2023/09/04
【実銃】ドイツの名銃「Luger P08」アーティラリーモデルの実射性能をチェック!【後編】
Luger
Lange Pistole 08 1917 DWM Artillery Model
両大戦を通してドイツ軍にサイドアームとして使用され、そのデザイナーGeorg Lugerの名前から“ルガー”として世界中に知れ渡っているのが、独特のトグルロックショートリコイルアクションを持つ“P-08”だ。そのドイツ国内における名称は“Pistole Parabellum”だが、1908年にドイツ陸軍が定めた採用名“P-08(Pistole 08)”の名称の方がよく知られている。
今回は第一次大戦期、ドイツ軍が砲兵などに支給したLange Pistole 08、いわゆるアーティラリーモデルにスポットを当て、その驚きの性能をお伝えしたい。
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【実銃】100年以上前の名銃。ピストルカービンの先駆け「Luger P08」アーティラリーモデル【前編】
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【実銃】今流行りのピストルカービンの先駆けとなった「Luger P08」アーティラリーモデルの内部構造を徹底解説!【中編】
レンジレポート
今回の実射は、完全なプライベートレンジで、3種類の9mm弾による25ヤード(約23m)精度テストと、LP-08に敬意を表して100ヤード(約91m)からシルエットターゲットに向けて着弾テストをしてみた。
ただし、テストガンは前述したようにライフリングにダメージがあり、本来の性能を発揮できない可能性があることは、お含み置きいただきたい。
用意したアモは、PMC社115gr FMJ、S&B社115gr FMJ、Federal社147gr HSTの3種でだ。昨今では9mm弾の入手が非常に難しく、価格が以前の4倍に達しているだけでなく、供給そのものが滞っている。今回は家中からガレージまで探して、この3種を調達した。
まず精度テストは、いつもの15ヤードではなく、25ヤードからとした。レストを使用して5発を撃ち、ベストの4発の着弾を計測した。まずPMCは3.5インチ(約89mm)、S&Bが3.25インチ(約82mm)、そして期待のFederalが1.75インチ(約44mm)に集弾した。
PMCは、ルガーにはエネルギー不足気味で、50発の内、ケースがチェンバーに残ってしまうジャムが1回、発射後のホールドオープン不良が2回起きた。他の2種では完璧に作動したので、定評通り、ルガーはホットなアモがお好みのようだ。
この後、両手保持で10~15ヤードからダブルタップや5秒6発など、LP-08にはそぐわない撃ち方も試してみたが、その鋭くも軽いリコイルには驚かされた。特にFederal 147gr HSTはバリバリのデューティアモなのだが、ダブルタップがもの凄く楽なのだ。
Vノッチリアに山型フロントという狙い難いサイトセットアップではあったが、慣れてくると独特な形のフロントサイトがくっきりと浮かび上がってくるようになる。
また、驚いたことに、このリアサイトは特殊工具こそ必要だが、ブレードの上下アジャストが可能なのだ。もちろんフロントサイトも同じ機構で左右のマイクロアジャストが可能になっている。どちらも細かい目盛りまで入っているという周到さで、それぞれに独自のパーツナンバーまで入っている。
そしてお待ちかね100ヤードテストでは、FBIスタイルのシルエットターゲットに、ストックを装着したLP-08で、ニーリングポジションからFederal 147grを5発撃ってみた。リアサイトはもちろん100mにセットした。狙点は胸に当たる5インチ四方の黒い部分だ。
これはなんと1発は右下に飛んだものの、残り4発はヘッドあたりに最高5.5インチくらいに集弾している。これはアジャストさえすれば、十分にシルエット内に収まってしまう集弾性能ではないか。
想像してみて欲しい。このLP-08を装備した野戦砲兵部隊が前線に展開していたとしよう。そこに機動性の高い騎馬偵察隊が遭遇、銃撃戦となった。騎馬隊の主装備はもちろんボルトアクションのカービンだ。距離は約200m、ライフルにとってはそれほど遠い距離ではない。が、砲兵隊は肩から掛けたホルスターを抜くと、ストックを装着し、おもむろに32連スネイルマガジンを装填して撃ち始める。徐々に騎馬隊の周りに弾着が集中し始め、首も出せない状況になってしまう。
当時としてはずば抜けた個人携行ファイアパワーといえるのではないだろうか。何せセミオート+32連マガジンなのだ。200m先に弾幕を張るのは簡単なことだっただろう。
WWI終戦後、当時最先端であったLP-08はその製造を制限されるが、その後マシンピストル(MP18等)にそのポジションを譲り、徐々に姿を消していった。
それにしても、肩付けできるセミオートピストルの効果には驚くべきものがある。だからこそ現行の法律では規制されているのだが、携行できるショルダーウェポンの開発が、100年以上も前に完成していたというのは、驚きを禁じ得ない。
Photo&Text:Hiro Soga
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年8月号に掲載されたものです
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