ミリタリー

2023/05/24

【陸上自衛隊】中央即応連隊の格闘指導官とは?

 

 戦闘地域で活動する兵士の目前にいるのは、識別しやすく武装した敵兵とは限らない。海外派遣任務も想定される陸上自衛隊中央即応連隊では、民間人に紛れるテロリストなどにも対応できるよう、様々なシチュエーションでの格闘訓練を行なっている。ここでは近接格闘術を隊員に教育する格闘指導官のうち、部隊格闘指導官と上級格闘指導官について紹介していこう。

 

陸上自衛隊の近接戦闘術取材レポートはこちら

 

 

部隊格闘指導官

 

 陸上自衛隊では曹以上を対象として部隊格闘指導官という資格がある。所属部隊での格闘教育で秀でた者を選抜し、さらに「部隊格闘指導官養成教育」を修了して、各種試験に合格した者に格闘徽章を授けられる。部隊では隊員への格闘指導の担い手になるが、普段は格闘以外の本来任務に当たりながら、格闘錬成の際に格闘指導官として活動するのが実態のようだ。

 

上級格闘指導官

 

 部隊格闘指導官を経て、さらに力量と推薦を得た者は、朝霞駐屯地にある自衛隊体育学校へ入校し、厳しい教育錬成と選抜を経て上級格闘指導官の資格を得る。上級格闘指導官は部隊格闘指導官を教育・育成することはもちろん、部隊全体の格闘能力向上のための訓練を起案し管理する立場となる。上級格闘指導官の格闘徽章は格闘の強さだけでなく、指導力や人格面においても優秀である証なのだ。

 

 

小銃を持つ兵士も格闘指導官の手に掛かれば、いとも簡単に転がされて小銃を奪い取られてしまう。逆にいえば小銃を持っていても、迂闊に他者を間合いに入れてはいけないことが分かる

 

小笠原選手による格闘指導(ムエタイ)

 

 今回は特別企画として現役のプロ格闘家であり、ムエタイを特技とするキックボクサーの小笠原瑛作選手が参加。そこで小笠原氏は、中央即応連隊の格闘指導官にムエタイ独自の技を展示し指導することになった。そんな夢の共演をご覧いただこう。

 

相手を首相撲で抱え込み、鋭い膝で蹴り上げるのはムエタイ独自の技だ。格闘指導官たちは普段目にしない技を真剣に観察していた

 

相手からの蹴りを受け止めてから軸足を蹴って倒すのもムエタイ技のひとつ

 

格闘指導官の蹴りを受ける小笠原選手。自衛官の蹴りは戦闘靴の重さと頑丈さも相まって、とてつもない破壊力を生む武器になる

 

肘打ちもムエタイ技のひとつで、うかつに間合いを詰めると食らってしまう。これは小銃を保持したままでも打てる技かもしれない

 

Mass Sparring -マス・スパーリング-

 

 キックボクシングや打撃系の格闘技では一般的な練習方法で、力を入れずに相手へ技を繰り出したり受けたりしながら、お互いのスキルや反応を見るために行なわれる。中即からはキックボクシング等の打撃系格闘技の経験を持つ与羽3曹が、小笠原瑛作選手とのマス・スパーリングに挑戦した。1ラウンド/2分の短い時間だったが、現役の若手格闘指導官と現役チャンピオンとの異色の対戦が実現した一コマであった。勝敗の判定がない手合わせだが、実際に拳を交えた両氏はお互いの強さを感じただろう。
 格闘に関わるプロフェッショナル同士の交流実現に協力していただいた小笠原選手と与羽3曹、そして支援に関わってくださった関係各位に心からお礼申し上げます。

 

 

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Photo:笹川英夫

Text:神崎 大 
格闘展示:小笠原瑛作
協力:陸上自衛隊 中央即応連隊、同連隊施設中隊、陸上総隊報道官

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年5月号に掲載されたものです。

 

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