2021/01/07
【実銃】ドイツ製の最新AR15クローン「HAENEL CR223」
今回ご紹介する実銃はドイツ製の最新AR15クローンである「HAENEL CR223」だ。ドイツ連邦軍の新小銃トライアルを勝ち抜いたハーネルMK556のセミオート版であり、ドイツ製品ならではの高品質と、フィーリングのよさを堪能できる。今回はその実力を実射して確かめてみた。
銃器メーカー「HAENEL」とは
ハーネルはドイツの老舗銃器メーカーであり、第二次大戦期にMP40やStG.44などを製造したことでも知られているが、現在はメルケルグループの軍・警察向け製品のブランド「HAENELDEFENCE」としてその名を受け継いでいる。ハンティングライフルメーカーとして長い歴史を持つメルケルは一時期H&Kなども傘下に持つ巨大メーカーだったが、2008年にアラブ資本の参加にともないH&Kが抜け、ハーネルが立ち上げられたとのこと。知り合いの同社マーケティング担当(フランス人)が、そう教えてくれた。
ハーネルはまずメルケルのハンティングライフルのノウハウを活かしてボルトアクション狙撃銃RS8(7.62mm×51)を開発し、その派生型であるRS9(.338ラプア)が2016年、ドイツ連邦軍によりG29として制式採用された。
続いて開発されたのがいわゆるAR15クローンで、まずはセミオート仕様のCR223、そしてフルオート仕様のMK556がリリースされたのだ。今回ご紹介するのが、そのCR223である。
HAENEL CR223 14.5in
- 口 径:5.56mm×45
- 全 長:798mm / 883mm(ストック伸長時)
- バレル長:368mm(14.5インチ)
- 重 量:3,500g
- 装弾数:10/20/30発
CR223は、HK416などと同様ショートストロークガスピストン方式を採用しており、それゆえガスピストンのクリーニングがしやすいようハンドガードをワンタッチで着脱できる機構を備えている。レール上の光学サイトなどのゼロインに悪影響を与えないよう極めて高い精度で作られ、再装着した際にバレルおよびハンドガードがピタリと元の位置に戻る。ストックやフリップアップサイトは流行りのFABやマグプルのものではなく、数あるAR15クローンの中にあって個性が出ている。
なお、フルオート仕様のMK556はドイツ連邦軍のG36の後継となる新小銃トライアルに参加し、2020年9月にHK433を下して次期制式小銃として採用。ハーネルに約12万挺の発注がなされたものの、そのすぐあとに特許侵害やダンピングの可能性が指摘され白紙撤回となり、再度選定が行なわれることになるという不運にみまわれた。
HAENEL CR223 16.65in
- 口 径:5.56mm×45
- 全 長: 853mm / 938mm(ストック伸長時)
- バレル長: 423mm(16.65インチ)
- 重 量:3,600g
- 装弾数:10/20/30発
バレル長は4種(16.65”、14.5”、12.5”、10”)あり、こちらは最長の16.65インチモデルで、ロングショットの位置づけなのかマガジンは10発タイプがチョイスされている。ストックは、チークピースなしのタイプに交換されている。
CR233はどのモデルもHK416のようにヘビーな印象はない。セーフティやマガジンキャッチなど、操作系はアンビ(両側から操作できる)で、トップレール上前後にはフリップアップサイトを備えている。細部に至るまで仕上げが丁寧で質感が高く、いかにもドイツ製らしい。
実射
今回、オーストリアの首都ウィーン近郊にある民間射撃トレーニング施設「エーデルワイス・アドベンチャー」でこのHAENEL CR223を導入したというので、オーナー兼トレーナーのアンドレアスに協力していただき、実射テストをさせてもらった。
早速試してみると、オプションのマッチトリガーを備えているので、軽快に射撃できる。撃ち慣れたR15のそれであり、それ以上でもそれ以下でもない。ストックのロックレバーが初めて見るタイプだったので戸惑ったが、もちろん慣れれば済むことである。それにチークピースがアジャスタブルタイプになっており、装着するサイトに応じて高さ調整できるのがいい。レシーバーのボタンやレバー周りには誤操作を防ぐための突起が設けられ、これに指を這わせていけば操作ミスを減らせるし、レシーバーの強度を高めている。
スタイルも悪くない。ショートストロークガスピストンを採用しているのでややフロントヘビーだが、射撃時のマズルジャンプ抑制に役立ち、コントローラブルだ。あのHK416と比べても甲乙つけがたく、悩ましい選択となりそうだ。
今回はHAENEL CR223をご紹介したが、「エーデルワイス・アドベンチャー」のアンドレアスはドイツ製の最新AR15クローンをもう一種類用意していた。それはなんとハンドガンでおなじみ、グロックのマガジンを使用するという。そちらのレポートもご覧いただければ幸いだ。
「SCHMEISSER AR15-9 S4F」のレポートはこちら
TEXT & Photos: 櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
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この記事は月刊アームズマガジン2021年2月号 P.130~137より抜粋・再編集したものです。