2023/06/25
【実銃】独特な内部機構を持つ「Kriss Vector」実射してその性能に迫る!【後編】
KRISS VECTOR
GEN Ⅱ SMG 9mm
独自のリコイルオペレーションシステムを持つサブマシンガンとして名高いのが“KRISS VECTOR SMG(クリス ベクター サブマシンガン)”だ。今回紹介するのは、2015年に刷新されたミリタリー/LE(法執行機関)専用の第2世代9mmモデル。かつて注目を集めた.45ACPモデルとは異なる9mmサブマシンガンに迫ってみたい。
実射
3週間ほど待つと、KRISSが戻ってきたという連絡があった。ただし、テストファイアをしてみたエレンの報告では、リロードとロシア製スティールケースの124gr. FMJで試したところ、1マガジンで1~2発のジャムが起きるという。
まあジャムが起きるなら、それをそのままレポートすればいいのだから、一応ウィンチェスターの115gr. FMJとFIOCCHIの115gr. FMJ、そしてPD(ポリスデパートメント)のデューティアモとしてポピュラーなフェデラル社の147gr. HSTを1000発ずつ用意して撮影に臨むことにした。
まず集弾テストをおこなった。SMGに集弾性能は求めないという意見もある。しかし、MP5がこの50年にわたってSMGのディファクトスタンダードとなったのは、その集弾性能が高かったからだ。したがって集弾テストは重要だ。マガジンはグロック純正の33rdマガジンに、30発を装填して行なうことにする。用途から考えて、その距離は15ヤードとし、テーブルからアモボックスにレストした状態でオープンサイトを使って撃つ。
FIOCCHI 115gr. FMJ 10発を撃った。結果は1.25インチ(約32mm)と上々で、ダットサイトを使えば1インチ以下の精度も期待できそうであった。
次に、個人的には興味深い2ショットバーストを試してみる。10ヤードからスタンディング、ショルダーから10回20発を撃ってみる。発射音はほとんど1発に聞こえる。ROFが毎分1,000発以上であるのは確実で(KRISS USA社の発表では毎分1,100発)、マズルライズが抑えられているのを証明するような集弾性能を見せてくれた。
初弾と2発目のグルーピングが2インチ(約5cm)以内なのだ。この2ショットバーストは効果的だろう。10ヤードから2発をこぶし大に集弾させることができれば、CQBにおける有効性は大だ。
ここまで30発を撃ってマルファンクションはなし。順調である。今度はセレクターをフルオートにして、同じく10ヤードからショートバースト(トリガーコントロールで35点射を撃つ)を試してもらう。ここからはシューターの技量がモノをいう。
その結果は写真の通り、30発撃って、3.5インチ(約90mm)以内にまとまった。これは射手であるエレンの技量が高い故の結果であろう。彼のショートバーストは、そのほとんどが2~3発以内に収まっていた。
次は、お待ちかねフルオートで30発全てを撃ち込んでもらう。毎分1,000発とすると、1秒間に16.7発、つまり30連マガジンは2秒以下で空になってしまう。その結果は、これがまたなんと7インチ以内に収まってしまった。9mm KRISS VECTORの面目躍如といったところだろう。
ここでこらえ切れず筆者も撃たせてもらった。シングルショットはもうスウィートというしかない。9mm口径で肩付けして撃つのだし、スーパーVシステムも効いているのだろう。先日撃ったルガー社のPCC(ピストルキャリバーカービン)と比べても、かなり撃ちやすいといえる。
精度も5.5インチ(約140mm)バレルとしては優秀で、75ヤードほど先にあった6-7インチ大の石にも90%ほどの確率で当てることができる。
そして2ショットバーストは、思ったとおりこのクリス ベクター最大の強みではないかと思ってしまう。なにせ10ヤードからヘッドショットを狙って、2発とも確実にヒットできる有効性は大きい。私もフルオートモードでショートバーストにトライする。発射弾数は3発から6発の間でコントロールは難しいし、6連射になるとその6発目はようやくターゲットペーパー内に収まるかどうかといった体たらくなのだ。
確かにリコイルそのものはそれほどでもないが、発射サイクルが速すぎるためか、やはり前方に体重をかけて耐えなければならない。
フルオートモードでトリガーを引き続けるというのは、楽しくはあるが何かに命中させるというのには向いていないというのを実感した。
もちろん部屋の中など、ごく近距離なら話は違ってくる。しかしながら、市街戦やバトルフィールドでの戦闘を考えると、やはり短めの5.56mmNATO口径のほうが使い道が多いと感じる。
さて興味深かったのがサプレッサーを装着しての射撃だった。今回用意したのはSilencerCo社製“OCTANE 9 HD”というモデルだ。フルオートレーテッドで9mmなら127db(デシベル)まで音量を抑えてくれるはずだ。
フルオート30連発のテストに移ると、発射煙がもうもうと立ち込める。その煙の中、エレンが銃を置いて、足早に去っていくではないか!
「Wow,wow,ちょっとストップ、眼を洗ってくる。少し油断した。もう一回やらせてくれ」
なんとフルオートを撃ちなれているエレンが、リコイルで上体を起こされてしまったのだ。着弾も結構散ってしまい、1発はターゲットフレームを撃ち抜いている。これまでにこんなことは一度もなかった。
「いやー、油断したよ。サプレッサーを装着する前とかなり反動のキャラクターが変わるんだ。撃ってみてみろよ」
自分で撃ってみて、エレンの言ったことがよく解った。いやはや、バーティカルグリップあたりを筋肉男にぐいぐい押されているような圧力を感じる。エジェクションポートからと思われる噴き戻しガスは容赦なく顔面を直撃するし、火薬カスのような異物も飛んでくる。
KRISSにはOSSサプレッサー社製の発射ガスを前方へリリースするタイプのサプレッサーが必需品だろう。ここまで二人で800発ほどは撃ったが、マルファンクションはゼロだった。エレンも驚いていたが、このあとフェデラル147gr. HSTを撃って見ると、15発ほどで排莢不良を起こした。スティールケースの安価な弾も試してみたが、5発目でエジェクトが上手くいかずジャムを起こした。
どうも使用する弾にはピッキー(好き嫌いがある)なようだ。
とはいえ、楽しいSMGではある。個体差の問題なのかもしれないが、FIOCCHI 115gr. FMJを使う限りは問題ないが、147gr. JHPでジャムするようでは、シリアスな運用は難しそうだ。
リコイルとマズルライズは確かに抑えられている。今回の撮影では、CZのSCORPIONも並べて撃ってみたので、少なくともこの2挺での比較では、リコイルに関しては確かにKRISSのほうが抑えられているといえる。
しかしセミオート、フルオートともに、どちらが自信を持ってターゲットに集弾できるかというと、個人的にはCZスコーピオンに軍配を上げる。これについての詳しい話は、また次の機会で紹介したい。
Photo&Text:Hiro Soga
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年6月号に掲載されたものです。
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