2021/12/04
ファルコントーイ「ルガーP-08」【毛野ブースカの今月の1挺!番外編】
「月刊アームズマガジン」編集部の毛野ブースカがおくる『毛野ブースカの今月の1挺!』 。今回は番外編パート5ということでファルコントーイのノンブローバック(フィクスド)ガスガン『ルガーP-08』だ。
【番外編パート4】ファルコントーイの「HK P9S」はコチラ
前回に引き続きファルコントーイの製品を紹介しよう。今回はブローバックしないフィクスドガスガンの「ルガーP-08」だ。ファルコントーイはエアコッキングガンからガスガン、電動ガンに至るまで幅広くラインアップしていた中で、ガス式ハンドガンはこのルガーP08と、その前に発売されたブレンテン(外部ソース式のガスブローバックガン)の2機種のみ。各社からガスガンが発売され、ハンドガンのパワーソースがエアコッキング式からガス式が主流になりつつあった1989年3月に発売された。その当時、MGCのM645、ウエスタンアームズのコルトナショナルマッチカスタムといったフィクスドガスガン、MGCのMP5KA4(モータードライブオペレーションガスガン)、東京マルイのMP5A3(ライブカート式ガスフルオート)、コクサイのM19(ライブカート式ガスガン)など、リアルさと実射性能を兼ね備えた製品が各社から続々とリリースされ、エアガン市場は活況を呈していた。
実銃のルガーP08は第1次~第2次世界大戦におけるドイツ軍で制式拳銃である。同じ制式拳銃だったワルサーP38と並ぶ名銃である。エアガンでも人気があり、一説には100万挺販売されたという東京マルイのケースレス式エアコッキングガンをはじめ、マルゼンのライブカート式エアコッキングガン、タナカのガスブローバックガン(現在のマグナブローバックモデルより前に発売されたもの)、サンエイのストライカー式組み立てキットモデル、ポイントのケースレス式エアコッキングガンなどが挙げられる。ファルコントーイは他社にはないフィクスドガスガンとして再現した。
基本的なメカニズムは、フレーム内にガスタンクとガスチャンバーを設けて、トリガーを引くとインナーバレルが後退してBB弾がチャンバーに装填され、ガスチャンバーに付属するガス放出バルブをインナーハンマーが叩くことでガスが放出されてBB弾が発射されるダブルアクションオンリーのフィクスドガスガンとしてはオーソドックスなもの。それにファルコントーイはひと味加えて、トリガーを引くとトグルジョイントが持ち上がるメカニズムによって実銃の特徴であるトグルアクションを疑似的に再現した。実銃は弾が出てからトグルジョイントが跳ね上がるのでリアルではない、トリガーでトグルジョイントを持ち上げるためトリガープルが重い、トリガーを引いている間はトグルジョイントが持ち上がっているので正確なサイティングができないなどデメリットがいくつもあった。しかし、まったく動かないよりはましで、トグルアクションの雰囲気が少しでも楽しめた。
ファルコントーイの製品としてリアルな外観だが、刻印から判断すると純粋なドイツ軍仕様ではなくルガーP08やワルサーP38のカスタムで名高いアメリカのガンスミス、ジョン・マーツ氏が手掛けたルガーP08カスタムをモチーフにしているようだ。なぜマーツ氏のカスタムをモチーフにしたのかは今となっては謎だが、マーツ氏のカスタムが月刊Gun誌でレポートされており、おそらくそれを元に設計したと考えられる。さらに、バリエーションとして発売された「ルガーアーティラリーカスタム」はまさにマーツ氏のカスタムをモチーフにており、それを念頭に4インチモデルが開発され、アーティラリーカスタムに先駆けて販売されたのかもしれない。
価格は6,200円(アーティラリーカスタムは7,800円、アーティラリーリアルフィニッシュは11,600円)とMGCやウエスタンアームズのフィクスドガスガンに比べればリーズナブルで、ガスガンの入門機種としては最適だった。改めてこの銃を手にしていると、トリガーを引いてトグルジョイントを動かすギミックを搭載しなくてもよかったのではないだろうかと思ってしまう。外観をブラッシュアップして、トグルジョイントは指で動かせる程度にしたダブルアクションオンリーのフィクスドガスガンにしたら今でも売れるのではないだろうか。しかしファルコントーイというメーカーが廃業した現在ではそれが実現することはないだろう。フィクスドガスガン全盛時代を彩った製品のひとつして後世に伝えるべく再び眠りについてもらおう。
[プロフィール]
アームズマガジンの編集ライター。エアガンシューティング歴35年。数多くの国内シューティングマッチ入賞経験に加えて、1999年、2000年に開催されたIDPAナショナルズ参戦、シグアームズアカデミーや元デルタフォース隊員のラリー・ヴィッカーズのタクティカルトレーニングを受講するなど実弾射撃経験も豊富。今まで25年、300冊以上のアームズマガジンと関連MOOKの制作に携わる。
Twitter:@keno_booska