2026/01/13
IPD25 令和7年度インド太平洋方面派遣
今年もIPDが実施された。遡れば、この長期派遣行動は、2017年よりスタート。2019年より、“IPD”との名が与えられ、コロナ禍でも間断なく行われた。今年度も半年以上の期間をかけ、4つの水上艦隊を特別編成し、主として太平洋地域を巡った。ここでは、第3水上部隊が6月14日から21日の間実施した佐世保からフィリピンまでの密着取材をお届けしよう。
海上自衛隊にとって、毎年の恒例となった長期派遣行動であるIPD(Indo-Pacific Deployment)が、今年度も「令和7年度インド太平洋方面派遣IPD25」として実施された。本誌が毎回IPDの取材レポートを掲載しているのも、もはや海上自衛隊のみならず、世界規模で非常に重要な作戦となっているからだ。
元を辿ると、2016年8月の第6回アフリカ開発会議の場で故・安倍晋三首相(当時)が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」である。これは、インド太平洋地域にて、自由貿易や航行の自由、法の支配を定着させるのが目的だ。
その後、日本政府は「自由で開かれたインド太平洋FOIP(Free and Open Indo-Pacific)」を戦略的目標として掲げ、太平洋地域からインド洋までの国々と一致団結し、ルールに基づく地域秩序を構築しようとしている。防衛白書には、具体化に向け、「インド太平洋地域の各国海軍等と共同訓練を実施し、戦術技量を向上させるとともに、各国海軍等との相互理解の増進、信頼関係の強化及び連携の強化を図り、地域の平和と安定に寄与する」と書かれている。今では、日本だけでなく、アメリカや東南アジア諸国、さらにはヨーロッパなども賛同。NATOは、毎年のようにインド太平洋地域へと実際に艦艇を派遣し、度々日本へと立ち寄るようになった。
今年度のIPD25は、4月21日から11月21日までの間、実施された。
2017年に第1回目が行われた時から、「いずも」及び「かが」を旗艦として、複数隻の護衛艦を加えて、一つの艦隊を編成し、各国を巡っていた。しかし、寄港国が増え、いくつもの多国間訓練に参加するために分散する必要が生じ、2022年より、複数の艦隊を編成する方法に変えた。
IPD25については、以下のような4個水上部隊が編成されている。
●第1水上部隊・護衛艦「やはぎ」
●第2水上部隊・輸送艦「おおすみ」
● 第3水上部隊・護衛艦「いせ」「すずなみ」
●第4水上部隊・護衛艦「あけぼの」
これまでずっと参加してきた「いずも」型が今回初めて不参加に。これも「いずも」が空母化大規模改修に入り、「かが」についても改修最終段階となったことが影響したようだ。その代わりを「ひゅうが」型の2番艦「いせ」が務めた形だ。
これら水上部隊だけでなく、艦名非公開の潜水艦部隊、哨戒機P-1による第1航空部隊、特別警備隊等による派遣立入検査隊、そして今回初めて、横須賀及び呉地方隊、航空集団、第3術科学校の施設隊員を集めた派遣施設隊も編成された。
そして今回もIPDの中に「SRCP」こと、「Ship Rider Cooperation Program」が含まれた。これは、ASEAN及び太平洋島嶼国の若手海軍士官や海上法執行機関幹部らが海自艦艇へと乗り込み、海洋に関する国際法セミナーや各種訓練の見学・研修、生活体験などを行うプログラムである。2017年よりASEAN及び東ティモールの国々を対象としてスタートし、2023年より太平洋島嶼国も加わった。今回は、「第7回日ASEAN及び東ティモール乗艦協力プログラム・第3回日太平洋島嶼国乗艦協力プログラム」として、カンボジア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、東ティモール、クック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、サモア、トンガ、ヴァヌアツの19ヵ国、20名(タイのみ2名参加)が佐世保からマニラまでの間「いせ」に乗り込んだ。すべての国が若手幹部を派遣したわけではなく、中には59歳のベテランも含まれていた。
第3水上部隊を指揮したのは、第4護衛隊群司令・夏井隆海将補だ。もともと「いせ」は、第2護衛隊群第2護衛隊に所属し、「すずなみ」は、第3護衛隊群第7護衛隊に所属している。よって、もはや常設の艦隊とは全くことなる編成となっている。これは、現在の海自では珍しいことではなく、作戦を効率よく遂行できる護衛艦を積極的に使っていく方針としたためであり、冷戦期のようながっちりとした“群” の縛りは事実上なくしたのが今の海自の戦術だ。
護衛艦「いせ」には、約300名の幹部そして曹士が働いている。艦長を務めるのは、沖重大樹1等海佐だ。群司令及び司令部幕僚らは、第3水上部隊としての指揮をとり、「いせ」を運用するのは、艦長以下個艦の幹部・曹士となる。
個艦のクルーは、航海科、砲雷科…など、職種ごとのスペシャリストがいる。「いせ」の場合、航空機運用能力が高いことから、飛行科の人数は多い。飛行長が飛行科を指揮をするのだが、「いせ」の副長でもある。これも、「いせ」が各種任務を遂行するためには、パイロットである飛行長の意見が重要であることが理由の一つだ。今回は、「いせ」に2機のヘリが搭載されていた。また「すずなみ」にも1機搭載されていたことから、第3水上部隊としては、3機のヘリを運用していることになる。
自由で開かれたインド太平洋を目指すためには、IPDは重要ではあるが、かなり地道な活動である。SRCPを通じ、アジア・太平洋地域の海軍や海上法執行機関と友好を深めるというのもすぐに結果が出るものではない…。しかし、今回も「いせ」で学んだ若手士官らは、必ずそれぞれの機関の中核となる。10年以上先とはなるだろうが、必ず答えは出る。
継続は力なり―。IPDはこれからも続けていくことが必要不可欠なのである。
Text & Photos:菊池雅之
この記事は月刊アームズマガジン2026年2月号に掲載されたものです。
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