2021/05/24
【海外】一発必中!! 法執行機関スナイパーの装備とは?【前編】
今回紹介するのは警察・法執行機関、つまりLEのスナイパーだ。彼らは軍のスナイパーと異なったシチュレーションでの狙撃を求められる。では、LEスナイパーはどのようにしてその困難な任務に当たっているのだろうか。今回は実際にミズーリ州のLEスナイパーチームに取材した模様をお届けしよう。
ミリタリースナイパーとLEスナイパーの違い
公的機関に属する「スナイパー」は、大きく2つに分けることができるだろう。1つは言うまでもなく軍のスナイパー(ミリタリースナイパー)であり、もう1つが警察・法執行機関のスナイパー(以下、LEスナイパー)である。この2つは似ているようで、かなりの部分で異なる。例えば、隠密裏に敵地に潜入するような状況ともなれば数100mから1,000mで狙撃することもあるミリタリースナイパーに対して、法執行機関スナイパーは遠くても200ヤード(約180m)程度、多くの場合100ヤード(約91m)以内と言われている。事件現場周辺の限られたエリアを除けば危険はないため、接近して狙撃することができるのだ。
ならば、LEスナイパーはミリタリースナイパーより“簡単”なのだろうか? 今回取材したスナイパーはこの疑問に「ミリタリーより難しい」と答えた。LEスナイパーが対処する事案では、民間人・民間施設が混在する状況が多い。わずかなミスが被害の拡大をもたらすという意味で、ミリタリーより困難で繊細な狙撃が求められるのだ。
環境に溶け込む装備
今回、我々が取材したのはアメリカ大陸のほぼ中央、ミズーリ州の北西に位置するジャクソン郡保安官事務所に属するスナイパーチームである。ジャクソン郡は、同州最大の都市カンザスシティ都市圏の大部分を含み、市街地から緑豊かな湖や自然公園まで多様な地勢を有している。
郡内に設けられた法執行機関共用の射撃訓練場にあらわれた2名のスナイパーはレンジャーグリーンの戦闘服に、ギリースーツというミリタリーを思わせるスタイルだったが、これも自然が多い同郡の環境にあわせての選択だという。
装備はつねに車のなかに
ブラックのパトロールカーのトランクに、ぎっしりと装備が詰まっている。突然の出動にも対応できるよう、常に装備は車に積んでおくのだそうだ。
主な装備としてはHOGサドルが取り付けられたトライポッド、ビーンバッグ(砂袋)、データブックなどがあり、これらをエバーレストックのスナイパー用バックパックで携行している。
使用するライフルは高精度なカスタムライフルで知られるGAプレシジョン製。GAプレシジョンのライフルは“アメリカン・スナイパー”クリス・カイルも後年、愛用したことで知られる。口径は.308、レミントンM700ショートアクションにGAプレシジョン製のバレルを組み合わせている。「100ヤードで1ダイムに命中させることができる」と誇らしげにその精度を説明してくれた(※1ダイムは10セント硬貨のこと。直径約1.8cm)。
今回はLEスナイパーの装備を中心に紹介した。その任務の性格ゆえ、ミリタリースナイパーと似て非なる装備となっていることが感じられたと思う。
後編では実際の訓練の模様を通して、LEスナイパーのテクニックを紹介していく。ぜひそちらもご覧いただきたい。
TEXT:Report : Hideo Sasagawa / Takayuki Ayabe
Special Thanks :
Jackson County Sheriff’s Office / Rod Schaeffer (Lee's summit Police Department)
この記事は月刊アームズマガジン2019年9月号 P.32~39より抜粋・再編集したものです。
月刊アームズマガジン2021年5月号
月刊アームズマガジン2021年5月号では、スナイパー特集を掲載している。スナイパーライフルはもちろん、ギリースーツやスコープなどの周辺アイテムから、近代スナイパーの最新テクニックなどまでハード・ソフト両面から徹底調査を行なった。こちらも要チェックだ。