陸自の精鋭・第1空挺団の一般公開行事に多国籍のパラトルーパーがゲスト参加
2025(令和7)年1月12日、千葉県船橋市にある陸上自衛隊習志野演習場において、毎年恒例の降下訓練始めが行なわれた。精鋭・第1空挺団の勇姿が一般公開される機会とあって多くの観客が訪れたこの行事では、インド太平洋地域における安全保障環境の変化に伴い、11カ国のゲスト部隊が参加。同盟・同志国の連携をアピールした。その模様を、ミリタリーフォトグラファー・武若雅哉がレポートする。
航空自衛隊のC-130H輸送機から降下する空挺隊員。13式空挺傘を使用することで、両扉からの同時降下が可能になった
味方が落下傘降下してくるのを地上で守る空挺隊員。降下中は無防備なため、地上からの掩護が必須となる
落下傘降下が可能な空挺部隊(特殊部隊を除く)としては日本で唯一の存在として知られる、陸上自衛隊第1空挺団。同部隊を中心に毎年1月に行なわれる「降下訓練始め」は、その年の降下安全を祈願する目的で1969(昭和44)年に「開傘祈願祭」として始められた歴史がある。それから5年後となる1974(昭和49)年から「降下訓練始め」として、一般公開が始まっている。
この1月12日に行なわれた「令和7年 降下訓練始め(NYJIP25)」は、指揮官降下から始まり、訓練展示、空挺徽章交換と続き、防衛大臣訓示で締めくくられた。また、後述するように同盟・同志国を中心に過去最大規模のゲスト部隊が招かれていたのも特徴的であった。
今回も多くの一般来場者が訪れていたが、幸いにも前日までの雨予報ははずれ、肌寒い中でもすべての降下を完遂し、今年1年間の安全を祈願した。
リペリング降下して戦闘加入する空挺隊員。プレートキャリアタイプの18式防弾ベストなどで構成される、最新の18式戦闘装着セットを着用している
偵察のためドローン(UAV)を飛ばす。機種はパロットのアナフィ。操縦が簡単で持ち運びに便利な小型サイズだが、風や雲の影を響を受けやすい。オペレーターの空挺隊員はOPS-COREのFASTヘルメットを着用
匍匐して進む空挺隊員。丘の稜線は敵に発見されやすいため、できるだけ低い姿勢で進む必要があるのだ
第1空挺団を中心に自衛隊各部隊が緊密に連携
地上部隊掩護のためUH-1Jから12.7mm重機関銃M2で射撃する。実際に射撃する際にも、精密な射撃は必要なく、敵がいる地域を制圧できれば充分だ。AH-1Sとのコンビが見られる機会も、残り僅かだろう
ファストロープで次々と降下する空挺隊員。自らの握力だけが頼りなため、重量物を背負わず身軽な装備で降りる
84mm無反動砲M2から空砲を発射。小銃小隊などに配備されている対戦車火器で、敵の戦車や装甲車などを撃破することができる
UH-1Jに搭乗し、素早く展開する狙撃チーム。M24SWSには迷彩ペイント、89式小銃には迷彩テープで偽装が施されている。ギリースーツは官品の秋冬用だ
引きずり式の簡易担架で負傷者を後送する様子。従来の担架であれば4名が担架を操作し、1名が荷物を持つといった形になるが、これなら3名で搬送(うち1名は荷物を運搬)できる。地面が芝であれば効果的な搬送方法であるといえる。比較的安全な場所に移動して応急処置が行なわれ、出血がある場合には止血し、可能な限り衛生環境を良くして感染症を防ぐ
稜線を一気に駆け上り、敵と対峙する空挺隊員。重い荷物を背負うが、普段から鍛え上げた体力を使って軽々と進んでいく
CH-47JAによって空輸されてきた軽迫撃砲分隊。素早く展開し、前線の敵側に多くの砲弾を送り込む
評価支援隊の90式戦車が味方部隊として登場。同部隊の車輌は普段は敵役を務めるため、一般的な2色迷彩ではなく3色迷彩(NATO迷彩に近い)として識別しやすくしているのが特徴的だ。下の写真の16式機動戦闘車と比較するとわかりやすい
空砲を射撃する16式機動戦闘車。限定的な対機甲戦力しかもたない空挺団に、大きな火力を与える
過去最大規模となる11カ国のゲスト部隊が参加
「 令和7年 降下訓練始め」には陸上自衛隊第1空挺団を筆頭に、第1ヘリコプター団、航空自衛隊第1輸送航空隊など自衛隊部隊が参加。そしてアメリカ軍、イギリス軍、オーストラリア軍、カナダ軍、フランス軍、ドイツ軍、イタリア軍、ポーランド軍、フィリピン軍、シンガポール軍、タイ軍と、同盟・同志国を中心に過去最大規模のゲスト部隊を招いての降下訓練始めとなった。
指揮官降下に参加したイギリス陸軍の大佐
指揮官降下に参加したイタリア陸軍の准将(写真右)。パッチはフォルゴーレ空挺旅団のもの
指揮官降下に参加したシンガポール陸軍の上級中佐
指揮官降下が終わり、観覧席まで走って移動するフランス陸軍中佐。パッチは太平洋ニューカレドニア海兵歩兵連隊のもの
指揮官降下に参加したポーランド陸軍の准将(写真左)と大尉(写真右)
指揮官降下に参加したドイツ連邦陸軍の准将(写真左)と本部曹長(写真右)
指揮官降下に参加したフィリピン陸軍の准将
旗による丘の占領を待つ米陸軍および米海兵隊の兵士たち。手に持つのは陸自が使用する閉所戦闘訓練用器材(エアガン)だ
遅れて登場した日本国旗。タイミングを合わせていたらしいが、どうせなら各国の先頭を突っ走ってほしかった
防衛力の強化が必要だと訴える中谷防衛大臣。隊員が減っている中で、最も危機感を感じているのは、国会議員であり元自衛官の中谷氏であろう
各国の国旗を掲げながら台の上へと駆け上っていく各国の兵士たち。これまでにない演出で、同盟・同志国の関係の深さを表していた
この記事は月刊アームズマガジン2025年4月号に掲載されたものです。
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。