2020/05/22

民間用に生み出された最新モデル「H&K MR223」

 

H&K MR223は各国の軍隊が採用しプロフェッショナルから高い信頼を得ているHK416の市販バージョンとして生み出された。その作りには一切の手抜きがなく、H&Kの威信をかけたとも言える設計が垣間見える。今回はHK416A5をベースにした最新モデルMR223A3の概要をピックアップしてご紹介しよう。


 

 今回ご紹介するのはエーデルワイスのトレーナーたちにも評価の高いH&K MR223だ。この銃はHK416の民間向けバージョンで、セミオートオンリー仕様となっている。

 そもそもHK416は、アメリカ陸軍のM4改修要請をきっかけに開発された。バレルから導かれた発射ガスを直接ボルトキャリアーに吹き付ける作動方式(ガス直噴方式)はボルト周りにカーボンを付着させて作動不良を誘発しM4、すなわちAR15シリーズに共通する弱点となっていた。そこで、H&Kはショートストロークのガスピストンを、バレル上部の本来ガスチューブのある所に設けた。そして重く強靱なマガジンを採用することで信頼性を飛躍的に向上。その成功を受けて各国の特殊部隊が採用するに至った。

HK416譲りのシルエット。角度が立ち気味のグリップがH&Kらしい。AR15クローンでありながら個性的なスタイルだ

 

 話は前後するが、2008年には民間向けのMR223が発表されている。これは単なるセミオートモデルではなく、HK416をはじめ他社製のAR15系ロアレシーバーを組み込めないよう、厳重なフルオート化防止措置が採られている。H&Kはこのように民間向けモデルのフルオート化改造防止に非常に気を遣っていて、例えばG36の民間向けモデルSL8に至ってはG36のマガジンでさえも共有できない設計となっている。ドイツ軍納入メーカーであり、法執行機関向けの製品を提供するブランドイメージの維持のためであろう。余談となるが、筆者もこのMR223が出たときは購入を考えたが、当時のフランスではH&Kの民間向けアフターサービスが悪かったので断念した。筆者は実射するので、パーツ供給態勢などがしっかりしていないと困るのだ。

 

最新モデルA3では、操作系が全体的にアンビ化された。マグリリースボタンも左から操作可能。メーカーロゴなどのホワイトレターはシャープなものだが、若干目立ち気味

 

 そして2012年のアメリカ軍のトライアルに参加すべく、大幅な改良を経て開発されたのがHK416A5だ。従来のHK416ではOEMなどで密接な関係にあったスイス・B&Tのハンドガードなど他社製パーツも採用されていたが、A5ではすべてのパーツを自社製としている。見た目にもスマートな完成形的なスタイルとなり、これに合わせてMR223も進化。今回射撃したMR223A3は、このHK416A5に準じたモデルなのである。

 

フリップアップリアサイトの収納状態。競技用サイトのようなデザインで、メカニカルな作りだ

 

純正のフリップアップフロントサイト。シャープで精緻な切削加工がなされ、いかにもドイツ製らしい

 

HK416との主な相違点はセレクター。民間向けバージョンなので、当然セミオートのみ。個人的にセレクターの回転角は90度ではなく45度の方が好ましい

 

【アームズマガジンウェブ編集部レビュー】

 軍用モデルの民間バージョンは、隠れファンの多い分野だ。軍用品とは少し違った部分が興味深く、また趣があるのだ。こと世界各国で採用されているHK416の最新モデルとなれば尚更である。次回更新では、本稿にも登場しているエーデルワイスアドベンチャーでの実射シーンだ。

 

Text & Photos:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)

編集部レビュー:アームズマガジンウェブ編集部

 


この記事は月刊アームズマガジン2020年6月号 P.136-143よりウェブ用に再編集したものです。

 

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