2026/03/07
大規模災害対処訓練「07南海レスキュー」
東海・北陸・近畿・中国・四国地区の2府19県と、日本全国の約30%に及ぶエリアの防衛・警備・災害派遣を担当する中部方面隊において、大規模災害対処訓練「07南海レスキュー」が実施された。昨年よりも規模を拡大し、今回も陸海空自衛隊の他、警察、消防、自治体、企業などが参加。南海トラフ巨大地震が発生したと想定して各部隊が展開し、救助活動から生活支援までの一連の災害対処を訓練した。
中部方面隊が主催する大規模災害対処訓練「南海レスキュー」が今年も1月19日から25日に渡り実施された。目的は今後30年以内に60~90%の確率で発生が予期される南海トラフ巨大地震への対処に万全を期すため。
東海・北陸・近畿・中国・四国地区の2府19県の災害派遣を担当する中部方面隊を中心として、陸海空自衛隊から、約3,700名の人員、18機の航空機、4隻の艦艇が参加した。さらに45個の自治体、23社の企業、9個の官公庁等も参加し、国と地域、住民が一丸となって訓練を繰り広げた。当然ながら、南海トラフ巨大地震は、自衛隊だけで対処できる災害規模ではなく、こうして平素より、各機関、団体が、対処要領を学び、協力関係を築き、実行性向上を図っていくことが大切だ。
1月19日午前9時―。紀伊半島沖でM9.0、震度7の地震が発生したとの想定で訓練の幕が明けた。特に近畿地方一帯の被害は甚大であり、合わせ東海、紀伊南部、四国に津波が到来し、被害地域は拡大していく。建物等の被害は最大で233万3千棟、死者は最大で28万2千人と想定された。
これに対し、情報共有、人命救助、物資・人員輸送、生活・インフラ整備の4本柱で実動訓練は進んでいった。指揮所が置かれたのは中部方面総監部がある伊丹駐屯地だ。ここで、上級司令部並びに関係機関、自治体と連携した指揮所活動が行われ、その様子は報道公開された。
この他、連日各地で訓練が行われていく。枚挙に暇がないほどであるため、いくつか注目すべき訓練をピックアップしてご紹介していく。
まずは愛知県田原市にある白谷海浜公園にて行われた海自LCACによる車両輸送訓練だ。東日本大震災、能登半島地震など、これまで日本を襲ったいくつもの災害に対し、人員や資機材、車両を迅速に輸送してきたLCAC。本訓練でも欠かせない装備となった。
田原市沖に展開した輸送艦「しもきた」を発進すると、停電地区への電力供給を行うため、国土交通省近畿地方整備局の車両と中部電力のパワーグリッド車を浜辺へと運んできた。LCACの最大の特徴が速力40ノット(時速80km以上)で航走できるスピード、そして場所を選ばず着上陸できる点だ。
ただし、LCACは当然ながら軍用として開発された装備であるため、戦車や装甲車などの軍用車両の運用のみが考えられている。よって、民間フェリーなどと違い、一般車両の乗り降りは考慮されていない。そのため、このLCACから降りる際の段差は、一般車両の車高では厳しい。今回のように、そうした車両を取り扱う際は、車体を傷つけず、タイヤをパンクさせないための配慮がどうしても必要となる。さらに降りた先に広がる砂浜も、四輪駆動車でない限り、足を取られスタックする可能性もある。そこで、今回は、LCACの前部ハッチ上にスロープを作り段差をなくし、金属板やプラスティック製の板を砂浜に敷いて、足場を固めた。こうした検証も今回の訓練の目的の一つだ。これら車両を降ろした後は、愛知県警のパトカーを搭載する流れとなっており、海自隊員が、事前に車体や車高の長さを図るなど、車体全体を念入りに確認している姿も見られた。
同じ田原市にある渥美運動公園では、第1ヘリコプタ―団・輸送航空隊のV-22が救援物資輸送を行った。固定翼輸送機のようなスピード、そしてヘリのように離着陸場所を選ばないのがこの機体の特徴だ。公園や駐車場など、一定の広さがあれば、こうして任務遂行できる。物資を受け取りに来た自衛官の中には即応予備自衛官も含まれていた。東日本大震災でも召集がかけられ、このように被災地で活動した実績もある。V-22の後部ハッチが開かれ、そこから段ボールをリレー方式で車両へと搭載していった。
そして2025年3月24日に新編された海上輸送群が、今回の「南海レスキュー」に初参加した。陸海空自衛隊の共同部隊という位置付けではあるが、中核となっているのは陸上自衛官だ。現在輸送艦「ようこう」と「にほんばれ」の2隻のみを配備しているが、今後は同型艦が続々配備されていく。
今回は海上自衛隊呉基地の係船堀エリアにて、輸送艦「ようこう」への車両搭載が行われた。どちらかというと搭載及び揚陸の検証を目的とした訓練という面が強かった。なお、「にほんばれ」については和歌山県にある下津港にて、車両の揚陸作業を行っている。
令和8(2026)年度は、統合幕僚監部が08JXR(Joint Exercise for Rescue)を実施する計画があり、そこに南海レスキューも連接される。次回の「08南海レスキュー」は、新たな被害想定に基づくさらなる巨大訓練へと変化する見込みである。
Text & Photos:菊池雅之
この記事は月刊アームズマガジン2026年4月号に掲載されたものです。
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