エアガン

2025/10/05

オールドモデルガンアーカイブ:.22口径金属モデルガンの世界【Part.1】

 

 1970年代後半から1980年くらいにかけて、日本はマグナムブームに沸いていた。よく銃のことを知らない人でも、マグナムという言葉くらいは知っていた。スゴイとかデカいというような意味合いで、マグナム○○などというようなネーミングも流行った。そんな時、対極となる最小口径ともいうべき.22口径銃も、ガンファンの中では実は同時進行で(プチ)ブームが起きていたのだった。

 

※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※拳銃型の金属製モデルガンは、1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルであっても、経年変化等によって金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。

 

国際産業
ルガー・マークⅠ(1975年)

 

国際産業製ルガー・マークI

 

 初めての.22口径発火式モデルガン 

 

 国際産業は、1973年から自社名を表に出してモデルガンの製造と販売を始めた。売れるものは何でも作ってやろうと、新ジャンルのプラスチックモデルも含め、人気の出そうなものは何でも手がけた。当然、ブームとなっていた.44マグナムも手がけ、いち早く金属製のS&W M29も発売した。
 その一方で、あまりの.44マグナムブームの反動で、マニアックなファンの注目が、対極にある.22口径にも向いていることを鋭く見抜いていたらしい。


 1975年、国際産業は「.22口径は売れない」「.22口径には手を出すな」という業界の迷信に惑わされることなく、ルガー・マークIを発売する。それも真ちゅう製の高級カスタム仕様で、それまでの半値くらいという挑戦的価格設定。多くの人が憧れる真ちゅうカスタムを、高校生くらいでも、アルバイトをするなどちょっと頑張れば買えるというところまで引き下げてくれた。しかも高級ガンケース付き。マニアックなファンは大喜びした。
 実際の製造を担当したのは長興製作所というカスタムメーカー。100挺の限定発売の予定が、予想以上の反響で、結局300挺ほどが作られたという。
 .44マグナムブームの陰で、.22口径のプチブームを起こしたモデルガン、それが国際産業のルガーマークIだった。

 

あちこちに加工跡が残る仕上げで、高級カスタムとはちょっと違った。しかも刻印がまったくない

 

トリガーには細かなセレーションが刻まれている。ただ惜しいことに仕上げが粗いためあまり目立たない

 

 DATA 

材質:真ちゅう 、ステンレス、スチール、紫檀(グリップ)
発火方式:前撃針
使用火薬:平玉紙火薬
撃発機構:シングルアクションハンマー
作動方式:手動
カートリッジ:ソリッドタイプ
全長:21cm
重量:900g
口径:.22LR
装弾数:9発+1(薬室内)
発売年:1975年
発売当時価格:38,500円(カートリッジ9発、デラックス化粧箱付き)

 

※販売目的の所持禁止。違反すると一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

 

六研
コルト・ウッズマン・マッチターゲット(ブローバック)(1976年)

 

六研製コルト・ウッズマン・マッチターゲット(ブローバック)4.5インチ

 

 元祖高級カスタム・モデルガンメーカーが作った.22口径 

 

 1969年、中田商店で展示用モデルの製作やモデルガンの設計を手がけていた六人部登(むとべ のぼる)さんは、中田商店がモデルガンの製造から手を引いたのを機に独立し、各社からモデルガンの設計などを請け負いながら、一般向けには切削加工による高級カスタムモデルガンの製造・販売を手がける会社、六研(ろっけん)を立ち上げた。塗装が不要な真ちゅうでハンドガンを作ることを確立させたのは六研だ。
 そんな元祖真ちゅうカスタムの六研が、国際産業のルガー・マークIカスタムの成功を見て、ウチでもやろうと思ったとしてもおかしくないし、もっとよいものが作れると思ったのかもしれない。より有名な.22口径オートマチック、コルト・ウッズマン・マッチターゲットの製作に乗り出した。
 実際の製作を手がけたのは野口製作所というところで、NC工作機械を駆使しタイトな公差と高い精度で仕上げられていた。スライドとフレームのかみ合わせには髪の毛1本も入る隙間はないほど。エッジも鋭く怪我をしそうなくらいシャープ。まさに高級カスタムの名に恥じないレベチな完成度だった。


 ただ、日本で人気のあったウッズマンは、大人気漫画『ワイルド7』(望月三起也)で、リーダーの飛葉が使っていたスポーツモデル。六研がモデルガン化したマッチターゲットではなかったが、確かに加工技術の高さがシロート目にもわかりやすいのはマッチターゲットの方ではあった。この違いがモデルの人気にどの程度影響したのかは不明。のちにMGCがプラスチックのウッズマンで両タイプを発売した。どちらの人気が高かったか設計を手がけた小林太三(こばやし たぞう)さんに伺ったところ、マッチターゲットの人気はイマイチだったそう。スポーツモデルの人気にはカスタムのヘビーバレルも敵わなかったという。
 実銃のウッズマンが製造中止となったのは1977年。六研のウッズンが第2次モデルガン法規制によって作ることができなくなったのもまた1977年。不思議な巡り合わせだった。

 

カートリッジはシンプルなオープンタイプ。エキストラクターが掛かりやすいようにリム部に溝を付けセミリムド型にしてある

 

フロントサイトのベース部分はバレルにロウ付けされ、フロントサイトブレードも、ピンはダミーなのかロウ付けされている

 

機械加工されたスライド上面の美しいセレーション。リアサイトは上下のみ可動でクリックストップはなし。左右は一体で調整できない

 

残弾がなくなるとスライドは確実にオープンストップした。その後方(写真では右)にあるセーフティはハンマーがコックされている時だけオンにできる

 

 DATA 

主材質:真ちゅう、クルミ(グリップ)
撃発機構:内蔵式ハンマー、シングルアクション
発火機構:前撃針/ファイアリングプレート
カートリッジ:オープンタイプ
作動方式:バレル・フロントファイアリング・ブローバック
使用火薬:平玉紙火薬3粒
全長:228mm(4.5インチモデル)、267mm(6インチモデル)
口径:5.6mm(.22口径)
重量:1.3kg(4.5インチモデル)、1.5kg(6インチモデル)
装弾数:10発+1(薬室内)
発売年:1976年
発売当時価格:78,000円(4.5インチモデル)、80,000円(6インチモデル)
各カートリッジ10発、木製グリップ付き

 

※販売目的の所持禁止。違反すると一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

TEXT&PHOTO:くろがね ゆう

※コルト・ウッズマン・マッチターゲットの写真はすべてPhoto by Keisuke.K

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年11月号に掲載されたものです。

 

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