実銃

2023/03/02

【実銃】実銃リボルバー事情 ~実射からその実態に迫る~

 

REVOLVER STRIKES BACK

 

 

S&W Model 13, Model 65, Colt Detective Special &

S&W Model 640

 

 

リボルバーはまだ終わってない

 

 近頃はシューティングレンジでリボルバーを見かけることが珍しくなってしまった。しかし、今年はあのコルト社からパイソンが復活したり、キンバー社がこれまで2インチバレルのみだったK6sリボルバーのバレルバエーションとハンマー外装モデルをリリースするなど、密かにリボルバームーブメントが起きているのだ。

 今回は、往年のリボルバーマスターに登場してもらい、セルフプロテクション用としてのリボルバーにフォーカスを当ててみた。題して“リボルバー ストライクスバック”(リボルバーの逆襲)だ!

 

前編はこちら

 


 

実射

 

 今回の実射は、新型コロナ禍とカリフォルニアの山火事のダブルパンチでシューティングレンジがクローズしてしまうなど、数々の障壁を乗り越えての撮影となった。


 今春から始まったアモの品不足は深刻で、どこのガンショップに行っても在庫は皆無、たとえ散見したとしても9mmや.38スペシャルといったポピュラーな口径のアモは、以前の3倍以上の価格が付いている。今回3人で400発ほどを消化できたのは、アモのリロードを再開すべく、手持ちのコンポーネントを整理していたら、20年以上前に自分でリロードした2千発ほどの.38スペシャルを発見したという理由によるものだ。158grのワックス付き鉛弾頭なので、写真中盛大な発射煙が出るのはお許し願いたい。

 ただし、.357マグナムと、精度テスト用の158grラウンドノーズはPMC社製ファクトリーを使用した。

 

タクマは、サンタモニカで“TAKUMA”というレストランを経営している。1991年に17歳で初めてスティールチャレンジにリボルバーで出場し、好成績を残して競技射撃に嵌まる。日本ではエアソフトガンにかなり入れ込んでいたため、リコイルの少ないスティールチャレンジロードの撃ち易さに違和感なくどっぷりと浸かってしまった

 

.38スペシャルのリロード鉛弾を撃つ。リコイルはマイルドだ

 

デテクティヴもその独特なトリガープルに慣れてしまうと、結構速く正確に撃つことができる。アクションそのものはスムーズなのだ

 

モデル65による125gr JHP .357マグナムの発射炎が見える

 

鉛弾頭に仕込んであるワックスが燃えて、こんなにガンスモークが出てしまう

 

 まず、精度テストは、15ヤードの距離から10インチプレートに5発を撃ち、4発のグループを計測した。ガンは柔らかいレスト(シューティングバッグ)の上に両手を載せた状態で行なった。それぞれのグルーピングは以下の通り。

 

 

 ここで目立ったのは、偶然かもしれないがデテクティヴのグルーピングだ。このモデルは45年も前の製造にもかかわらず、程度は良く、発射弾数も少ないようで、トリガーを引き切った状態でのシリンダーのガタは一切ないという極上コンディションだった。

 

 また、今回のレンジにはスティールチャレンジのセットアップが残っていたので、昔取った杵柄として、タクマにそれぞれ10~15ヤード離れた複数のターゲットに撃ち込んでもらい、そのタイムや撃ち易さを比べてみた。ここで驚かされたのは、彼がS&Wモデル13で、6発を撃った後のスピードローダーを使ったリロードを3.2秒(6発目を撃ってから、7発目を撃つまでの時間)でこなしてしまうことだった。これはサファリランド社製のコンプⅢというスプリング付きのリローダーに負う部分もあるが、さすがは往年のリボルバー使いということだろう。

 

タクマのアペンデックスキャリーによるモデル13のドロウ。これが意外と速いのだ

 

腹に親指を食い込ませながらグリップをガシッと握りしめる

 

ズバッと引っこ抜く。この時点ではまだトリガーフィンガーは真っ直ぐに伸びている

 

マズルがダウンレンジに向いたのでトリガーフィンガーをトリガーガードに入れる。視線はターゲットの動きを見ている

 

撃発! ここまで1.5秒と掛かっていない

 

 今回は上に着るジャケットを忘れてしまったので、コンシールドキャリー状態からの正式なタイムではないが、初弾もほぼ1.5秒以内で撃っている。腹が出ていてもこのタイムはさすがだ!(我々がマッチに行くと、“Chubby(太った)ブラザーズがた!”と言われてしまう…)。

 

 

今回の収穫が、このデテクティヴ スペシャルの撃ち心地だ。トリガープルを独特だが、慣れてしまうとだんだん好みになっていくのだ

 

「いや~、やっぱりモデル13は安心して撃てる感じがします。25ヤードまでなら、ちゃんと狙えるフィクストサイトですね。あと、デテクティヴ スペシャルが意外に良いので驚きました。少し上に着弾するのと、そのトリガープルは独特ですが、スムーズなので慣れてしまえばハンドルできそうな気がします。でもモデル13は重いので、キャリー用には向かない気がします。

 

 その点デテクティヴはバランスも良く、精度も高いので気に入りました。あとHiroさんのモデル65はかなりいじっているでしょう?あのトリガープルは反則だし、バナナグリップが握りやすいので驚きました。

 

 私のパックマイヤーは、.357マグナムを撃つことを前提に選んだのですが、考え直す必要があります。あとモデル640も木のグリップなのにリコイルがマイルドに感じて、トリガープルが滑らかですね。あれもカスタムチューンですか?」

 

イケダさんもモクモク煙を出す.38スペシャルをトライする。「心地良いリコイルですね」

 

そして.357マグナム。「昼間だってのに、この発射炎ですか。このラバーグリップだと鈍いリコイルに感じますね。3インチバレル、振り回しやすくていいです」

 

がっちり握ってもこの位リコイルがある。USPSA 競技でメジャーロードを撃ちなれている彼なので軽く押さえ込んでいるが、.357マグナムの威力は侮れないものがある

 

 さすがに野生派シューターは、感覚的な読みが深い様だ。私が実用に使うリボルバーは、ガンスミスのRonPower(ロン・パワー)さんに教えてもらった通り、バラしたパーツをオイルストーンで磨き、使用するアモに合わせてメインスプリングを交換してある。

 

 PMC社の硬めのプライマーだと不発が出る可能性があるが、フェデラルかウィンチェスター社製プライマーなら確実に発火するようチューンしてみたのだ。あと、願わくはTed Yost氏のカスタム前後サイトが追加できれば最高なのだが、カスタムガンスミスの御大にお願いできるわけもなく、予算が覚束ないのも理解している。

 

今回の被験者たち。ワックス付き鉛弾を沢山撃つと、ここまで汚れるというような見本だ。デテクティヴのキレイなブルーフィニッシュも、マット仕上げになってしまう

 

15ヤードの距離感はこんな感じだ。リボルバーにはレッドダットサイトが搭載しにくいという欠点がある。老眼の我々には切実な問題だ

 


 

S&W Model 13-4 3" 1991年製

 

今回の精度テストはバッグの上に両手をレストしただけで行なった。S&W Kフレームの2挺は、もう少し安定した状況であれば、さらなる精度を期待できそうだ

 

左下にまとまる傾向がある、S&Wモデル13。これも3発のグルーピングは悪くない

 


 

S&W Model 65-2 33in 1981年製

 

.38スペシャルの撃ち易さでは、このモデル 65に一日の長があった。沢山撃って慣らしが完全に済んでいるのと、グリップの握りやすさもよかった

 

モデル6 5 のグルーピングは、3発がほぼ同痕となっている。これももっと撃ち込めばさらなる好結果が期待できそうだ

 


 

Colt Detective Special 2 " 1975年製

 

デテクティヴ スペシャルの場合、トリガープルがだんだん重くなっていくので、こういった精密射撃にはあまり向いていないはずなのだが…

 

上に固まる傾向があるデテクティヴ スペシャル。それでも精度そのものは今回のトップの結果を叩き出してしまった

 


 

S&W Model 640 1991年製

 

オフデューティやセルフディフェンスガンとして大きな需要を持っているのが、S&W社のJフレームモデルだ

 

散っているように見えるが、3発はかなりまとまって着弾している

 


 さて、今回4挺のリボルバーを撃ち比べてみてわかったのは、

 

  1. リボルバーは、その精度、信頼性、秘匿性能からみてセルフディフェンスガンとして立派に通用するであろうということ
  2. 装弾数は最低でも6発欲しいこと。
  3.  きちんとしたチューンアップを施し、最新の高性能ディフェンシブアモを使用すること。
  4.  ただしハンマーを削り落とすなど、法的根拠に基づかないカスタマイズをしないこと。訴訟国家であるアメリカでは、正当防衛であっても使ったのがカスタムガンであったが故の有罪となった判例がレポートされており、動機が不純だったと解釈されて自分に不利になってしまうことがある。

 

 といったところだろう。あとは、リボルバーの難しさをよく理解して、練習に励む必要がある、ということも付け加えておこう。

 リボルバーはまだ終わってはいないのだ。今後もリボルバーの動向には注目していきたい

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年12月号に掲載されたものです。

 

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