ミリタリー

2024/02/21

護衛艦「いずも」大規模航海を密着取材! IPD23取材レポート【海上自衛隊】

 

改修前最後となる「いずも」の大規模航海

 

 日本は間もなく固定翼機を運用可能な“空母”とも呼べる護衛艦を配備しようとしている。イチから作るわけではなく、現在配備している「いずも」「かが」の2隻の「いずも」型を大規模改修し、F-35Bを搭載する計画だ。
 今回は、第1次改修を終えた「いずも」により、2023年4月20日~9月17日にわたり行なわれた「令和5年度インド太平洋方面派遣」に同乗取材を敢行した。英語表記のIndo-Pacific DeploymentからIPDと略される毎年恒例の大規模航海である。IPD23を通じ、改修前最後となる「いずも」を追った。

 

「いずも」艦橋構造物を使い、当該船舶へのエントリー方法を訓練。先頭の隊員は、建物の角からその先を警戒。後続の隊員たちも建物の上、後方をしっかりと警戒している。手にしているのは9mmけん銃。陸海空自衛隊で広く使われている

 

立入検査隊とは?

 

 各護衛艦には立入検査隊が編成されている。略してタチケン(立検)と呼ばれている。常設の部隊ではなく、必要な時にあらかじめ立入検査要員として指定されている隊員を集める臨時編成だ。
 マーク(職種)に限らず、各科の隊員で構成されており、必ずしも射撃員など武器のプロばかりではなく、給養員が含まれている護衛艦もある。こうした2個目の特技とも呼べるものを副特技と呼び、近年、タチケンを希望する若い隊員が増えている。女性自衛官も希望することができる。護衛艦に女性が乗艦しているのはもはや珍しいことではなくなったこともあり、女性のタチケン隊員もどんどんと増えている。
 任務は名前の通り、船舶の立入検査活動を行なうこと。大量破壊兵器の運搬、または瀬取りと呼ばれる洋上での武器などの不法物品の受け渡し等を行なっている疑いのある船に乗り込んで行って、船内を検査して証拠を発見、押収する。これまでの対軍艦だけではなく、そうした一般船舶を装った民間船舶等に対する海上阻止も海上自衛隊にとって重要な任務とされ、1999年頃より要員の教育、部隊の整備を開始した。

 

当該船に接舷し、移乗後に船内捜索を行なうという想定での訓練。この他、複合艇RHIB(Rigid-hulled inflatable boat)を用いて、しっかりと接舷する前の段階から訓練することもある

 

ハッチの開放。突入を前にして隊員たちが最も緊張する時でもある

 

 航海中は、「いずも」を当該船と見立ててエントリーの方法、船内の移動の手順等を繰り返し訓練していた。タチケンが出動するのは、停船要求に応じた船舶という状況であるが、相手が攻撃してくる可能性がある以上、不測の事態に備え、しっかりと拳銃をかまえ、警戒しながら甲板上を進んでいく。指示に従わない者や攻撃してくる者がいれば、躊躇せず取り押さえる。そのために手錠やタイラップなども携行している。
 船内では、さらに危険度は増す。どの船も船内は入り組んでおり、身を隠す場所は多い。完全なる相手のテリトリー内である以上、不意を突かれることがないように、さらに慎重に歩みを進めていく。

 

当該船内と想定し、「いずも」艦内を移動していくタチケン隊員

 

船内の階段を上っていく。まず、最初に上った隊員が通路を警戒。安全を確認すると後続の隊員が駆け足で続いていく

 

 最近では米軍をはじめ、他国海軍の臨検部隊と一緒に訓練する機会も増えている。海自タチケンは、ますますレベルアップしていくことだろう。

 月刊アームズマガジン2024年2月号では海上自衛隊のIPD23を取材したレポートを詳しく掲載している。気になった方はぜひそちらもご覧いただければ幸いだ。

 

「いずも」立入検査隊員たち。防衛省そして海上自衛隊では、タチケンをMaritime Inspection Teamと英訳している。そして立入検査訓練はInspection Trainingと呼ぶ

 

Text & Photos : 菊池雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年2月号に掲載されたものです。

 

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