ミリタリー

2025/12/27

創設以来最大規模! 海上自衛隊大改革

 

海自初となる哨戒艦OPVがJMUにて進水した。写真は1番艦の艦名は「さくら」。同時に2隻建造されており、2番艦は「たちばな」。「さくら」型は約10隻と大量生産される

 

組織の大改革と新造艦計画

 

 海上自衛隊は、組織の編成自体を抜本的に見直す創設以来最大規模の大改革を行なう計画である。
 目玉となるのが、2025年度末をめどに断行される護衛艦隊の廃止だ。
 護衛艦隊とは、護衛艦など水上で戦う主要な戦闘艦艇すべてを一元管理する海自の中核だ。護衛艦隊司令官の元、機動運用部隊である第1~4護衛隊群、地域配備部隊である第11~第15護衛隊(通称二桁護衛隊)、その他直轄部隊で編成されている。護衛艦隊とともに、これら各護衛隊群及び二桁護衛隊も廃止される。
 そして、護衛艦隊の代わりに水上艦隊(仮称)を新編する。隷下には第1~3水上戦群(仮称)、水陸両用戦機雷戦群(仮称)、哨戒防備群(仮称)が編成される。
 水上戦群は、これまでの護衛隊群の流れをくむ部隊とはなるが、数の上では1個群減っていることになる。これまでの1個護衛隊群は、2個護衛隊を内包し、計8隻の護衛艦が配備されていた。その8隻の内訳は、ヘリコプター搭載型護衛艦DDH×1、ミサイル護衛艦DDG×2、汎用護衛艦DD×5となっている。水上戦群についての各艦の配置がどのようになるのかはまだ明らかになっていない。しかしながら、DDHの「いずも」型「いずも」「かが」、「ひゅうが」型「ひゅうが」が、それぞれの水上戦群の旗艦を務めることになりそうだ。

 

サンディエゴ海軍基地に入港中の「ちょうかい」。約1年間をかけて、トマホークを搭載するための改修を行う計画だ

 

まもなく空母化改修を終える「かが」。すでに実機のF-35Bを使った試験を終えている


 二桁護衛隊には、護衛艦が4~5隻配備されており、現在は汎用護衛艦DDもしくは多機能護衛艦FFM、沿岸域護衛艦DEが配備されている。こちらの護衛隊は、水上艦隊へと吸収されることになりそうだが、こちらも詳細は明らかにされていない。しかしながら、すべてのFFM「もがみ」型については、水陸両用戦機雷戦群へと移籍すると思われる。水陸両用戦機雷戦群は、名前の通り、水陸両用戦と機雷戦を担当する部隊となる。その両方を担えるのが「もがみ」型であり、同群の中核となるのは間違いなさそうだ。そして、水陸両用戦機雷戦群の旗艦となるのが「ひゅうが」型2番艦の「いせ」となる模様。
 ゼロからスタートを切ることになるのが、哨戒防備群だ。こちらは日本沿岸域での警戒監視を主たる任務とするもので、これまでの地域配備部隊のような役割を果たすものと思われる。
 同部隊新編に伴い、新たに哨戒艦OPVを新造していくことが決まった。2025年11月13日、まず2隻が、建造中のJMU横浜事業所磯子工場にて命名進水式を迎えた。ここで1番艦に「さくら」、2番艦に「たちばな」の名前が与えられた。これらは帝国海軍時代の駆逐艦でも使用された名前だ。以降「さくら」型として、約10隻を建造していく計画がある。1隻辺りの価格はおよそ90億円となる。
 この海自初のOPVは、パトロールに特化したため、武装は30㎜機関砲一門のみ。対艦・対空ミサイルの類は搭載しないという大胆な武器構成とした。後部はヘリ甲板となっているが、こちらでは主として垂直離着陸型無人機V-BATを運用する計画だ。なお、このV-BATは、「もがみ」型でも運用される。

 

2025年10月15日、サンディエゴ海軍基地を目指して航行中の「ちょうかい」。4隻ある「こんごう」型すべてが改修される

 

初の護衛艦輸出へ

 

 これまでタブー視されてきた“護衛艦の輸出”を今後行って行く方針だ。その輸出第一号となるのが最新鋭の護衛艦である「もがみ」型である。
 こちらはすでにオーストラリアへと輸出されることが決まっている。ベースとなるのは「もがみ」型をアップデートした改「もがみ」型となる。なお、こちらの改「もがみ」型は、海自も配備していく。さらにニュージーランドも改「もがみ」型に興味を寄せており、こちらにも輸出される可能性が出てきた。
 この他、中古艦の輸出も行う。これについても前代未聞のことだ。白羽の矢が立ったのが、まもなく全艦退役するDE「あぶくま」型だ。こちらをフィリピンへと輸出する計画が進行中だ。
 さらに「あぶくま」型に関しては、もう一つ動きがある。今年11月、インドネシアのシャフリィ国防相が来日し、同17日、小泉進次郎防衛相とともに横須賀を訪問。護衛艦「くまの」「むらさめ」、潜水艦「たいげい」を共に視察した。「くまの」は「もがみ」型の2番艦であり、やはり注目はそこかと思いきや、日本側は「あぶくま」型をプレゼンし、インドネシア側も検討の余地があるように見受けられた。こちらの商談の今後も気になるところだ。

 

海自が新たに導入するV-BAT。垂直離着陸型の無人機であり、すでに米海軍が運用しており、そうした実績から選ばれた(写真:米海軍)

 

進水式直前のOPV。この時点ではまだ命名前の段階であるが、先頭が「さくら」、後方が「たちばな」。2隻同時に建造された

 

海自初の本格ステルス艦となった「もがみ」型。オーストラリアへと輸出されることが決まっている(写真:海上自衛隊)

 

自衛艦命名書。防衛大臣である小泉進次郎氏の名前が記されている

 

既存の護衛艦の改造

 

 防衛省は、今後陸海空自衛隊にスタンドオフ防衛能力を付与していく方針だ。これは敵のミサイルの射程圏外から攻撃を仕掛けるというもので、その戦術において重要となるのが長射程のスタンドオフミサイルである。これはいわゆる巡航ミサイルのことを指す。
 現在スタンドオフミサイルの国産化を目指しているが、今しばらく時間がかかる見込み。そこで、アメリカから巡航ミサイル・トマホークを購入し、そのツナギとすることを決めた。購入数はなんと400発。こちらをイージス艦である「こんごう」型に搭載する。まず4番艦「ちょうかい」が、本年10月15日、サンディエゴ海軍基地へと入港した。ここから約1年間をかけてトマホークが発射できるようにシステム等を改修する。引き続き他のイージス艦も随時改修していく。
 そして現在進行中なのが、「いずも」型の空母化改修だ。すでに2番艦「かが」が大詰めを迎えており、「いずも」もJMU横浜事業所磯子工場のドックに入って工事中だ。
 艦載機となるF-35Bは、8月6日に第一陣が空自へと引き渡され、10月末より本格的な訓練を開始した。今年度末まで8機が配備され、最終的に42機体制とする。
 このように、今まさに海上自衛隊は転換点におり、我々国民もその動向に注視する必要があるだろう。

 

まもなく海自からは全艦退役することが決まっている「あぶくま」型。だが、フィリピンへと輸出される可能性が出てきた(写真:海上自衛隊)

 

横須賀へと向かう機内でのインドネシアのシャフリィ国防相と小泉進次郎防衛相。インドネシアにも「あぶくま」型が輸出される可能性が出てきた(写真:海上自衛隊)

 

サンディエゴへと向かう直前、横須賀にてトマホークの搭載訓練を行う「ちょうかい」(写真:海上自衛隊)

 


 

TEXT:毛野ブースカ/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年2月号に掲載されたものです。

 

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