2025/11/12
無可動実銃に見る20世紀の小火器 201 FNハースタル MINIMI
第二次トライアル
SAW Projectはその時点で決着には至らなかった。FNは第二次トライアルに向けて、開発を継続する。この間、MINIMIに加えられたもっとも代表的な改良は、Maurice V. Bourlet(モーリス・V・ブーレ)とFNの開発チームによるDual Feed System(US Patent #4,112,817:別名alternate feed system)だ。これによりベルトリンクとボックスマガジンの両方での給弾が可能となった。
これは何らかの理由でベルト給弾ができない場合、一般の兵士がアサルトライフルで使用しているボックスマガジンを使っても射撃できるというものだ。但し、これはブーレが最初に生み出したものではなく、チェコスロバキアのVáclav Holek が1950年代に開発したライトマシンガンZB501(Vz52)にほぼ同じ機能が搭載されていた。
いずれにしても、ブーレは1977年にこのシステムのパテントを取得し、MINIMIの試作機に組み込んでいる。
アメリカは、陸軍、USMC, 空軍、コーストガードのSAWに対する要求をまとめたJoint Service Operational Requirement (JSOR)を定めた。そこにはSAWに求められる性能として、一人で可搬可能で、1,000mまでの射程を持ち、ボディアーマーを貫通する能力が求められていることが示されている。
そして1979年4月、アメリカで2次トライアルが始まった。今回これを主導したのは、U.S. Army Armament Research and Development Command (アメリカ陸軍兵器研究開発司令部:ARRADCOM)だ。
M60を改良したXM233は既にこの時点で候補から消えており、XM234とロッドマン研究所のXM235を併せた改良発展型XM248がFord Aerospace(フォードエアロスペース)からトライアルに参加した。これはデュアルガスシステムで作動する。
新たにトライアルにエントリーしたXM106は、アバディーンのBallistics Research Laboratory(バリスティックリサーチ ラボラトリー)が開発したもので、M16をベースに、オープンボルト化、クイックチェンジ可能なヘビーバレルシステムを搭載、通常の30連マガジンと特殊な多連装マガジンを使用するものだ。
ヘッケラー&コッホの改良型HK21A1にはXM262のナンバーが与えられた。HK21A1はローラーディレイドブローバックメカニズムを持つG3をベースに、強化レシーバーとバレル交換システム、およびベルト給弾機構が追加されたものだ。
FNの改良型MINIMIにはトライアルナンバーはXM249が与えられている。
第2次トライアルは以上の4種で競われた。
今回のトライアルは約10ヵ月続き、その内容は激烈なものだった。海水に長時間浸けた場合の耐腐食性のテストや、高温多湿環境でのテスト、泥水に浸けた状態から引き上げ、簡単に拭い取った状態からの発射、および泥水から引き上げ、そのまま乾燥させ、素早く泥を削ぎ落しただけでの発射テスト、マガジンフィード、ベルトフィードの両方で砂と埃に対する耐性もテストされた。低温環境-45℃から高温環境65℃での作動性もチェックされている。もちろんMRBF(Mean Rounds Between Failure:不具合発生頻度)も重要な評価項目だ。クリーニング頻度は2,000発毎と定められたが、潤滑オイル切れの状態でも確実に作動することが求められた。連続射撃によるバレル加熱で、コックオフ(自然撃発)が起こるかのテストもおこなわれた。これは1分間に85発を発射し続けた場合、何発目でコックオフが起こるかをテストしたものだが、今回テストされた4機種中3機種はオープンボルトであるため、原則的には問題ない。射撃時に銃口から出る炎とスモーク、そして銃声によって、敵からの射撃位置発覚性の比較もおこなわれた。
この一連のテストで、FN MINIMI XM249は圧倒的なスコアを獲得、50,000発のレシーバーライフテストもクリアした。その結果、アメリカ軍はFN MINIMIを1980年9月、XM249E1として仮採用し、その後のフィールドテストをおこなって、1982年2月、M249 Squad Automatic Weaponとして採用を決定した。
その後も、M249に対する改善要求は続き、細部の修正が加わった結果、1985年にPIP(Product Improvement Program:製品改良計画) キットが用意され、改良パーツがレトロフィット(事後改造)されている。
この時の改良箇所は、
・ストック:スチール製チューブラーストックから、リコイル軽減のための油圧バッファー組み込みのシンセティックストックに変更
・ハンドガード:射撃中やバレル交換時に火傷を防ぐためのポリマー樹脂製ヒートシールドが追加
・ガスレギュレータ:2段階切り替えから、切り替え無しのシングルポジションに変更
・キャリングハンドル:固定式から折りたたみ式へ変更
その他、フラッシュサプレッサー、バイポッド、ピストルグリップ、サイト、パーツの一部形状などが変更された。


