2024/02/23
【海上自衛隊】空母改修を迎える「いずも」気になる今後の動向について解説
毎年恒例の大規模航海であるIPD(Indo-Pacific Deployment)23にてIPD23にて南シナ海を征く「いずも」。今後「かが」同様に、台形だった艦首部分を大きく改修し、長方形の飛行甲板となる。格納庫区画をはじめとしてF-35Bの運用開始に伴う艦内の改修もさまざま行なわれていく。今回はその「いずも」の気になる今後の動向を解説する。
護衛艦「いずも」
海自のシンボル的護衛艦となっている「いずも」型はヘリ搭載型護衛艦DDHに分類される。これまで配備してきた「しらね」型の「しらね」「くらま」の後継として建造された。
外観上の特徴は、全通甲板となっている点だ。これは艦首から艦尾までが平らな甲板となっていることであり、“空母型”とも呼ばれる船体だ。
海自では「ひゅうが」「いせ」の2隻の「ひゅうが」型が、護衛艦としては初めて全通甲板を採用(※先に就役した「おおすみ」型輸送艦も全通甲板を採用)。これに続いて「いずも」型が建造されたわけであるが、サイズは一気に大型化した。例えば、「ひゅうが」型の全長は197mであるのに対し、「いずも」型は248mとなった。基準排水量も「ひゅうが」型が13,950tであるのに対し、「いずも」型は19,500tと大型となっている。これに伴い、甲板上でのヘリの運用能力、艦内格納庫での収容能力は「いずも」型の方が勝っている。
就役当時から後部エレベーターを米空母のように後部舷側に付けるなど、大型機を運用することを念頭に入れたかのようなレイアウトとなっていたことから「いずれ空母化改修するのでは?」と言われていたが、まさにその通りとなった。
「いずも」の改修
まず「いずも」に2020年度予算で、改修費31億円が付いた。これにより、F-35Bのエンジン熱に耐えられるように甲板の耐熱工事を施すなどの飛行甲板の改修、電源設備の設置などが行なわれた。こうして2021年6月25日に「いずも」は第1次改修を終えた。そして同年10月3日、四国沖にて、米海兵隊のF-35Bによる発着艦試験を実施し、成功をおさめた。
改修前と改修後の船体の見た目に大きな差はない。ただし、甲板に目を凝らすと、まっすぐな黄色い線が引かれている点が大きく異なる。これはF-35Bのパイロットが目印とする線である「センタートリムライン」だ。この横にはこれまで通りヘリのパイロットが目印とする白いラインもそのまま残る。さらに目を凝らしてみると、後部側のヘリ発着用4番及び5番スポットの辺りの甲板の色が違う。ここがF-35Bが発艦する際のスタートとなる場所で、耐熱処理がされている。
一足早く「かが」が、本格的な空母化改修工事をスタートし、2023年11月17日、母港である呉基地へと帰って来た。こちらは、艦首部分の飛行甲板を改修し、全体が長方形となった。「いずも」も同様の改修が施される。
IPD23では、第1水上部隊「いずも」「さみだれ」「しらぬい」、第2水上部隊「しもきた」、第3水上部隊「くまの」、潜水艦部隊(艦名非公表)の4つの部隊が編成され、東南アジア、オーストラリア、南太平洋の島々など多くの国々を巡った。それぞれの部隊は、寄港国の海軍や海上司法機関等と訓練を行なったり、多国間訓練に参加したりと重要な任務をいくつもこなしていった。
「いずも」については、「さみだれ」とともに中国が実効支配を進める南シナ海の航海も行ない、中国艦の追跡、監視を受けた。そんな中、フィリピン・マニラ沖では日米豪比共同訓練を実施した。こうして、太平洋地域の平和と安定に寄与し、各国と連携を深め、無事IPD23を終えた。
月刊アームズマガジン2024年2月号では海上自衛隊のIPD23を取材したレポートを詳しく掲載している。気になった方はぜひそちらもご覧いただければ幸いだ。
Text & Photos : 菊池雅之
この記事は月刊アームズマガジン2024年2月号に掲載されたものです。
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