだが、緊急時に片手でスライドを引く際、何かに引っ掛けて引けるようにリアサイトのエッジが立っている。エキストラクターはローデッドチェンバーインジケータの機能を持っている。
なかなかそこまで気を遣ったデザインのピストルは少ない。スライドストップもアンビデクストラウスだ。
FNは1996年に5.7×28mm弾を使用する特殊部隊用ピストルとしてFive-seveNを開発した。これが同社初のポリマーフレームピストルだ。しかし、Five-seveNは当時、市販を前提にしたモデルではなかった。
同社最初の市販型ポリマーフレームピストルは1999年のFNフォーティナイン(Forty-Nine)だ。グロックに対抗することを想定しており、ストライカー撃発方式を採用、FNはこれをリピータブル セキュアーストライカー (RSS)と呼んだ。しかしプレコックストライカーではなく、通常のDAOで、トリガープルは長く重い。Forty-Nineの名前は.40S&Wと9mmから来ている。
フォーティナインは商業的成功を収めることができず、2003年にはFNPが登場した。FNPはFN Proの略で、フォーティナインの発展形ではなく、ハンマー露出型のトラディショナルダブルアクションとなっている。2005年頃、アメリカでジョイントコンバットピストル(JCP)プログラムが実施され、.45口径の特殊部隊用ピストルの選定作業が進んだ。この時、FNはFNP-45タクティカルを開発した。このJCPプログラムはその後に中断され、FNは2009年、FNP の発展型としてFNXを製品化した。これもハンマー露出型のトラディショナルダブルアクションだ。FNXは.45口径にも対応しており、市場の評価も高かった。2011年、今度はFNX をストライカーファイアにしたFNSを開発している。こちらは9mmと.40S&Wのみだ。FNSはショートリセットトリガーを搭載、グロックに対抗し得る製品としてこちらも高く評価された。
FNP以降、FNのポリマーフレームピストルはすべてFNのアメリカ法人が主導して開発したモデルだ。
2014年、FNはアメリカ法人を再構成し、FNアメリカ(FN America,LLC.)を設立、バージニア州マクリーンに本社を置いた。そしてアメリカ軍の新型制式ピストルを選定するModular Handgun System(MHS) competitionに向けてFNPの発展型を提出したが、2017年1月、SIG P320がM17として選定されたことはご存知の通りだ。今回、御紹介するFN509はそのトライアルモデルそのものではないが、FNアメリカがMHSの要求スペックをベースに、法執行機関の要求スペックを加味して完成させたモデルとして、2017年4月17日にアメリカ市場でリリースされた。
本社FNハースタルは、それから7ヵ月後に開催されたMilipolでFN509をヨーロッパ市場でも展開することを発表した。
グリップ側面上部と下部とではテクスチャーが異なっている。このあたりもFNSと比べて進化した部分だ。


