実銃

2023/05/04

【実銃】民間で注目を集めた廉価版ARピストル「PSA PA-15」

 

Palmetto State Armory
PA-15 AR PISTOL

 

 

コスパ抜群!大衆向けARピストル

 

 ショートバレルにストックなしというARピストルは以前からあったが、その存在価値には疑問符が付いていた。使い道がない…といったら言い過ぎか。しかし、スタビライジングブレイスという世紀の大発明がその状況を一変させた。これを装着すれば、見た目は禁断?のショートバレルドライフルに変身! 使い勝手も大幅に向上する。これはパルメットステイト アーモリーの廉価版ARピストルだが、コストパフォーマンスは抜群、撃ちまくって遊ぶにはピッタリだ。
 

キャンプ・レジューン


 ノースキャロライナへ越してから、急激に目にすることが多くなったのがAR-15系の銃だ。


 ショップでもガンショーでも、ネットの売り買いサイトARMSLISTのローカル版でもやたらと見る。何度か書いているように、自宅近くにはマリンコの基地、キャンプ・レジューンの敷地が大きく広がっている。空を見上げれば毎日、オスプレイやらヘリがビュンビュン飛び交い、夜中には戦車(大砲?)の訓練らしき爆音で自宅の窓ガラスがグワンと震える。そんな米軍お膝元の土地柄が強く関係しているのは間違いなかろう。

 

機関部の様子。セレクターやらボルトストップ等はMil-specに準じたノーマル仕様のままだ


 無論、AR-15系は銃器業界全体における不動のトレンドには違いない。しかし、言うまでもなくミリタリーの方々には鉄砲好きが多いし、基本、AR-15好きである。なのでその傾向がこの地ではモロに、顕著に垣間見れる感じなのだ。


 でだ。コレは自分の思い込みなのかもしれんが、フルサイズと並行して、この地ではCQB系の短いヤツの存在感が強いように見受けられる。中でもARピストルが大人気だ。前述のARMSLISTでも、アッパーだけ3本集めての個人出品とか、大盛況の様子。AR系はアクセサリー類が豊富なため“大人のレゴブロック”という例えがあるくらいだが、皆さん部品を取っ換え引っ換え、大いに楽しんでいるご様子なのだ。

 

ARピストルだ。Palmetto State Armory製のPA-15 MULTIをベースにした個人カスタムだ。アサルトライフルの代名詞、AR-15のエッセンスをギュギュっと凝縮した姿が可愛く、同時に過激。取り回しは軽快そのものだ

 

 そんな活気に当てられて、単純な自分は「うえ~ニートじゃん」などと早速触発され、興味が膨らんできている。拳銃でもライフルでも、ショートな切り詰めバージョンは独特の魅力を放つもの。

 

 ただし、だ。情けない事に自分は、AR-15系はイマイチ詳しくない。


 一応、COLTのHBARは所持している。コレは規制直前に駆け込みで買った自慢のプレバン・モデルだ。しかし、たったそれ一本なのである。イリノイ時代からM4が欲しいだのSP-1が欲しいだのとしつこく書いてるわりになかなか買い切れない。その程度の音痴なのだ。従ってARピストルとなると、もっと音痴。

 

バレルはハンドガン並みの7.5インチ。それを、上下左右にピカティニーレイルが付いた7インチのAIM Sports製フリーフロート・ハンドガードが覆う。バレルナットを一体化したワンピースのデザインが特徴的で、単体価格は40ドルちょいだ


 自分の中でのAR ピストルのイメージと言えば、先ずは遥か昔の月刊モデルガンチャレンジャー誌、84年10月号のカスタムモデルガン造りを紹介するコーナーで見たMGCのプラ製M16モデルガンの切り詰めモデルが思い浮かぶ。ハンドガードの代わりにイングラムのサプレッサーをバレルに被せた姿が出色だった。当時はこーゆーのもあり程度の認識だったが、わりと結構、時代を先取りしていたか。

 

フラッシュハイダーはGuntec製のCone Flash Can。全長73mm、径が34.8mmの極太サイズ。単調な寸胴ルックスはやや野暮ったくもあり、好みが分かれるところかも。単体価格は30ドルほど


 次に思い出すのは、Turkさんが93年10月号の旧Gun誌で紹介したロッキーマウンテン・アームズのペイトリオットだ。あの短さは鮮烈だった。その翌年、今度は映画『今そこにある危機』(『Clear and thepresident danger』)に登場したオリンピックアームズのOA-93アサルトピストルも凄かった。こっちは小型化の為にリコイルスプリングとコッキングハンドルがバレル上部に移設されており、バッファーチューブを持たないすっきりしたフォルムが特徴的で刺激的。劇中、ジャングル内での取り回しと携帯性の良さが際立ち、強く惹かれたもんだ。

 

出始めの頃のARピストルは、何やら用途不明というか特異な隠密感を強く纏っていた。しかし昨今の製品は明朗快活、プラクティカル感にあふれた存在に進化しているように思う

 

 その次がどーんと飛んで、イリノイ時代の2013年、樹脂系ボディのプロフェッショナル・オーディナンス製C15ピストルを遂に購入。独自規格でレイル等が一切なく、拡張性を欠く過度期の製品だったが、樹脂を使ったその未来的なフォルムに自分は惚れ込んだ。ただ、購入から一ヵ月後、フレームのバッファーチューブの基部にクラックを発見(ココは常に負荷が掛かる部分であり、構造的な欠陥なのは明らか)。購入先のショップへ相談したら中古にもかかわらず店頭保証期間内ということで返品ができ、命拾いしたのだった…ざっとこんな迷走ぶりだ。正直、C15にはいまだに未練が残るが、独自規格で展開を望めないあのカタチに気持ちを引きずってる辺り、明らかに音痴の証なわけで。

 

COLTのHBARと。両者が並ぶとコレだけの差がある。HBARの全長は1,000mmで重量は3,900g。対するPA-15ピストルの全長は660mmで重量は2,900gだ。バレル全長はHBARが508mm、ARピストルは半分の250mmだ


 ココでいったんC15への未練は忘れ、自分がARピストルを今組むと考えると、どうだろう。やっぱしコルトをベースに、ナイツのアッパーやらパーツ類でドレスアップというのが理想か。しかしそれだと、ナイツの部分だけで1,000ドルは軽く超えるだろう。何しろナイツの製品は、フロントサイトが150ドルとかスコープマウントだけで400ドルとか、とてもじゃないけど手が出ない。まあ手っ取り早く、スプリングフィールドアーモリーのSaint Pistolとかが落としどころかな。7.5インチのコンパクトさにM-LOKとPicatinnyレイルを備えた今時のスタイルがクールで、900ドルちょいのお得なパッケージ感覚も素敵だし。いやいやその前に、念願のM4を手に入れるのが急務だろう。フレーム側をピストルで登録しておけば、アッパーは後から色々載せ替えれば良いし…と散々迷いまくっているところへ、運良く友人から借り物を一本調達出来た。今回はそれをご紹介しようと思う。
 

NcSTAR製のフリップアップ式フロントサイト。普段は折りたたんでおけば邪魔にならず、オプティカルサイトのバックアップ的位置付けだ。左右のウイングがA2のそれを彷彿とさせ、実際、A2スタイルのフロントポストが上下にアジャスト可能。単体価格は30ドルほど

 

リアサイトもNcSTAR製のフリップアップ。デュアルなエイミング穴の切り替えやら左右の調整ノブ等、これまたA2っぽくて使い勝手は良好。単体価格は30ドルほどだ

 

Palmetto


 ご覧のモデルは、Palmetto State Armory(PSA)のフレームをベースにしたARピストルだ。


 全長70cm弱。ダークアースとブラックのツートンボディは十二分にコンパクトで、ややファッティな印象なのは野太いフラッシュハイダーと明るいグリップの影響かというファンシーな一挺である。

 

ハンドガードの下部にMagpulのAFG(Angled Fore-Grip)を取り付けてある。これによりホールド感が格段に上がり、コントロールが容易となる。ピストルのカテゴリーではハンドガードにスティックタイプのハンドルを付けるのはご法度。しかしこの形なら大丈夫だ。価格は35ドル程度


 ベース元のPSA社は、低価格のAR15系商品群で有名になった会社だ。安価であっても性能や耐久性は悪くなく、同社自らがYouTubeで耐久テストの模様などを公開して評判となり、人気が出た。創立は2008年。U.S.ナショナルガード出身でイラク派遣の経験もあるJaminMcCallumという人物がサウスキャロライナを拠点に興した。当初はマガジンと弾の通販から出発し、今では銃器一般を扱う従業員200名以上のビジネスに発展。主力はウェブサイトだが、サウスキャロライナ内に6店舗ほど店も構える。

 

トリガーはMil-specのノーマルをキープ。自分だったらGEISSELE製のシステムに替えたい。トリガーガードも、今時ならMagpulのEnhancedくらいのオシャレはしたいでしょう


 ココのAR系は本当に安い。クラシックタイプのARピストルのスターターキット(10.5インチ銃身。Mil-spec型フロントサイトとE1カービン・ハンドガード)なら、たったの289.99ドル。コレに素のフレーム以外はすべて含まれる。そして素のフレームのほうも49.99ドルとお安く、つまり計399.98ドルでとりあえず一挺、新品銃が組み上がってしまうのだ。AR系はマーケットが大きく競争が激しい。その中にあって、薄利多売で勝負を掛けている筆頭のメーカーがココになる。


 で、銃のオーナーは筆者の友人のロバートさん。元海兵隊の退役軍人だ。彼は今も基地内で働いており、3年ほど前に同僚でFFAディーラーをやっている海兵隊中佐にお任せで調達し、仕立ててもらったのがこの一本らしい。支払いは現金じゃなく、手持ちのSIG P250とウインチェスターの.32ライフルとの交換で手に入れたとのことだ。

 

エジェクションポート。この周辺も、マグキャッチを含めてMil-spec仕様のままだ


 彼はかなりの鉄砲好きだ。コレクションはざっと20挺以上は持つ。AR系は他にカービンタイプを2本所持し、そろそろピストルタイプも欲しいかなみたいなノリでゲットしたのだそうだ。


 試しにPSA社のサイトをチェックし、その他色々探し回ったが、コレとドンピシャの形は見つからなかった。恐らく製作者であるマリンコの中佐殿が、PSAのキットにアクセサリー類を好みで載せて組み上げたのではと推測する。

 

そしてチャージングハンドルもノーマル。AR系の銃において、チャージングハンドルのスカスカ感ほど嫌いなものはない。ちょっと捻ったら折れちゃいそうな、薄いアルミ合金のコレを操作するたびに安っぽさを感じる。RADIAN WEAPONS のRAPTOR辺りに替えたら少しはマシになるのだろうか

 

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Photo&Text:Gun Professionals サウスカロライナ支局

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年12月号に掲載されたものです。

 

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