ミリタリー

2023/05/23

【陸上自衛隊】中央即応連隊のCQC(近接戦闘)訓練取材レポート

 

 中央即応連隊/CRR(Central Readiness Regiment)は陸上自衛隊の普通科部隊の中でも、任務の性格上CQC(Close-quarters Combat)を得意とする部隊としても名高い。ここでは中央即応連隊による近接戦闘訓練の様子を見ていこう。

 

 

陸上自衛隊の格闘術

 

 昭和時代の陸上自衛隊では、格闘戦は最終局面における銃剣突撃や白兵戦であり、旧帝国陸軍からの銃剣道も盛んに行なわれていた。その一方で米軍は、冷戦後のテロリズムの時代において、様々な非対称戦を経験したことでCQB(Close Quarters Battle)/市街地戦の研究が進み、内在するCQM(Close Quarters Marksmanship)やCQC(Close Quarters Combat)の戦術や理論が進化し、陸上自衛隊も大きな影響を受けた。

 2000年代初頭から自衛隊に海外派遣の道が開かれると、市街地戦の現実が認識されるようになり、敵がいきなり襲いかかってくるリスクを肌で感じることになった。この時期から、主に陸上自衛隊では小銃や拳銃の近接戦闘射撃訓練(CQM)が盛んになり、同時期に体育学校により研究考案された新格闘が産声を上げたことで近接戦闘(CQC)の技術も普及した。

 

訓練中、通路の影に潜んでいたアンノウン(彼我不明者)が小銃に掴みかかって来る

 

隊員はすばやく関節を決めて倒す

 

後続する4番手に任せて次の脅威へと向かっていく

 

見えない敵と戦うためにCQC技術を磨く

 

 戦闘地域で活動する兵士の目前にいるのは、識別しやすく武装した敵兵とは限らない。民間人の服装をして、敵意を見せずに近づきつつ、いきなり襲いかかってくるテロリストも存在するだろう。リスク要因との距離が近づけば、より高度な格闘戦術が必要となる。現在の陸上自衛隊では市街地、野戦問わずに多様な想定での格闘訓練が行なわれているようだ。

 

近接戦闘における格闘

 

 CQBにおいて生起する突発的な戦闘では、必ずしも敵が銃器で武装しているとは限らない。タックルして来る者やナイフで切りかかって来る者もいるだろう。応戦する自衛官も目前に現れたアンノウン(彼我不明者)に対していきなり射撃を浴びせかけることはせず、まずは制圧を試みる。CQC(近接戦闘)の格闘術が活かされる場面だ。
 

 

アンノウンが潜んでいる部屋に突入する4名は瞬時に展開し、ナイフを持った者に対して武器を下ろすように警告し制圧する

 

 

 

 

 

突入班に制圧され捕縛されたアンノウンは、両腕を後ろに回して拘束したままで室内から出されるが、反撃の隙を与えないように小銃や拳銃に敵が触れない位置になっているか注意している

 

中即における施設中隊の特性

 

 今回の訓練展示は中央即応連隊の施設中隊で、一般的な施設科部隊のような野戦陣地の構築や地雷処理という大掛かりな土木建築作業に加えて、戦闘工兵的な特性を持つ。普通科隊員と協同して前進し作戦任務に当たることが求められており、今回の展示のようなCQB訓練も積極的にこなすのが特徴なのだ。

 

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Photo:笹川英夫

Text:神崎 大 
格闘展示:小笠原瑛作
協力:陸上自衛隊 中央即応連隊、同連隊施設中隊、陸上総隊報道官

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年5月号に掲載されたものです。

 

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