実銃

2023/03/01

【実銃】実銃リボルバー事情 ~リボルバーは終わらない~

 

REVOLVER STRIKES BACK

 

 

S&W Model 13, Model 65, Colt Detective Special

& S&W Model 640

 

 

リボルバーはまだ終わっていない


 近頃はシューティングレンジでリボルバーを見かけることが珍しくなってしまった。しかし、今年はあのコルト社からパイソンが復活したり、キンバー社がこれまで2インチバレルのみだったK6sリボルバーのバレルバエーションとハンマー外装モデルをリリースするなど、密かにリボルバームーブメントが起きているのだ。

 今回は、往年のリボルバーマスターに登場してもらい、セルフプロテクション用としてのリボルバーにフォーカスを当ててみた。題して“リボルバー ストライクスバック”(リボルバーの逆襲)だ!

 

リボルバーパフォーマンス


 時代の流れに飲み込まれたかに見えるリボルバーだが、本当に“過去の遺物”になってしまったのだろうか。そのあたりを現在リザーブドポリス/インストラクターである、Dean Caputo(ディーン・カプート)に聞いてみた。


「私はそうは思わないな。ポリスオフィサーの立場から言わせてもらうと、バックアップガンとしてのリボルバーは、S&W Jフレームのようなスナッブノーズに限られるが、現役オフィサーの70%近くが所持しているという統計もある。

 

 .38スペシャル+P弾の程よい威力とマネージしやすいリコイル、そしてトリガーを引けば必ず弾が出るという信頼性は何物にも代えがたいリボルバーのアドバンテージだと思う。5発、もしくは6発しかない装弾数は弱点だとする人も多いが、これもポリスの統計では、全米で起きるポリスオフィサー絡みのshootout(シュートアウト:銃撃戦)のうち、90%以上が3発以内、7ヤード以内で片が付いている。

 

 さらに他のデータでは、リボルバーを使ったオフィサーのヒット率が35%であるの比べ、セミオートの方は発射弾数が1.26倍なのに、ヒット率は25%だったという。他にも、とあるフロリダ州のPD(ポリスデパートメント)で、1990 ~ 2001年にわたる12年間に公務中の発砲弾数は1,300発以上が正式カウントされているが( そのほとんどがセミオートだ)、そのヒット率は15.5%であった。

 

 つまり、1,300発の内1,100発はハズレだったんだな。悲しい現実だが、多弾倉のセミオートになるほど、無駄弾が多いということだ。我々インストラクターとしては、忸怩(じくじ)たる思いがあるよ」

 

 

 驚きの数字ではあるが、現実のシュートアウトが7ヤード以下で起きていて、使ったのは3発までというのであれば、その重くて長いトリガープルが弱点とされるダブルアクションリボルバーにも光明が見えてくるといえそうだ。近距離であればダブルアクションによる“ポイント&シュート(サイトを使って狙い撃つのではなく、そちらに向けて撃つという緊急射撃)”でのヒットが期待できるからだ。


 ただしここではっきりさせておきたいのは、今回の記事の目的が“リボルバー礼賛”ではないということだ。現代のコンピューター制御工作機械の効用により、工業製品の工作精度は飛躍的に向上し、特にセミオートピストルの世界ではその精度、リライアビリティ(信頼性)、そして人間工学的なデザインが急激に進歩してきている。さらに弾薬の性能も改善が著しいために、ハンドガンとしてのポテンシャルは確実にセミオートの方が上なのだ。

 

 

 以前は、精度と信頼性においてはリボルバーの方が優れている、とされたものだが、現在ではそれらを含めてセミオートも同等もしくは撃ち易さや装弾数、リロードのし易さなどで、完全に立場が逆転してしまった。

 

 私のGo to Gun(真っ先に手にするガン)はグロックのG19MOSであり、還暦過ぎの爺いとしてはダットサイトの装着は必要不可欠となっている。フロントサイトにフォーカスを合わせるのに苦労する年代となった今、ダットサイトの装着が難しいリボルバーを選ぶ機会は、ポケットキャリーができるアロイフレームのS&W JフレームやルガーLCR以外は激減しているのが現状だ。

 

 

 とはいえ、長い間リボルバーでトレーニングし、リボルバーに親しんできた身としては、リボルバーは実用ファイヤーアームズとして、我が家の要所に.38スペシャル+Pをロードしたシックスシューター達を忍ばせておくというセンチメンタルな使い方をしている。

 

 最近、20年以上にもわたって“シューティングバディ(射撃仲間)”であるタクマから連絡がきた。S&Wモデル13 の3インチブルバレルFBIモデルと、1975年製のCOLT デテクティヴ スペシャルを手に入れたというのだ。かくいうタクマも、そのシューティングマッチデビューが1991年のスティールチャレンジで、それも使用銃はS&W Kフレームのカスタムだったというリボルバー使いなのだ。

 


 今回の彼のアイディアは、ハウスプロテクションガンはスプリングフィールドXDで満足しているが、繁華街にあるレストランのオーナーシェフとして、セルフディフェンス用キャリーガンとしてデテクティヴ、そしてレストランのプロテクション用として.357マグナムの撃てるS&Wモデル13を装備しようというものだった。そこで比較用に私のS&Wモデル65(13 のステンレスバージョン)とモデル640(Jフレームハンマーレス)も持ち出して、セルフプロテクションリボルバーとしてのポテンシャルを試してみようということになった。

 

 各リボルバーのプロファイルは以下の通りだ。
 

S&W Model 13-4 3 ” 1991年製


 S&Wモデル10の.357マグナムバージョンであるモデル13は、ニューヨークステートポリスのリクエストによって1974年にリリースされている。発表後すぐ3インチモデルがFBIに採用された。FBIは1986-87年にはセミオートに移行したので、この銃はFBI最後のリボルバーであった。シリアルナンバーからこの個体は1991年製であることがわかる。


 3インチブルバレルのモデルは、フィクストサイトながら十分な精度を持っており、コンシールドキャリーできるサイズながら、25ヤードヘッドショットも可能だ。

 .357マグナム6発を装填した実測重量は、1,054gであった。

 

1991年製S&Wモデル13。FBIが使った最後のリボルバーだ。3インチブルバレルは必要十分の精度を叩き出すとともに、25ヤード先のヘッドショットも狙う気にさせるサイトピクチャーを提供してくれる。30年物だが、実用上全く問題ない

 

オーナーのタクマは、.357マグナムを撃っても手が痛くならないように、バックストラップ部分にクッションが効いているこのパックマイヤーグリップを装着したが、やや太すぎるのと、フィンガーグルーヴとラバー素材によるねっとり感が握り心地を阻害してしまっている

 

頼もし気に鎮座する6発の.357マグナム。ブルーとケースハードンのフィニッシュが美しい

 

Colt Detective Special 2 ” 1975年製


 デテクティヴ スペシャルのバレルにエジェクションロッドをプロテクトするシュラウドが増設されたモデルは“3rdシリーズ”と呼ばれ、1973~86年に製造された。この個体はシリアルナンバーから1975年製ということなので、比較的初期のモデルだ。


 デテクティヴ スペシャルは、コルト社の業績悪化と生産コストの高騰で採算が合わなくなり、1986年に製造中止に追い込まれてしまう。1992年、コルト社の会社更生法申請の後、1993年には再生産が始まるが、1995年には再び製造中止となった。


 このDフレームと呼ばれるコルト ポリスポジティブモデルベースのフレームは、S&WでいうとKフレームとJフレームの中間に位置するサイズで、小型ではあっても6発の装弾数を確保する人気モデルであった。但し、そのダブルアクションプルは慣れが必要で、引き始めから徐々に重くなるプルに逆らって引き続けると、重さのピークの後すぐにハンマーが落ちる。ダブルアクションプルの重さも平均3.9kg(約8.6ポンド)と強力で、確実なトレーニングが必要となる。


 .38スペシャルを装填した実測重量は、781gであった。

 

エジェクターロッドをプロテクトするシュラウドがバレルに追加され、一気にモダンな外観となった1975年製デテクティヴ スペシャル3rdモデル。トップブリッジにセレーションが入るなど凝った作りになっている。このサイズで6連発と、好感の持てるデザインだ

 

スイングアウトするときはサムラッチを後方に引く、シリンダーの回転方向は時計回り、サイドプレートは左側、ライフリングは左回転…、どれもS&Wの逆になっているのが、コルトリボルバーだ。デテクティヴ スペシャル3rdシリーズのマズル部は丸く、ぬめっとしていてなかなか個性的。銃身長は2インチだ

 

こうしてみるとS&Wに比べ美しいブルーだが、かのパイソンには遠く及ばない。このラバーグリップは小指の収まりがすこぶる良い

 

S&W Model 65-2 3in 1981年製


 FBIに採用されていたモデル13の3inのステンレスバージョンがモデル65だ(4インチモデルも存在する)。65-1として1972年に登場した。実際のところ、ステンレスモデルが先行し、カーボンスティールバージョンであるモデル13は、1974年に発表されている。

 

 モデル66と同様、1977年にガスリングの位置をヨークからシリンダーに移行させ、これが65-2 “ダッシュトゥー”となった。1982年には、やはりモデル66と同様に “ピンド&リセスド”仕様が廃止、これが65-3 “ダッシュスリー”だ。モデル65は携帯性に優れたラウンドバットフレームで、フィクストリアサイト仕様だが、ブルバレルを装備している。それゆえ15ヤード精度テストでは4発のグルーピングが1.5インチ。25ヤードまでならヘッドショットを狙える精度を持っているということだ。この個体は1981年製で、シリンダーはリセスドだが、バレルピンはなしという過度期仕様になっている。

  

 以前、私がキャリーガンとして使っていた関係上、トリガーは自分で削ってスムーズとし、サムラッチはとあるカスタムガンスミスに作ってもらい、アクションも自
分で磨いてスムーズアップしてある。

 

 フルロード後の実測重量は、998gだった。モデル13-4との違いはグリップの差だと思われる。

 

モデル13のステンレスバージョンであるモデル65。ただしそのリリースはモデル13より2年早い
1972年のことだった。1981年製のこのモデルは、職人の誇りが感じられる精美な仕上がりを持っている。スリムな握り心地のS&W純正バナナグリップは、スピードローダーが使いやすいように切り欠きがある。サムピースもローダーの邪魔をしないよう下側がカットされたものだ。トリガーは、自分でシェイプを削り直し、磨いて滑りを良くしている

 

このフレームとヨーク部分のフィッティングは絶妙で、ほとんど隙間がない。3インチブルバレルはモデル65の一大特徴だ。誇らしげに“S.&W. 357 MAGNUM”の刻印が入っている。アリゾナ州に住んでいたころ、CCW(コンシールドキャリーウェポン)のパーミットを取得し、キャリーしていたことがあるので、表面は擦れだらけだ。トリガーの仕上げはもう少し追い込みたい

 

1981年製と、ピンド&リセスド(リセスドはカウンターボアードと同じ)が廃止される過度期の製品なので、この個体はリセスドシリンダーだ。しかしバレルピンは入っていない


 

1977年にガスリングの位置をヨークからシリンダーに移すモデルチェンジが施され、“65-2(65ダッシュ2 )”となった

 

S&W Model 640 1991年製


 モデル640は、センテニアルの1ラインとして1989年に発表された。1993年には同時にリリースされていた3インチバレルがカタログから消え、オリジナルの1-7/8インチモデルのみとなる。今回の個体はシリアルナンバーから1991年製と判る。

 

 ポケットホルスターに収めて、そのままポケットに入れるという使い方には適している。アロイフレームのモデルが数多く存在しているが、使用目的に合わせてきつめの.38スペシャルを装填して撃つと、そのリコイルは手首から肩にかけてガツンとくる鋭いものとなる。

 

 その点、この銃のようにオールステンレスは安心感がある。.357マグナム口径に対応しているモデルもあるが、盛大なマズルフラッシュとリコイルには、うんざりとしてしまうほどだ。

 

 実測重量は、646gだった。

 

S&Wモデル13と同じ1991年製のモデル640。この銃も長い間ポケットでキャリーしたので、擦り傷だらけだ。ヘレット社製のウッドグリップを装着しているが、全高を抑えるために底部を10mmほど削ってしまった。それでも握り心地は良好だ

 

こいつも完全分解して、内部をオイルストーンで磨き倒してある。ただし、トリガー/ハンマー部のコネクションには全く触れていない

 

コルトDフレーム(下)の方が心持ち大きい。6連発なのだから当然だ。その重量差は130gほどしかない

 

後編に続く

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年12月号に掲載されたものです。

 

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