2025/08/05
オールドモデルガンアーカイブ:革命を起こしたモデルガン 後編
今モデルガンは、撃って遊べるものから飾って楽しむものまで、高いレベルのいろんなタイプがある。しかしここにいたるまでには、様々なチャレンジや失敗、発明や工夫があった。そんな中から、あらためて歴史を変えたエポックメイキングなモデルガンを振り返ってみよう。
コクサイ
S&W M19&M66コンバットマグナム(1982)

リボルバー革命
リボルバーのモデルガンは、一見すると1960年代末頃に登場したものと、現在のものとでメカニズムに大差はないように思えるかもしれない。しかし実際のところ、大きく進化しているのだ。そのきっかけとなったのがコクサイのリボルバーだった。
国際産業はコクサイのブランドを使い出した1979年から岡田節雄さんが設計を手がけるようになり、モデルガンのレベルが格段にアップした。特にリボルバーには力が入れられていたようで、プラスチックモデルガンを中心に、実銃どおりのメカニズム再現と精度アップが進められた。
1982年に発売されたプラスチックモデルガンのS&W M19/ M66コンバットマグナムもその1つで、画期的な新機軸が盛り込まれていた。
まず1981年に発売されたブローニングM1910から採用されたメタルブルーフィニッシュ(メタルフィニッシュ)を改良し、より黒い金属のような質感が実現された。
さらに、それまで真ちゅう材を削ってカートリッジの形状にしていたものを、1980年に発売された金属とプラスチックのパイソンから採用された、薄い板状の真ちゅう材を絞ってケースの形に加工し、そこに銅めっきした弾丸形状の頭部を付けた実弾そっくりの新型カートリッジに変更した。
これに多くのファンが飛びつき、大ヒットとなった。弱点は発火を繰り返すとメタルフィニッシュが飛んでしまうこと。だから何挺も買う人や、飾り用と撃つ用と分けて買う人が多かったという。
他社もすぐに同様の仕上げを採用し、メタルフィニッシュブームが起きた。もはやメタルフィニッシュでないと売れないくらい。ただ、カートリッジだけは加工が特殊で、国内では1社しかできなかったことから他社が採用することはできなかった。
コクサイのS&W M19 / M66の大ヒットはまさにリボルバー革命だった。

DATA 主材質:耐衝撃性ABS樹脂 重量:480g(2.5インチ)、500g(4インチ)、520g(6インチ) .357マグナム・カートリッジ1箱6発入り1,200円、 スピードローダーM 1,000円、 Kフレーム用サービスタイプラウンドグリップ(ウォールナットウレタン仕上げ)3,600円、 Kフレーム用オーバーサイズスクェアーグリップ(ウォールナットウレタン仕上げ)4,500円
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ウエスタン・アームズ
コンバット・コマンダー・スペシャル(1983)
センターファイア革命
ウエスタン・アームズ(WA)は、1978年にMGCと技術提携を結び、MGCの1911ガバメント(ミリタリーモデル、GM2)をベースとしたコンバットカスタムの製作に乗り出した。
当時ガンファンの中にはまだコンバットシューティングがそれほど知れ渡っていなかった。なにしろIPSCが設立されたのが1976年のことだ。WA社長の国本圭一さんが旧Gun誌にコンバットシューティングの武者修行リポートなどを寄稿して、ようやく知られ始めたくらい。
ところが、高価なカスタムだったにもかかわらず、これが大ヒット。スタイルを真似するコンバットシューティング・ブームと、プラスチックモデルガンを好みの形にするカスタムブームが起きた。
その後もWAは1981年のPPK/Sでハンマーの衝撃をフレームに伝えないエンゲージ・ハンマーシステムや、メタルチャンバーカバーを、1983年にはAR-7のCPブローバック化にあたり開発した本家のMGCより早く、Oリングを使ったCP-HWにつながるカートリッジを採用するなど、いくつものイノベーションを起こしてきた。
1983年から始まったシューター・ワンを使ったューティングブームでは、競技に使うための銃は、モデルガンに付きものと言われた不発、暴発、ジャムを極力減らす必要があった。そこでWAが開発したのが、改造不可能な後撃針方式、センターファイアだ。不発、暴発をほぼなくすことができた。発案から試作、調整、完成まですべて1人で担当したのは浦部雅博さん。
MGCも、すぐにその優秀さを認め、自社のショート・リコイル・ガバメント(GM5)に採用した。そして、それは他の各社へも広まっていくことになる。現在ブローバックモデルガンと言えば、センター方式が当たり前だが、それはWAのコンバット・コマンダー・スペシャルから始まったのだ。

DATA 主材質:耐衝撃性ABS樹脂
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※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
TEXT&PHOTO:くろがね ゆう
この記事は月刊アームズマガジン2025年9月号に掲載されたものです。
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