2025/09/06
オールドモデルガンアーカイブ:世界をぶっ飛ばした.44マグナムの金属モデルガン【後編】
1971年、クリント・イーストウッドが映画『ダーティハリー』で.44マグナムのS&W M29をぶっ放してから、アメリカはもちろんのこと世界中に.44マグナムとM29ファンが爆誕し、大ブームとなった。もちろん日本も例外ではなく、そこに1975年から.44マグナムのスーパーブラックホークを使う超過激暴力刑事、加納錠治の活躍を描いた劇画『ドーベルマン刑事』(原作/武論尊、漫画/平松伸二)の週刊少年ジャンプ(集英社)での連載が始まり、さらに.44マグナム人気に拍車を掛けた。
※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※拳銃型の金属製モデルガンは、1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルであっても、経年変化等によって金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。
ウエスタンアームズ
ルガー・ニューモデル・スーパーブラックホーク44マグナム(1978)


●ブームの頂点を極めたモデル
ウエスタンアームズ(WA)は、真ちゅう製の高級カスタムとして、1975年に.357マグナムのブラックホークのモデルガンを発売した。その完成度の高さは、他社の量産モデルガンのひな形となったほど。そして.44マグナムのスーパーブラックホークも、真ちゅう製のカスタムとして1976年に発売している。しかし1977年に第2次モデルガン法規制が施行され、WAは量産モデルガンメーカーへと転身する。
1978年、最初の製品は、他社が手がけて上手くいかなかったプラスチック製のシングルアクションアーミー(SAA)のリメイクだった。これを完全な製品として甦らせ、大ヒット商品に変えた。次に量産モデルガンメーカー最大手のMGCと技術提携を結ぶと、MGCのプラスチック製ガバメントブローバック(GM2)をベースにしたコンバットカスタムを発売する。するとこれが多くのガンファンの心を捉えた。大ヒットとなり、カスタムブームとコンバットシューティング・ブームが起きた。
続く第3弾が金属製モデルガンのニューモデル・スーパーブラックホーク44マグナムだった。当時は資料も少なく、実銃の取材もままならなかったが、トリガーを引かない限りファイアリングピンが飛び出さない安全機構のトランスファー・バーや、ローディングゲートをオープンするだけでシリンダーのロックが解除される機構が正確に再現されていた。しかもカスタムモデル並みのタイトな製造公差で作り上げられ、仕上げもピカピカで美しく、それまでで最高の金めっきモデルだった。そして人気の10インチロングバレルもラインアップに加えると、他社とほとんど変わらない価格で発売した。
当然のようにWAのニューモデル・スーパーブラックホークは大ヒット。間違いなくブームの頂点を極めた1挺だった。




DATA
主材質:亜鉛合金ダイカスト、ABS樹脂(グリップ)
撃発機構:シングルアクションハンマー
発火機構:カートリッジ内発火
カートリッジ:インナーロッド方式クローズドタイプ
使用火薬:平玉紙火薬 1〜3粒
口径:.44マグナム
全長:336.5mm(7.5インチバレル)、415mm(10インチバレル)
重量:1,358g(7.5インチバレル)、1,440g(10インチバレル)
装弾数:6発
発売年:1978年
発売当時価格:
7.5インチバレル 8,500円(カートリッジ6発付き)
10インチモデル 9,500円(カートリッジ6発付き)
どちらもDXモデルは(カートリッジ6発、木製グリップ、ガンケース付き)
オプション:木製グリップ 2,500円、ガンケース 4,500円
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
※このページの写真はすべてPhoto by Hisayoshi Tamai
コクサイ
S.&W. ニューM29 .44マグナム(1985)


● M29 金属モデルガンの決定版
1985年は激変の年だった。モデルガン界の旗手であったMGCから伝説となったガスガンのベレッタM93Rが発売され、MGCと協力関係にあったウエスタンアームズからもガスガンのAR-7が発売されるなど、大転換が起こった。トイガンの主役がモデルガンからエアソフトガンへ急激に移って行ったのだ。
ブランド名をコクサイに改めた国際産業も、キャップ火薬を使った発火とエアコッキング式のBB弾の発射が同時に楽しめると大きな話題になったスーパーウェポンシリーズを発売するなど、主力商品をエアソフトガンへとシフトしていた。しかしモデルガンもしっかりと作り続けていて、密かに(?)人気モデルの細部の改良を重ねていたり、新規モデルの開発も続けていたりした。その1つが、評価の高かった大ヒットプラスチック製リボルバーを、金属モデルでリメイクするというもの。金属モデルで置き換えるのではなく、併売していくという形だった。パーツに互換性もあったので、両方持っていれば着せ替えを楽しむこともできた。
最初に発売されたのが.357マグナムのM19で、続いて1985年に.44マグナムのM29が発売された。ほぼ完璧にS&Wのダブルアクション機構が再現されていた。ただ、刻印や、目立つ位置のSMGマークや、セレーションのないトリガーなど、細部で気になる部分がないわけではなかった。それでも、金属製スーパーブラックホークの10インチで採用されたマット系の特殊めっき(下地のニッケルめっきを施してからヘアーラインを入れ、それから真ちゅうめっきするという新めっき)を採用するなど、新しい仕上げも取り入れた積極的な商品展開。シックで高級品のようなテイストもあり、当時最高のM29だった。1976年に作られたCMC製のM29と比較すると隔世の感がある。9年でモデルガンはここまで進化した。しかしエアソフトガンの時代となり、大きな話題になることはなかった。




DATA
主材質:亜鉛合金
撃発機構:シングル/ダブルアクションハンマー
発火機構:シリンダー内前撃針
カートリッジ:スプリング内蔵インナーロッドタイプ
使用火薬:5mmキャップ
口径:.44マグナム
全長:244mm(4インチ)、295mm(6インチ)、355mm(8-3/8インチ)
重量:1,100g(4インチ)、1,200g(6インチ)、1,400g(8-3/8インチ)
装弾数:6発
発売年:1985年
発売当時価格:
4インチ 9,600円
6インチ 9,800円
8-3/8インチ 9,900円
(各カートリッジ6発付き)
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
TEXT&PHOTO:くろがね ゆう
この記事は月刊アームズマガジン2025年10月号に掲載されたものです。
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