2023/04/15
【陸上自衛隊】インド陸軍×陸上自衛隊による共同訓練「ダルマ・ガーディアン2022」
ダルマ・ガーディアン2023
インド太平洋地域の安定化は周知のとおり近年重要度を増しつつあることから、基本的価値を共有する日米豪印4カ国による戦略対話の枠組み「QUAD(クアッド)」が生まれた。これに関連して日本とインドは同志国として急速に防衛交流を深めており、2018年より日印共同訓練「ダルマ・ガーディアン」がスタートしている。同訓練はこれまでインド国内を中心に開催されてきたが、4回目にして初めて日本国内で実施された。今回はその模様を取材したので、お伝えしていこう。
日本国内初開催の日印共同訓練
2023年2月17日から3月2日まで、陸上自衛隊饗庭野演習場(滋賀県)において、日印共同訓練「ダルマ・ガーディアン22」が実施された。日本側からは第3師団第36普通科連隊(伊丹駐屯地)の190人、インド陸軍側からは第5歩兵大隊の約40人が参加している。
今回で4回目となる日印共同訓練であるが、これまでインドで開催されてきた。よって今回が初の日本開催となる。インド側は、「Indo-Japan Joint EX(印日共同訓練)」と呼んでいるが、陸上自衛隊側は“共同”という言葉は使わず、「印陸軍との実動訓練」と呼んでいる。加えて、2023年になっても訓練名の後に“22”としているのは間違いではなく、2022年度計画の訓練であることを意味している。
訓練名の“ダルマ”については皆様のご想像通り、縁起物の置物である「ダルマ」のこと。もともとはインド人仏教僧で、中国禅宗の開祖とも言われる「ボーディ・ダルマ」に因んでいる。中国では「菩薩達磨」、日本では「達磨大使」とも呼ばれており、我々の知るダルマは、「ボーディ・ダルマ」が座禅をする姿を表しているという。そして、両国でダルマという単語はよく知られていることから、訓練のコードネームとして選ばれた。
第1回目は2018年にインド国内で実施された。きっかけとなったのが、2016年8月にアフリカ開発会議(ケニア)にて、安倍晋三内閣総理大臣(当時)が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」だ。これ以降、2017年より日本だけでなくインドやASEAN諸国もこの言葉を用いるようになった。そして日本とインドは、防衛交流を深めていくことを決め、「ダルマ・ガーディアン」が開催されることになったのである。
こうして第1回目となる「ダルマ・ガーディアン18」が無事終了すると、毎年実施していくことが決まる。翌2019年にもインドで開催された。順調な滑り出しのよう見えたが、新型コロナウイルスの影響を受け、2020年は中止となる。そして、感染予防対策もしっかりと取れるようになってきたことから翌2021年になんとか3回目が実施され、今回の4回目へと繋がった。この4回目は暦の上では2023年となってしまったものの、意地でも毎年開催していこうという意気込みが伝わってくる。となると、今年の秋か冬ぐらいに5回目が開催されるのかもしれない。
実は今年に入って早々から、日印防衛交流は活発に行なわれていた。まず実施されたのが、航空自衛隊とインド空軍による共同訓練「ヴィーアガーディアン23」(1月16~26日)で、これが第1回目。ロシア製のSu-30MKI戦闘機が来日し、百里基地を拠点として空自のF-2やF-15と訓練を行なった。さらに「ダルマ・ガーディアン22」と被る形で、「シンユウ・マイトゥリ23」(3月1~2日)が美保基地にて行なわれた。こちらも空自とインド空軍間の訓練であるが、内容は輸送機による空輸訓練だ。こちらもこれまでインドで開催されてきたが、今回初めて日本開催となった。このように立て続けに国内で行なわれており、今後もインド軍との軍事交流は深まっていくだろう。
いずれも「自由で開かれたインド太平洋」を目指すための訓練だが、さらに一歩前進しようとしている。現在、日米豪印の間で、QUAD(クアッド)という「自由で開かれたインド太平洋」を目標とした新たな国家間の繋がりが誕生した。この存在自体は軍事同盟ではないものの、日豪は同志国として軍事同盟国に次ぐ関係を構築している。次に日印も、同志国として結びつこうとしている。そのために「ダルマ・ガーディアン」を始め、いくつもの共同訓練が行なわれたのだ。
今後も日印間の防衛交流が深化していくのは間違いない。
TEXT&PHOTO:菊池雅之
取材協力:陸上幕僚監部広報室・中部方面総監部
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