ミリタリー

2024/02/22

海上自衛隊の空飛ぶ衛生員!救出&救助と第一線救護活動を担当するMEDICを取材!【海上自衛隊】

 

 日本は間もなく固定翼機を運用可能な“空母”とも呼べる護衛艦を配備しようとしている。イチから作るわけではなく、現在配備している「いずも」「かが」の2隻の「いずも」型を大規模改修し、F-35Bを搭載する計画だ。

 今回は、第1次改修を終えた「いずも」により、2023年4月20日~9月17日にわたり行なわれた「令和5年度インド太平洋方面派遣」、IPD23に同乗取材を敢行した。そのIPD23では2名のMEDICが「いずも」に乗り込んでいた。今回はMEDICの取材レポートを公開する。

 

【IPD23】立入検査隊のレポートはこちら

 

 

MEDICとは?

 

 海上自衛隊における救出・救助と第一線救護活動を担当するのがMEDICだ。IPD23では、2名のMEDICが「いずも」に乗り込んでいた。

 「いずも」には、自衛隊中央病院から派遣された医官(2等海佐)である医務長をトップに看護長など約10名の医療スタッフがいる。その中にMEDIC2名も含まれている。ただし、衛生科ではなく、飛行科に所属している航空士である。准看護師及び救急救命士の資格を持つので頭数に含まれている。
 航空自衛隊の航空救難団にも同じようにヘリで救助に向かう救難員がいる。空自海自どちらも航空士の職域の一つである点は同じ。だが彼らは戦闘捜索救難に重きを置き、第1空挺団にて空挺レンジャー課程に進み戦闘及び生存自活(サバイバル)を学んだり、空挺降下技術を学んだりと進出から救出、戦闘、脱出といった特殊な状況下での行動に特化している。一方で海自の場合は、救出と救護の両方を兼ね備えた空飛ぶ衛生員といった位置付けである。いずれの部隊とも墜落した自衛隊及び米軍のパイロット救出などを主たる任務としているが、自治体からの要請を受ければ災害派遣にも従事する。

 

主としてヘリ搭載可能な護衛艦に配置され、SH-60K(写真上空に飛ぶヘリ)に搭乗して現場へと進出する。ヘルメットに「MEDIC」の文字が掲げられている

 

「いずも」に乗り込む2名のMEDIC。飛行科に所属している航空士であり、准看護師と救急救命士の資格を持つ。要請があれば、海難事故などの災害現場で真価を発揮する救助と救護のプロフェッショナルだ

 

 航海中、要救助者をホイストする訓練が行なわれた。2名のMEDICはTeam Wendyのカーボン製のタクティカルヘルメットを被り、緑色のパイロットスーツの上から赤いベストを着用していた。これが基本スタイルであるという。そして要救助者に見立てた乗員を抱え、ホバリングするヘリへと収容した。「いずも」に搭載された2機のSH-60Kは、第21航空群第21航空隊“ブラックジャック”所属機だ。2名のMEDICも同部隊の隊員であり、右肩には同部隊のパッチが付けられていた。MEDICになるには、入隊後まず衛生科職種を選ぶところから始まる。そして現場を経験した後、航空士救護課程へ進む。最終的に准看護師と救急救命士の資格を取得する。またこれに加えスクーバも全員必須となった。これにより海自ヘリ部隊では救出と救護が行なえる体制を確立したのだ。なお、海自には救難飛行艇US-2があるが、こちらには機上救助員と機上救護員がそれぞれ搭乗している。

 

ホイスト装置にロープを繋ぎ、降下救助訓練のための準備を淡々と進めていく。要救助者が動けない状態であればバスケット型担架を使って吊り上げることもあるし、MEDICが抱きかかえてヘリへと収容することもある

 

「いずも」医務室にて勤務する衛生科員。彼女は航空学生として入隊し、医療の道へと進む珍しいコースを歩んだ。MEDICも合わせ、「いずも」には約10名の医療スタッフがいる

 

 MEDICは、護衛艦に乗り込み、いつでも速やかにヘリで進出できるように待機している他、自衛隊病院等での陸上勤務もあるという。
 海自らしい勤務地として硫黄島航空基地がある。第21航空隊硫黄島航空分遣隊で運用している救難ヘリUH-60Jに搭乗し、救出や救護を行なっている。海自救難ヘリは紅白の機体カラーが特徴的であり、これまでも幾多の災害現場で活躍してきたが、退役の一途を辿っており、残るはこの部隊のみだ。しかしながら寄る年波には勝てず、こちらもまもなく引退する。

 月刊アームズマガジン2024年2月号では海上自衛隊のIPD23を取材したレポートを詳しく掲載している。気になった方はぜひそちらもご覧いただければ幸いだ。

 

Text & Photos : 菊池雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年2月号に掲載されたものです。

 

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