2021/09/24
マルゼン「S&Wモデル659&コルトガバメント」【毛野ブースカの今月の1挺!番外編】
「月刊アームズマガジン」編集部の毛野ブースカがおくる『毛野ブースカの今月の1挺!』 。今回は番外編パート3ということでマルゼンのスライド固定式ガスガン『S&Wモデル659』と『コルトガバメント』だ。
【番外編パート2】マルゼンの「コルト・マークスマンガバメント」とチヨダの「ハードボーラー・ターミネーターカスタム」はコチラ
マルゼンのガスガンシリーズ第2弾、第3弾として発売されたスミス&ウェッソンモデル659(以下モデル659)とコルトガバメント(以下ガバメント)。マルゼンといえば番外編パート2で紹介したコルト。マークスマンガバメントや第1次サバイバルゲームブーム時に人気を博したKG-9、ミニUZI、ライアットショットガン、ライブカート式ハンドガンなどエアコッキングガンをメインに作っていた。モデル659が発売されたのは1986年、ガバメントが発売されたのは1987年。1985年にはウエスタンアームズのAR-7、MGCのM93R、アサヒファイアアームズのバトルマスターといったガスガンが登場し始め、マルゼンも本格的にガスガンの製造に乗り出した頃だ。
MGCやウエスタンアームズといったモデルガンメーカーは当時の価格で10,000円台のリアル路線のガスガンだったのに対して、純粋なエアガンメーカーであったマルゼンは5,000円前後の低価格路線のガスガンで勝負に出た。マルゼンのガスガンシリーズ第1弾としてリリースされたのはスミス&ウェッソン44マグナム。1986年当時の価格で3,980円。外観はリボルバー(スミス&ウェッソンM29)をモチーフにしているものの、シリンダーは回転もスイングアウトもせず、本体上部にスコープ型マガジンが搭載されているという、リボルバーのガワをしたダブルアクションのオートマチックピストルだった。このモデルの次に発売されたのがモデル659だ。
モデル659はスミス&ウェッソンのM659をモチーフにしたものだが、実銃のM659はオールステンレス(=オールシルバー)で、オールスチール(=オールブラック)のM459があるのだからモデル459にすればいいのに、どうしてモデル659になったのだろうか…。多分に同時期に発売されたMGCのガスガンM459やM559、M659を意識したのかもしれない。内部メカは44マグナムを踏襲したインナーバレル後退式で、ガスタンクとガス放出バルブが別々に設けられている。トリガーはシングル/ダブルアクション。そしてモデル659のいちばんの特徴はマガジン。なんとスライド上部に設けれているのだ。かなり割り切って設計されている。価格は4,980円とライバル(?)のMGCのM659が11,000円だったのでおよそ半額。こうなるとMGCのM659が買えない方はマルゼンのモデル659をどうぞと思ってもおかしくはない。
どちらかと言えば44マグナム、モデル659とも過渡期的な作りで、第3弾のガバメントはマガジンがフレーム内にあるチューブラー式を採用した。内部メカは44マグナム、モデル659と同じ。ダブルアクショントリガーに違和感はあるがスライド固定式ガスガンだから仕方ない。価格は5,000円。これまた当時発売されたMGCのウィルソンLEが13,000円だったので半額以下。マルゼンがオーソドックスなコマーシャルモデルだったのに対して、ウィルソンLEはカスタムガバメントだがHARETシングルアクションと呼ばれる独特なトリガーメカとリアルな外観から大変な人気を誇った。
マルゼンはその後、これらと同じ内部メカを持つセミオートガスガン化したKG-9、UZIピストル、コルトパイソン、44オートマグなどをリリース。コストパフォーマンスを重視したガスガンをリリースし続けた。しかし、1980年代後半からガスブローバックガンが登場し、特にハンドガンにおいてユーザーはリアルな形状、撃ち味が楽しめるモデルに興味を抱き始めた。そうした中、スライド固定式ガスガンはマルゼンのようなオモチャ然としたモデルは廃れていき、MGCのガスガンのようなリアルな外観と着脱式フルサイズマガジンを採用したものが主流になっていった。
あらためて手にするとかなり牧歌的な作りのマルゼンのガスガンシリーズ。今度機会があればシリーズ第1弾の44マグナム、その後に登場するコルトパイソンをご紹介しよう。きっと「え、これがリボルバー?」と驚くはずだ。そんなモデルでも、私も含めた当時の子供たちは喉から手が出るほど欲しかったものだ。今はいい時代になったと思う。この2挺も後世に伝えるために再び永い眠りについてもらおう。
[プロフィール]
アームズマガジンの編集ライター。エアガンシューティング歴35年。数多くの国内シューティングマッチ入賞経験に加えて、1999年、2000年に開催されたIDPAナショナルズ参戦、シグアームズアカデミーや元デルタフォース隊員のラリー・ヴィッカーズのタクティカルトレーニングを受講するなど実弾射撃経験も豊富。今まで25年、300冊以上のアームズマガジンと関連MOOKの制作に携わる。
Twitter:@keno_booska