ミリタリー

2025/05/29

普通科教導連隊レンジャー2024(後編)Part.1

 

 いよいよ教育の集大成となる行動訓練へと移行したレンジャー学生。前半で学んだ様々な技術を駆使し、あらゆるミッションを完遂するための想定訓練に立ち向かう姿を追う。

 

 

 約1か月に渡る基礎教育を終えたレンジャー学生。これから与えられる任務は、実戦を想定した訓練で、様々なシナリオが用意されている。


 富士教導団が行うレンジャー教育は、大きくわけて富士山周辺での活動を中心とした「富士作戦」と、伊豆半島を舞台に行われる「伊豆作戦」がある。

 両作戦ともに、地形的な違いがあるため、学生は地図を読み込み様々な地形での各種作戦に対応できるように準備しなければならない。


 また、季節的な問題として、昼間と夜間の気温差にも配慮した装備を持っていく必要があるだろう。寒暖差で体調不良になっては、与えられた任務を遂行することができなくなってしまうからだ。
 とはいえ、持っていける荷物にも制限がある。遊撃活動を行うレンジャー隊員は、拠点までは車両などで移動できるものの、それ以降の行動に必要な物資は全て自分たちで背負っていかなければならないからだ。


 武器、弾薬、無線機、爆薬、食料、飲料水、着替え、そして夜間の活動で必須となるナイトビジョンなど、一人あたりの総重量は40kgを超える。
 これだけの荷物を背負いながら山地を走破し、あるいは水路を抜ける行動訓練は、まさにレンジャー学生の集大成といえよう。

 

行動訓練開始式に臨むレンジャー学生(向かって右)。横に並ぶ指導部にも緊張感が溢れる

 

開始式後に行われた想定訓練の全般説明。これからは実戦を想定した様々な訓練が行われるが、厳しい訓練と安全を両立するため、こうしたミーティングが行われるのだ

 

実戦では、ちょっとしたミスが作戦に大きく影響するだろう。準備段階での不備や指摘は作戦でのミスを誘発する可能性があるため、指導部によって徹底的にチェックされる

 

全ての装備を開梱し並べる学生。レンジャーは部隊統制が大きく影響するため、荷物の並べ方にも統制が入る

 

行動中に部隊が停止する時は、必ず周囲を警戒する隊員を配置する。そうすることで、戦闘隊長などが次の作戦を練ることに集中することができるのだ

 

開けた道路などを横断する時には、しっかりと警戒員を配置するようにする。こうした場所は敵の襲撃を受けやすいのだ

 

機関銃を装備するレンジャー学生。小銃より重いが、分隊の行動を強力にバックアップするための機関銃は必須の装備となる

 

110mm個人携帯対戦車弾、通称LAM(ラム)は、重く取り扱いに苦労するが、唯一の対機甲戦闘火力のため、疎かにすることはできない

 

指導部から助言をもらいつつ、無線で追従してくる後続チームに状況を報告するレンジャー学生。戦闘を有利に進めるには、情報の共有が重要な項目となる

 

今の状況を指導部から質問されるレンジャー学生。レンジャー隊員は単に体力があるだけでは務まらない。疲れていても頭をフル回転させ、思考を止めないようにするのだ

 

夜が明ける前に非常呼集で叩き起こされるレンジャー学生。急いで身支度を整え、作戦の準備に取り掛かる

 

全ての装備を装着した状態で体重測定する学生。これは出発時と帰隊時に計測され、すべて記録している

 

準備が整い整列した学生。いよいよ集大成となる富士作戦と伊豆作戦に向かう

 

それぞれが指定された車両へと乗り込む。移動間は休む時間ではなく、作戦の準備時間であるため、車内では様々な話し合いが行われているそうだ

 

伊豆半島のとある場所にある港で、水路潜入の準備を進めるレンジャー学生。漆黒の闇の中での訓練となるため、安全上、最低限のライトを使って足元を照らす

 

ボートを浮かべ移動する準備をする学生。当然のことながら、何かを落としてしまった場合、回収は非常に困難になるため、全ての装備に脱落防止処置が施されている

 

上陸を果たし、ナイトビジョンを装着した学生。これから険しい山道を登っていくことになる

 

水路潜入を行ったあと、市街地を抜けて山地に潜入するため、銃はラバーガンになっている

 

水路潜入が終わると、次は徒歩による行進が始まる。車両が使える場所ではないため、自らの足を使うしかないのだ

 

険しい山を登っていくレンジャー学生。重い荷物を背負っていると思わせないような軽快な足取りに驚かされた

 

山地機動でヘトヘトになった学生。まだまだ道半ばだが、疲労だけは否応にも蓄積されていく

 

背負っていたハイドレーションパックの残量を報告する学生。昔のレンジャーと違い、今のレンジャーはしっかりと給水させることで、教育の質を高めている

 

 

Text & Photos:武若雅哉

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年7月号に掲載されたものです。

 

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