実銃

2023/06/26

【実銃】名銃CZ75の魂を継ぐモダンピストル「AZ-P1」

 

「もしも、CZ75がこうなっていたら……」

 

 そんな思いが結実した、チェコのARMA ZEKAのピストル・AZ-P1。野心的なこの銃は果たして最高のコンバットピストルたりえるのだろうか? 今回はこのハンドガンの魅力を解説したレポートを公開する。

 

 

CZ75を継ぐもの

 

 銃のアクセサリーを製造していたメーカーが、そのノウハウを活かして銃本体の製造にも参入するという話はよく耳にする。アクセサリーを作るにはその銃についてよく知っていなければならないし、色々な銃に触れる機会があれば、その良し悪しについての知見も増えていくものだ。そうなれば、今度は自分たちでも銃を作ってみたくなるというのは自然な流れのように思える。今回紹介するのはCZをはじめとしたメーカーに照準器を供給していたメーカー、ARMA ZEKA。彼らはなんと「俺たちならCZ75をこうするね!」と銃を作り上げてしまったのだ。

 現在、CZ75は完全にスポーツシューティングモデルにスイッチしており、CZのタクティカルモデルはストライカーファイアのP10シリーズが担っている。確かに世間ではコンバットオートといったらグロックに代表されるストライカーファイア・ポリマーフレームピストルという印象が根強い。そもそも、CZ75はチェコスロバキア時代に西側に売り込み外貨を稼ぐため、最高のスポーツシューティングピストルを目指して開発されたものであるので初めから姿勢としてはブレていないのかもしれない。しかし、ARMA ZEKAは「もしもCZ75が違う道を歩んでいたら?」という考えのもと、ついにAZ-P1というオリジナルのコンバットピストルを開発した。

 

 

 

AZ-P1
Super Optics 2

  • 使用弾:9mm×19
  • 全長:225mm
  • バレル長:127mm
  • 重量:1,145g
  • 装弾数:19発

 

 AZ-P1はCZ75のシルエットを踏襲しているが、CZ75で採用されたフレームがスライドをくわえ込む特徴的なレイアウトではなく、スライドがフレームをくわえ込む一般的なレイアウトを採用している。これでスライドの露出面積が大きくなり操作しやすくなった。サムセーフティはコックアンドロックに対応し、サムレストにも使える大きめのものになっている。さらにフレーム中ほどにもくぼみを設け、サポートハンドのサムレストとして使えるようにしてある。このように各所に射手目線のアイデアが盛り込まれているが、筆者がもっとも面白く感じたのはグリップパネルだ。パネルがグリップよりも下に伸びて、外側に反り返っている。これなら握りやすくなるし、マグウェルの役目も果たせる。なかなかのアイデアだ。銃全体のデザインも悪くなく、スマートながら力強いものに仕上がっているし、現代の銃らしくドットサイトの搭載も可能となっているなど、この辺りはすでにこなれた感じの設計をしている。

 

フルアジャスタブルのリアサイトはAZのお家芸。このモデルはオプティクスレディだ

 

グリップがそのままマグウェルになる。グリップの滑り止めはエッジがシャープに立っている

 

フレームに設けられたくぼみはサポートハンドの親指を置くサムレストとなる


 もっともCZ75の精神を受け継いでいるのがトリガーだろう。アジャスタブルのストレートトリガーはさながら競技用の銃のようだ。シングルアクションオンリーのメカニズムはオリジナルのCZ75の特徴からは外れているが、CZ75もタクティカルスポーツやORANGEシリーズにはシングルアクションオンリーのモデルがあるので、まったくの亜流というわけでもない。

 フレームはアルミニウム製で、CZ Shadow2のような重量はないがそれでも1kgを超える。フレームの表面はマットな仕上げだが、スライドはややブルーがかった半光沢だ。そのツートンカラーが美しく見える。

 

実射してみると、金属のグリップパネルでも滑り止めがしっかり効いており、コントロールしやすい。それでいてグリップしている手が痛くなるようなこともない

 

 AZ-P1は極上とも言えるほどのトリガーフィーリングを持った、とても戦闘力のあるピストルだ。ただこの銃を何度も射撃したローマンいわく、度々スライドが閉鎖不良を起こすトラブルに見舞われているという。きっちりと作りすぎてちょっとしたカーボンが付着しただけでも機嫌を損ねるようだ。クリーニングやメンテナンスを欠かさなければそれは回避できるだろうが、コンバットピストルとするにはちょっと繊細すぎるかもしれない。その辺りが解消された後継機の登場に期待だ。

 

 月刊アームズマガジン2023年6月号ではさらに詳しい写真とともにレポートしている。気になる方はそちらもご覧いただきたい。

 

Special Thanks to Le cercle de tir de Wissous
Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年6月号に掲載されたものです。

 

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