実銃

2023/04/17

【実銃】ベレッタ92/M9シリーズの射撃特化モデル「BERETTA 92X」

 

古豪ベレッタの放つ新たな輝き

 

 ガンメーカーの老舗、ベレッタが誇る傑作ピストル・92。いまだ高い評価を得ているものの、米軍制式拳銃の座を退いたこともあってだんだん「古い銃」として認識され始めているのは否めない。そんな中、その92をさらに射撃に特化させた92Xが登場したことは記憶に新しい。果たしてこれはベレッタ新時代の幕開けなのか、それとも──?

 

 


 

 

Beretta 92

  • 使用弾:9mm×19
  • 全長:217mm
  • バレル長:125mm
  • 重量:945g
  • 装弾数:15発

 

 久しぶりにベレッタ92を握ってみると、丸みを帯びたグリップに懐かしさが込み上げてくる。これぞ92、といった感じだ。スライドに手をやると、スライドが手に触れる面積が他の銃と比べて小さく感じる。バレルが露出していることもあって、掴みにくいというほどではないがコッキングにコツがいるのだ。懐かしさに拍車がかかる。久しぶりだというのに少し手にしただけであっという間に92の感覚を思い出してしまった。主張の強い銃なのだ。

 

もう30年近く前、この92が全盛期の頃、日本でもモデルガンが発売された。その時スライドのセーフティの溝に切削跡が表現されていてリアルだと感心したものだったが、後に実銃を見てみるとそんな跡はまるでなかった

 

 92は米軍に採用されていたこともあり、誰もが知るレジェンドハンドガンとなった。人気のモデルであるため、ベレッタは現在も多くのバリエーションを展開している。その中から今回選んだのはスタンダードな92FSと、最新の92バリエーションとなる92Xだ。

 

 

Beretta 92X 
PERFORMANCE

  • 使用弾:9mm×19
  • 全長:222mm
  • バレル長:125mm
  • 重量:1,350g
  • 装弾数:15発

 

 92Xはベレッタ92を射撃に特化させたモデルであり、それはつまり射撃競技での使用を前提にチューニングが行なわれたということである。耐久性や携行性を犠牲に、純粋な射撃性能を追求しているわけだ。もちろん必要充分な耐久性は備えているが、ミリタリーユースピストルのように砂や埃に晒される環境は想定していない。頻繁にクリーニングや整備を行なう前提で、各パーツはギリギリまですり合わされて遊びをなくし、射撃精度の向上を第一の要件としている。携行性については、そもそもホルスターに入れて常時携行するような場面を想定していないので問題ない。むしろそのぶん重量を増すことで、リコイルやマズルジャンプを抑えて安定した射撃が可能となる。こうした運用には1kg以上の重量が望ましいとされている。ポリマーフレームの銃だと600~700g程度で、軽すぎてしまうのだ。ポリマーフレーム全盛の今、メタルフレームピストルのメリットのひとつと言えるだろう。

 

スライドにあったセーフティをフレーム側に移している。もちろんオリジナルの92同様アンビだ。サムレストとしても使えるよう大きめに作られている

 

テイクダウンレバーも大きく張り出しているうえ、角度がついておりサムレストとして活用できる。これがリコイルを抑え込むのにかなり有効なのだ

 

もっとも力を入れられた改修点である“エクストリームSトリガー”。フラットかつ滑り止めのグルーブが刻まれている

 

ひと回り大きくなったマガジンキャッチ。邪魔にならない範囲で操作性を高めている。グリップパネルにはベレッタと92Xのロゴが入る

 

ホルスターでの携行を想定していないので、ランヤードリングはオミットされた。マグウェルというほどではないが、グリップが末広がりになっているのでマグチェンジがスムーズにしやすい

 

ロッキングブロックがバレルの下にあることでかなり高いところにマガジンが位置する。つまり、バレルの位置が高くなっている

 

 もうひとつ、競技用ピストルではトリガーもミリタリーユースとは違ったフィーリングに調整される。軍用ピストルでは暴発防止の観点からトリガープルは重く、トラベル量も長めに作られている。しかし、充分に射撃を訓練した競技シューターが扱うのであれば最小限のトリガープル、最小限のトラベル量を持つマッチトリガーが最適だ。トリガープルが軽く、トラベル量も短ければ、シアの落ちる感触が掴みやすい。シアの落ちる感触が掴みやすいのであれば、それに合わせてリコイルを抑えやすく、次の射撃にも移行しやすくなる。コンマ数秒が勝負を分ける射撃競技において、こうした要素がどれだけ重要かは想像に難くないだろう。

 そんな射撃競技に特化したハンドガン、ベレッタ92X PERFORMANCE。その実射レポートを月刊アームズマガジン2023年5月号に掲載しているので、興味がある方はそちらも参考にしていただければ幸いだ。 

 

Special Thanks to Le cercle de tir de Wissous
Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年5月号に掲載されたものです。

 

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