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2025/06/28

サバゲーで勝ち残るための最強CQBテクニックとは?~『CQBテクニック 近接戦闘バイブル』発売記念 友清仁×毛野ブースカ CQBスペシャル対談(後編)~

 

 

 友清 仁氏著作、アームズマガジン・エグゼクティブエディターの毛野ブースカ監修による近接戦闘(Close Quarters Battle=CQB)における基礎知識や戦闘方法を解説したマニュアル本『CQBテクニック 近接戦闘バイブル』が2025年3月25日に発行された。この書籍ではCQB戦術の根幹となる基礎知識やテクニックを厳選。単独CQB、2名のCQB、3名以上のチームエントリーに分類して俯瞰からのイラストに加えて写真でテクニックを解説。さらにCQBに適した銃やアクセサリー類の特徴、ベルトキットやプレートキャリアなどのセットアップポイント、ハンドガンとライフルの撃ち方も解説している。

 CQBテクニックを知りたいサバゲーマーはもちろんタクティカルトレーニングやFPSゲームを好きな方にもお薦めしたい本書の発売を記念して、友清氏と毛野ブースカの対談が実現。前編は本書の内容や制作時の苦労話について語ってもらった。

 

■CQBテクニックの変遷について

 

 

毛野ブースカ(以下ブースカ):CQBテクニックの変遷についてお伺いしたいのですが、この書籍を編集するうえで1980~1990年代のCQBテクニックを調べたところ、当時のテクニックは今の視点から見ると面白い、CQBテクニックを知らない方がやってしまいがちなテクニックなんですよね。CQBテクニックは時代によって変わってきているなとあらためて思いました。CQBテクニックは1980年代くらいから変わってきたのではないでしょうか。

 

友清仁(以下友清):1980年代からヨーロッパでテロが頻発したのと重なってきます。テロリストが建物に人質とともに立てこもるような事件が多発してきて、従来のコンベンショナルウォーのように建物ごと吹っ飛ばすようなことができなくなり、そこでCQBが必要になってきた。それが1980年代ですよね。その時代に重なるようにヘッケラー&コックMP5のようなサブマシンガンが使われるようになってきました。

 

ブースカ:MP5は1960年代にドイツで開発されたサブマシンガンで、他のサブマシンガンに比べて命中精度が高いことが特徴でした。しかしCQBの必要なかった当時、軍や警察では命中精度の高いサブマシンガンは求められておらず、MP5が使われることはありませんでした。その流れが変わったのはSAS(イギリス陸軍特殊空挺部隊)が活躍した駐英イラン大使館占拠事件(1980年)でした。大使館内にテロリストが人質とともに立て籠もったため、建物内に進入して人質を救出しつつテロリストを排除する必要がありました。そこで活躍したのが命中精度の高いMP5でした。

 時を同じくしてアメリカでもLAPD SWAT(ロサンゼルス市警・スペシャル・ウェポン・アンド・タクティクス)が創設されて、だんだん建物内などの狭い範囲の戦いになっていった。それが1980年代から1990年代にかけて起きた流れですね。

 

友清:それがアメリカ同時多発テロ事件(2001年)をきっかけとしたイラク・アフガニスタン戦争が始まり、現地の集落を捜索しなくてはならないという事情が出てきました。そこから一気にCQBが完全に戦闘行為そのものになっていきました。1980年代から確立しつつあったCQBテクニックがよりブラッシュアップされて今日に至るっていう感じですよね。

 

ブースカ:イラク・アフガニスタン戦争が始まるまでは、CQBテクニックは特殊部隊やSWATといった特別な任務に就く人たちのテクニックだったのが、2000年代以降は一般兵士もマスターすべき当たり前のテクニックになりました。

 

駐英イラン大使館占拠事件で一躍注目され、その後のCQBウェポンとして世界各国の軍・法執行機関で採用された通称「キング・オブ・SMG」ヘッケラー&コックのMP5。(写真は東京マルイの次世代電動ガン)

 

今から30年前に発刊されたアームズマガジン1995年10月号の巻頭特集「SWAT」では当時のトレーニング風景が掲載されている。SWAT隊員がMP5のほかにリボルバーを使っているのが時代を感じさせる

 

 

■CQBテクニックに正解はあるのか?

 

ブースカ:CQBテクニックは実際に起きた事件や作戦における失敗をきっかけに、これはダメだ、じゃあこうしようということの繰り返しで進歩していったと思うんです。そういう意味でCQBテクニックの「正解」ってあるんですかね。でも、これって正解はありそうだけどないと思うんです。

 

友清:そうなんですよね。実際に読者の方と触れてみて思うのは、日本のTVゲーム文化がすごく浸透しているところがあって、裏技とかがCQBテクニックにもあるんじゃないかという感覚で聞かれる方が多いですね。

 ゲームでもサバゲーでも通用する普遍的なテクニックはないんですかって聞かれるのですが、それはないですって答えています。サッカーのようなセットプレーがあるわけじゃないんです。建物の形状とか構造とかを考慮して、ケースバイケース、オーダーメイドでCQB作戦が立案・遂行される。だからこそ基本が重要だというところに落ち着く。それを構築するための基本を知ってないとダメですよということになる。

 

ブースカ:基本を知らないでCQBテクニックの答えが欲しくなってしまう。

 

友清:日本人的にはどこかに答えがあるんだろうと思ってしまう。

 

ブースカ:受験勉強と同じですよね。正解があると思っている。

 

友清:正解があるんだから教えろと迫ってくる。正解があるとすれば、作戦を遂行して生き残っていればそれが正解だと思います。相手が倒れて自分が生き残っていれば、それは正解なんだと。たとえお手本通りにやっても味方が全滅してしまったら不正解。正解は最終的にあなたが生き残っているかどうかです。

 

ブースカ:セオリーや基本を押さえつつもそれを実現することは難しいですね。

 

友清:書籍に書いてありますが、たくさんテクニックを網羅してもそれは意味がない。むしろ足りないと思うのであれば、何が足りないのか自分で理解してください、って書いてあるのですが、なかなか理解してくれない。生き残った人が経験談で言って、それが残っている。死んでしまったら誰も言わない。死人に口なしですからね。生き残っている方が言っていることが正解。ただそれが系統だっていない。書籍にもなっていない口承伝承だから、一部のテクニックだけが日本に入ってきてしまっている。だから私たちがしっかり系統だてなくてはならないと思います。

 

 

■サバイバルゲームにおけるCQBテクニックとは?

 

友清:今も昔もCQBテクニックでは生き残ることが重要です。例えばあなたがサバゲーで生き残ったとしたら、あなたが取ったテクニックは正解のひとつなんですよと。

 

ブースカ:奥が深いですが、確かにその通りですよね。

 

友清:例えばあなたが1ヶ月に1回サバゲーに行くとします。つまり年間12回行きます。その時のヒットされた回数と最後まで生き残った回数の割合を計算してみてください。生き残った数が5割を超えていれば、あなたのテクニックは正解です。それ以下だったら不正解です。サバゲーにおけるCQBテクニックとはそういうことです。

 

ブースカ:それは真理と言えば真理ですよね。

 

友清:今度からサバゲーに行く時はノートを持参して、何勝何敗と書いて記録しておきましょう。まずはデータを取ることから始めてください。

 

ブースカ:それは今まで考えたことがなかったですね。今日は楽しかった!何人ヒットを取った!で終わってしまいますからね。

 

友清:単なる遊びから何かのテクニックに昇華させるには、勝率とかデータを取る必要はあります。シューティングも集弾の傾向とかのデータを取って成長していくわけですからね。ただサバゲーは実戦とは全然違います。実戦ではひとりで弾を数千発携行することなんてありえないですから。実銃とエアガンは全然違いますから。こちらがどんなにタクティカルテクニックをマスターしても、向こうがターミネーターのように撃ちまくってきたらお話になりませんよね。向こうもイーブンにしないと成り立たないし使えない。「スコアを取る」「イーブンコンディションにする」「データベースを作る」ことがサバゲーにおいてCQBテクニックを高めるために必要なことだと思います。

 

■CQBにおける銃について

 

 

ブースカ:銃については書籍では簡潔に語っているんですが、CQBではどのような銃が求められるのでしょうか?

 

友清:原書『ミリタリーナレッジレポーツVOL 30 CQB Techniques 近接戦闘テクニックPart1』や今回の書籍で掲載しているイラストや、書籍で追加した写真でモデルが携行している銃はハンドガンを選びました。理由は海外のタクティカルスクールでの解説はハンドガンが基本で、ハンドガンの射撃テクニックはライフルを撃つ際に応用できます。また、ハンドガンに比べて長くて重いライフルは狭い場所で取り回しにくく、長時間行動すると疲労などで扱いにくくなります。さらにライフルだとショルダースイッチは大変なので、CQBに適しているのはハンドガンになります。

 

ブースカ:狭い場所での取り回しや交戦距離を考えてもハンドガンで充分じゃないかと思います。

 

友清:一部の方は拳銃弾では抗弾プレートなど貫通しないじゃないかと言いますが、CQBで求められるのは狭い場所での取り回しであって、相手が抗弾プレートを着用している時は胸と頭を撃つ(ツーボディ・ワンヘッド)べきです。また、現在の建物の建材の多くは石膏ボードで貫通しやすく、外れた場合貫通して隣の部屋にいる人質とかに当たってしまう可能性があります。貫通力が少なく取り回しやすい拳銃弾、ハンドガンがいいと思います。

 

ブースカ:ライフル、ハンドガンともにCQBで求められているものは、ライフルはだいぶ結論が出始めていますが、ハンドガンはまだ議論されているのかなと。特に口径は9㎜×19弾が主流ですけど.45ACP弾がいいという方もいます。

 

友清:この書籍では弾数有利の9㎜×19弾としていますが、ストッピングパワーでは.45ACP弾が有効かと思います。

 

ブースカ:マイクロドット、ウェポンライトは当たり前のように装着されていますね。

 

友清:昔はハンドガンとハンドヘルドライトを持って戦っていましたが、それは効率がよくないからライトを銃に装着するようになった。ちょっと話はライフルになりますが、昔フォアグリップとライトが一体になったM900があってカッコよかったのですが、今はほとんどなくなってしまった。あれはなぜかというと、アフガニスタンで兵士はライトを照らしているつもりでも、照らされたほうは銃口を向けられているから撃たれると思って撃ち返される事件が多発して、現在はフォアグリップとライトは別々に装着されるようになり、さらにライトは小型化されてきました。ただハンドガンの場合は、効率が悪いから銃に装着したほうがいいという流れですね。

 ローライトテクニックの話になってしまうのですが、ライトは点けっぱなしにして索敵するのではなく、パッパッと一瞬だけ点灯して索敵します。だから大きなM900のようなライトは必要ないです。

 

ブースカ:ローライトテクニックも奥が深いですね。

 

友清:ドットサイトもあったほうがいいですが、ドットサイトがなくても撃てるようになるのが究極の理想です。ドットサイトを覗き込まずとも、ドットサイトの枠内にターゲットを捉えるようにする、ドットはそれの目印でしかない。

 

ブースカ:最近の傾向としては当たり前になりつつありますよね。ドットサイトの性能も良くなりましたからね。

 

友清:ついついドットにあわせようとしてしまうが、あの窓にターゲットを捉えられればいいんです。実戦ではいちいち合わせてられないですからね。ドットサイトは精密に狙うものではないですからね。

 

現代のコンバットハンドガンにおいてウェポンライトとマイクロドットサイトは必須アイテムとなっている

 

■CQBにおける装備について

 

ブースカ:装備の正解はあるのでしょうか?

 

友清:装備も正解はないんですよね。作戦の内容によってセットアップも変わってきます。

 

ブースカ:でも基本はありますよね。

 

友清:ここで話題にしたいのが、撃ち尽くして残弾がなくなった、使用済みマガジンの扱い方ですね。ダンプポーチに放り込むのが日本では一般的ですが、最近のテクニックとしてはマガジンポーチに再インストールなんですよね。ダンプポーチに使用済みマガジンを入れてしまうと身体の重量バランスが取れなくなるのと、複数の使用済みマガジンをダンプポーチに入れてしまうと擦れて音がしてうるさいです。本来ダンプポーチは押収品などを収納する雑のう、その程度のものでしかないです。

 

ブースカ:自分は使用済みマガジンはマガジンポーチに戻さない派なんですよね。

 

友清:身体の重量バランスが大切で、さらに擦れる音で敵にばれてしまうこともありCQBではマガジンポーチへの再インストールが今の主流です。はしごを乗り越えたりする時の重量バランスは重要です。

 

サバゲー装備になくてはならないダンプポーチ。本来の目的は押収品などを収納するためのもの。友清氏によれば使用済みマガジンはダンプポーチに収納するのではなく、マガジンポーチへの再インストールが主流とのこと

 

ブースカ:装備のことだとブランドにこだわる方がいらっしゃいますよね。

 

友清:日本ではブランド好きが多いじゃないですか。このブランドさえ揃えればパーフェクト!みたいな感じがありますよね。ブランド品は耐久性が担保されているかもしれませんが、それでいいとは言えないんですけどね。装備はブランド推しではなく、あくまでも使いやすいものを使うのがいいかと思います。アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員に個人的に伺ってみると、自分に使いやすい装備を、休みの日に自らミシンで縫って作っているとのことです。その装備を参考にして商品化したのがブランド品なんです。そこに至るまでの精神やプロセスがわかっていないと使いこなせない。ブランド品は素晴らしいですが、そのコンセプトを理解しておくといいと思います。

 

ブースカ:マガジンポーチなどがなぜそこの位置にあるのか、そこに意味があることを理解する必要がありますね。

 

友清:装備のコンセプトを知って必要充分なものを揃えるのが基本です。そのうえで耐久性などを重視してブランド品に移行するのはいいのかなと。どうしてもこだわるのであれば。

 

ブースカ:装備や銃を揃えれば上手になるわけではないですよね。

 

友清:練習をたくさんするのか、装備や銃をたくさん揃えるのか、どちらにお金をかけるべきかを考えてみてほしいです。私は練習にお金をかけるべきだと思います。練習をたくさんやるからこそ装備の使いやすさがわかります。

 

装備をセットアップする際、ポーチ類がなぜ所定のポジションに装着されるのかを理解する必要がある。また装備類はブランド重視ではなく、あくまでも使いやすいものを選ぶ

 

ブースカ:スリングはどうでしょうか? ワンポイントスリングとツーポイントスリングのどちらがお薦めでしょうか。

 

友清:シューティングならワンポイントスリングが使いやすいですが、いろいろな動作の取り回しを考えるとツーポイントスリングになるんですよね。

 

ブースカ:銃を背負ったりする場合、ツーポイントスリングのほうが背負いやすいですね。

 

CQBでははしごを登る、犯人を確保するなど銃を背負う必要があることからツーポイントスリングが主流となっている

 

 

■CQBにおけるシューティングテクニックについて

 

ブースカ:CQBにおいて基本的なシューティングテクニックは必要ですかね?

 

友清:基本は必要ですが、なにが基本なの?というところですよね。スタンスやグリップから始まってターゲットへの着弾の傾向から手首をどう使っているかっていう話になるし、手の大きさと銃の大きさがあっていませんとかいろいろあります。CQBの前段階の話過ぎて、それはまた別の機会にやりましょう(笑)

 

ブースカ:CQBではハンドガンのテクニックが特に重要だと思います。ハンドガンが上手に撃てる技量があればライフルも上手に撃てると思います。

 

友清:ハンドガンでできることはライフルでもできる。どちらを重視というよりもどちらも同じなんですよね。射撃という点では同じテクニックが求められます。

 

ブースカ:CQBでもシューティングテクニックは重要ですね。今日はありがとうございました。

 

構成:毛野ブースカ

 

 

CQBテクニック 近接戦闘バイブル

  • 出版年月日    2025/03/25
  • ISBN    9784798637648
  • 判型・ページ数    B5変・192ページ
  • 定価    3,080円(税込)

 

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