ミリタリー

2025/11/10

CSG25 英空母打撃群、太平洋へ

 

英空母打撃群、太平洋へ

 

インド太平洋地域の平和と安定に寄与すべく、今年イギリス海軍は空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を中心としたCSG25の長期展開を実施した。その途上、日本にも寄港。久しぶりの大艦隊の来日に大いに沸いた。

 

8月28日、東京港へと入港したR09「プリンス・オブ・ウェールズ」。東京の海の玄関口である東京国際クルーズターミナルへと入港した

 

警戒に当たるイギリス海軍兵士。さすがに危機レベルの低い東京港ということで、リラックス

 

 2025年、イギリス海軍は、空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を中核とした空母打撃群「CSG25」を編成し、インド太平洋地域へと大規模展開した。作戦名は「オペレーション・ハイマスト」と命名され、期間は8カ月にも及ぶ。
 これは、2021年に行われた空母「クイーンエリザベス」の遠征に続くものであり、長距離展開能力を高めること、インド太平洋地域の国々と交流を深めること、そして中国を牽制することを目的としている。
 主役となった「プリンス・オブ・ウェールズ」は、「クイーンエリザベス」級の2番艦として2019年12月10日に就役した。同級の満載排水量は6万トンを超えており、イギリス海軍史上最大の軍艦となった。艦載機として運用しているのはF-35Bだ。
 空母は基本的に単艦で行動せず、今回のCSG25のように、複数の艦艇を引き連れ護衛に当たらせる。今回は、イギリス海軍だけでなく、スペイン海軍やノルウェー海軍などもその陣容に含まれており、NATOの繋がりを見せつけられた。

 

横須賀基地のH岸壁に係留中のF-104「メンデス・ヌニェス」。アルバロ・デ・バサン級の4番艦だ。同級は、イージスシステムを搭載した欧州型イージス艦。スペイン海軍の来日は戦後初。戦前を含めると、131年ぶりの来日となった

 

東京港へと入港するF-311「ロアール・アムンセン」。フリチョフ・ナンセン級の2番艦。アルバロ・デ・バサン級をベースにスペインで建造された。ノルウェー海軍が来日したのはこれが初めて

 

空母甲板上のF-35B。海軍と空軍を統合し、ともにF-35Bを運用している。見た目で海軍機か空軍機を見分けるのは難しい


 改めてCSG25の編成を見てみよう。「プリンス・オブ・ウェールズ」、原子力潜水艦「アスチュート」、45型駆逐艦「ドーントレス」、23型フリゲート「リッチモンド」、タイド級補給艦「タイドスプリング」「タイドフォース」、そしてスペイン海軍のアルバロ・デ・バサン級フリゲート「メンデス・ヌニェス」、ノルウェー海軍のフリチョフ・ナンセン級フリゲート「ロアール・アムンセン」だ。ただし、途中で「アスチュート」の動向が報じられなくなる。さすがに原子力潜水艦といえども長期航海は難しかったのか、それとも別な地域で活動しているのか、詳細は不明だ。
 大きな動きとして、CSG25は、本誌でも先月号及び今月号にてお伝えしている米豪主催多国間共同訓練「タリスマンセーバー25」に参加した。ダーウィン沖海域を中心として、参加海軍と海上訓練を実施した。
 その後、北上し西太平洋上にて8月4日から8月12日に渡り、日英米豪西諾共同訓練を実施した。こちらには海上自衛隊から護衛艦「かが」「てるづき」が、米海軍から空母「ジョージワシントン」が参加した。特筆すべきは、イギリス軍のF-35Bが「かが」に着艦するという歴史的偉業を成し遂げたことだ。

 

東京国際クルーズターミナルに停泊中は、船体をライトアップし、お台場の夜を彩った

 

横須賀へと入港する「プリンス・オブ・ウェールズ」。米海軍基地側へと入港した。甲板にはズラリとF-35Bが並ぶ


 この訓練が終わると、一足先に「メンデス・ヌニェス」が日本を目指し北上。7月24日に横須賀基地へと入港した。一旦出港し、7月29日、今度は呉基地へと入港した。
 8月12日、「プリンス・オブ・ウェールズ」「ドーントレス」「ロアール・アムンセン」は横須賀基地へと入港。その後「ロアール・アムンセン」は8月19日に東京国際クルーズターミナルへと入港したが、8月22日には再び横須賀へと戻って来た。
 そして8月28日、「プリンス・オブ・ウェールズ」が東京国際クルーズターミナルへと入港した。艦内にて安全保障に関するフォーラムや武器見本市を開催した。また事前応募制で一般公開も行われた。なんと90人の募集枠に対し、4万人もの応募があったそうだ。
 こうしてCSG25は、9月2日に出港。さらに北上し、津軽海峡付近で目撃される。どうやら日本海側を抜け、九州まで南下したと思われる。
 そして、最後に9月9日から9月14日までの間、東シナ海から西太平洋へと移動しながら日英米豪加諾共同訓練を実施した。こちらには再び護衛艦「かが」が参加している。
 それが終わると、CSG25は長い旅路についた。

 

45型駆逐艦の2番艦D33「ドーントレス」。マストの先に球体が載る特徴的な形。これは多機能3次元レーダーSAMPSON。艦隊防空システムの核心となる部分だ

 

 

Text & Photos:菊池雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年12月号に掲載されたものです。

 

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