2025/11/28
陸海空自衛隊による最大規模の統合演習『07JX 令和7年度自衛隊統合演習』
2年に一度行われている陸海空自衛隊による最大規模の統合演習が、今秋07JXとして実施された。島嶼防衛を主たる演習課目とし、陸上作戦、海上作戦、航空作戦並びに宇宙・サイバー・電磁波領域の連携など領域横断作戦も演練した。今回は奄美大島を舞台に繰り広げられた生地訓練を軍事フォトジャーナリストの菊池雅之が追う!
陸海空自衛隊が行う統合訓練の中で、最も大規模な実動演習がJXだ。1979年に第1回目が行われた歴史ある演習だが、毎年実施しているわけではなく、実動演習(FTX)と指揮所演習(CPX)が交互に行われている。よって、陸海空それぞれの部隊が実際に展開するような実動演習のみであれば、2年に一度の実施となる。
2025年の今年は「令和7年度自衛隊統合演習」として実施した。これを「07JX」と略して呼ぶ。統合運用体制移行後10回目となるが、今年3月に統合作戦司令部が発足し、統合作戦司令官が統裁する初めての演習となった。期間は10月20日から31日まで。主たる実施エリアとなったのは、九州・沖縄エリアであるが、日本列島及びその周辺空海域すべてが訓練場として使われた。
参加規模も驚くべきもので、陸海空自衛隊から約52,300名、車両約4,180両、航空機約310機が参加した。また、このほかJXには在日米軍等も参加しており、今回は約5,900名が参加。さらに豪軍も約230名が参加している。
前述したように、今回が統合作戦司令部発足後初のJXとなったこともあり、より陸海空統合作戦が強調された形となった。弾道ミサイル、巡航ミサイル及び侵攻する航空機に対する防空を行う航空作戦は北海道や東北、五島周辺の空域で実施。また洋上での敵の発見、攻撃など海上優勢獲得のための一連の流れを演練した海上作戦は、四国・東海沖の海域で実施。空挺・着上陸作戦等を連接させた陸上作戦は、奄美群島で実施した。さらに、部隊の輸送や負傷者の後送並びに医療活動を行う統合後方補給・衛生作戦は、沖縄・先島周辺で実施。この他日本中の基地やレーダーサイト等で陸海空自衛隊が連携した基地警備訓練が行われた。
今回注目したいのは、奄美大島で行われた訓練パートだ。これまでも奄美大島はJXにおける生地訓練が行われてきたが、今回も島内各所が使われた。クライマックスとして、水陸機動団による着上陸訓練が行われる予定であったが、天候不良のため中止となった。しかし、その他の訓練は概ね予定通り実施された。
まず、奄美空港近隣にある奄美パークでは、第8地対艦ミサイル連隊が主となり統合対艦戦闘訓練を実施した。
この部隊は、2025年3月24日に新編されたばかりで、今回が初の大規模訓練への参加となる。7個ある地対艦ミサイル連隊の中で、唯一12式地対艦誘導弾と88式地対艦誘導弾の両方を配備するハイブリッド部隊となっているのが特徴だ。九州沖縄エリアの防衛警備を担当する第2特科団の各地対艦ミサイル連隊には、これまで12式地対艦誘導弾が優先的に配備されていたので、旧式たる88式地対艦誘導弾が“新配備”される珍しい事態となった。
これには事情があり、第8地対艦ミサイル連隊を新編するにあたり、北海道の防衛警備を担当する第1特科団隷下の各地対艦ミサイル連隊に内包される射撃中隊から人員、装備を集める形をとった。第1特科団には、88式地対艦誘導弾しか配備されておらず、結果的に新旧ミサイルを運用することになった。
両ミサイル発射機の陣地となった奄美パークは、旧奄美空港の土地を利用して作られており、その滑走路部分に発射機が展開した。この他、捜索評定レーダー装置などは、別の場所に展開した。
陸自地対艦ミサイルは、機動力が高い。88式地対艦誘導弾は74式特大型トラック、12式地対艦誘導弾は重装輪回収車と、いずれも装輪式の車両を使っている。その車体の上に、6本の発射筒が搭載され、各筒には一発ずつミサイルが収容されている。
両ミサイルともに、洋上の敵艦艇を攻撃できる能力を有しているが、その捜索評定には海自との情報共有は必要不可欠である。その手段としてリンク16が使われる。それと捜索評定レーダー装置の情報を合わせて、目標を定め、攻撃する流れとなる。
発射されたミサイルは、自分から目標に電波を照射するアクティブレーダーホーミングにて命中する仕組みだ。12式地対艦誘導弾については、中間誘導としてGPSも使用する。
嶺山公園では、中域用UAVスキャンイーグルⅡが展開した。各師団・旅団隷下の情報隊(一部編成のないケースもあり)が運用する陸自が誇る偵察用UAVだ。ボーイングインシツ社製で、全長約1.5m、重量約25㎏とコンパクト。機首部分にカメラや赤外線センサーが内蔵されており、これらで捉えた情報は、指揮所のモニターにてリアルタイムで確認できる。機体の大きさに反し、発進から回収までの各装置はかなり大掛かりだ。07JX中には、実際に飛ばして、情報収集を行った。
日本各地で同時に各部隊が訓練を行った。移動経路として一般道や空港、港湾が使われたこともあり、各地で自衛隊車両や航空機が目撃され、その際に一般人により撮られた写真がSNSに多数アップされた。それを眺めるだけでも、北から南、縦横無尽に自衛隊が展開していく様子がよく分かった。
Text & Photos:菊池雅之
この記事は月刊アームズマガジン2026年1月号に掲載されたものです。
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