2026/09/29
4回目となる仏陸軍との実動訓練「日仏共同訓練ブリュネタカモリ26」
日仏共同訓練ブリュネタカモリ26
Brunet Takamori 26
フランスは、2019年に欧州主要国で初めて公式なインド太平洋戦略を打ち出した。もともとインド太平洋地域には7つの領土たる海外県・地域圏・準県があり、約150万のフランス人が暮らしており、この地域を守る必要があった。さらに守りを固めるため、日本ともパートナーシップを深め、その証として、日仏共同訓練「ブリュネタカモリ」を実施することになった。今回は軍事フォトジャーナリストの菊池雅之が、4回目を迎えた「ブリュネタカモリ26」に迫る─
2026年8月25日から9月5日にかけ、王城寺原演習場(宮城県)において、日仏共同訓練「ブリュネタカモリ26」が行われた。これは「仏陸軍との実動訓練を実施して対ゲリラ・コマンドウ作戦に係る作戦遂行能力・戦術技量の向上を図るとともに、陸自と仏陸軍との相互理解・信頼関係の促進を図る」(陸上自衛隊プレスリリースより)ために毎年、日本もしくはフランス領ニューカレドニアにて交互に行われている実動訓練である。2023年(9月10日~30日)に第1回目がニューカレドニアで実施され、今回で4回目となる。
なお、訓練名称として使われている「ブリュネタカモリ」とは、フランス陸軍参謀総長ジュール・ブリュネと陸軍大将西郷隆盛の名前からとられている。この二人が選ばれた理由は、フランスの騎士道精神と日本の武士道精神を代表する軍人だから。
日本側担任官は東北方面総監佐藤真陸将が務め、第6師団・第20普通科連隊等約120名が参加。フランス側担任官は太平洋管区司令官ギョーム・パンジェ海軍少将が務め、ニューカレドニア海兵歩兵連隊RIMa-P-NC(Régiment d'infanterie de marine du Pacifique - Nouvelle-Calédonie)約40名が参加。
今回は、8月25日の訓練開始式を皮切りに、26日から30日までが機能別訓練、9月1日から3日までが総合訓練、そして4日に終了式を迎えるという日程で行われた。今回も訓練の中心が、対ゲリラコマンドゥ対処であるため、主として王城寺原演習場内にある市街地戦闘訓練場が使用された。そしてその市街地戦闘訓練場を使った総合訓練の一部が公開された。
今回注目されたのは、陸自側が攻撃型ドローンであるオーストラリア製の「ドローン40」を使用したことだ。これまで陸自では、偵察を目的としたドローンしか配備してこなかった。しかし現在も続くウクライナ戦争において、ウ露双方が各種攻撃型ドローンを投入し、戦果を挙げている状況を見て、陸自も導入に向けた検討を始めた。その他に、アメリカ製及びイスラエル製など、いくつかのドローンが候補に上り、その中にオーストラリアのDefendTex社製の攻撃型ドローンである「ドローン40」があった。2026年5月12日、防衛省から「新たな重要装備品等の選定結果について」という文書が発表され、そこには、「小型攻撃用UAV Ⅰ型」として、「ドローン40」が選定されたと公表した。
陸自では「小型攻撃用UAV Ⅰ型」と呼ばれることになった「ドローン40」の本体は、全長12cm、重量190g、直径40mmとかなり小型だ。そして滞空時間は30~60分、航続距離は約35km。ペイロードは、モジュール交換式となっており、カメラを搭載(ISR)したり、爆発物を搭載したりと多目的に運用できる。これを他の携行型ドローンのように、手元から発進させるほか、なんとグレネードランチャーからの発射も可能となっている。
今回は、陣地へと侵入をくわだてる敵部隊に対し、小銃等の攻撃に加え、この「ドローン40」が使用された。陣地の入り口に集まりゲートを破壊しようとしている敵部隊に対し、「ドローン40」を投下する。2名の隊員が姿を現し、一人の手のひらからまずはISR型が放たれた。もう一人が、iPhoneサイズのコントローラーで操縦し、敵を捜索。画面にはISR型がとらえた映像がライブで映し出されている。そして敵を発見し、その上空に達すると、今度は攻撃型を発進させる。上空で、ISR型のほぼ真下に攻撃型が位置し、スタンバイ。そのまま垂直に落下していくと、本体下部にあるランプが点灯し、地上から2mぐらいの場所で爆発する。なお、メーカーによると、ペイロードを破片弾や自己鍛造弾として殺傷能力のある攻撃をする他、発煙弾や特殊閃光弾などを搭載した非殺傷の攻撃も選択できるとのこと。
この日の訓練では、負傷した隊員に対し、輸血用血液をドローンで運ぶ訓練も盛り込まれた。マルチコプター型のドローンの下部に赤十字が描かれた白い箱が吊り下げられていた。
さらに訓練では、スウォーム攻撃(攻撃型ドローンの一斉攻撃)を受けた際に、それを迎撃できるような対ドローン装備も用いられた。非公開とされたので、詳細は不明であるが、小銃にAI搭載型火器管制システムを搭載した光学照準装置を装着するタイプか電波妨害を行うドローンガンのどちらか、もしくは両方が使われたようだ。
現在陸自では、イスラエルのスマートシューター社が開発したSMASHを試験中だ。これは射手が敵ドローンに照準を合わせ、システムのロックオンボタンを押すだけで、AIが自動追尾をし、移動距離やスピードを計算。その間射手はトリガーを引きっぱなしにしており、あとはシステムが自動で弾を発射させる。SMASHにはいくつかバージョンがあり、陸自がどれを試験中であるかは完全非公開とされ、訓練の様子をSNSでアップする際にも、モザイクがかけられているほど徹底されている。しかし、そのモザイクの大きさからすると、ドットサイト型のSMASH3000ではないかと思われる。
また、軽装甲機動車に、コープケージを張り巡らせた対ドローンタイプもあった。一見するとアナログな防御用装置ではあるが、直接車体が被害を受けることがないので、コープケージは、世界で一般的な防御方法となっている。昨年より第7師団では、90式及び10式戦車にコープケージを装着し、各種訓練に参加させている。創立記念の一般公開行事においても、展示されていることから、今後陸自戦車のベーシックな形となっていくのだろう。
このように、「ブリュネタカモリ26」は、フランス軍と「自由で開かれたインド太平洋」を目指すパートナーとして交流を深めるだけでなく、陸自にとって新しい戦い方を試す場ともなっていた。
Text & Photos : 菊池雅之
この記事は月刊アームズマガジン2026年11月号に掲載されたものです。
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