2025/06/05
オールドモデルガンアーカイブ:度肝を抜かれたシューティングカスタム 01
オールドモデルガンアーカイブ
度肝を抜かれたシューティングカスタム
1950年代末から1960年代初めにかけての最初のトイガンブームの頃から、射撃用のトイガンは存在した。そしてモデルガンが生まれ、安全基準が作られ、弾の飛ばない射撃用の銃も作られた。そんなモデルガンの黎明期からプラスチック全盛期に掛けて発売された射撃用銃には、実に驚きに満ちたモデルが存在する。今回はそんなシューティングカスタムとも呼ぶべきモデルガンから、多くの人が度肝を抜かれたモデルをピックアップしてみた。
MGC
ターゲットピストル TP 19-63M

MGC ターゲットピストル TP 19-63M メーカー:MGC ※表面を白・黄・金色などに着色し、銃口を閉塞していれば所持は可。 |
翌年にアジア初のオリンピック開催を控えた1963年、射撃競技でも日本人選手の活躍が期待されていたことから、純国産モデルガン、スライドアクションのワルサーVP-IIを発売して勢いに乗っていたMGCは、射撃競技用の銃もモデルガンとして発売することにした。
それがターゲットピストルTP 19-63M。VP-IIをベースに、多くのパーツを共用とすることで開発費を抑え、VP-IIの発火モデルより安い3,500円で発売した。
イメージとしてはヘンメリーのM200を参考にしたとされる。機構としては、VP-IIのようなスライド・アクションではなく、1発ごとに手動でスライドを操作してコッキングして発火させる方式だったが、発火と同時に、銃口部分に取り付けた5連発のシリンダーに装填したプラスチックの弾を発射することができた。
シリンダーも手動で回転させてやらなければならず、プラスチックの弾丸は10mほどしか飛ばなかったというが、これを警察庁に提出して意見を伺ったところ、プラスチックの弾でも火薬の力で飛ばすのは、改造防止の安全対策が施されていてもよろしくないという判断だったという。MGCは発禁にされる前に自主的に販売を中止した。いろんな意味でビックリのモデルガンだった。
とは言ってもあくまでも黎明期、モデルガンがどうあるべきか定まっていなかったころのモデル。これ以降、MGCはいっさい弾を飛ばすモデルガンは作らなかった。




MGC
ヘンメリーフリーピストルカスタム
MGC ヘンメリーフリーピストルカスタム メーカー:MGC ※全長や重量のデータはメーカー発表がないため、実測値です。また価格は発売当時のものです。 |
1964年に開催された東京オリンピックの射撃競技、男子50mフリーピストルで日本の古川貴久選手が銅メダルを獲得した。その時、使用した銃がヘンメリーモデル100だったとされる。
実際のところ、このヘンメリーモデル100は1948年のオリンピック・ロンドン大会と、1952年のオリンピック・ヘルシンキ大会のフリーピストルで、金銀銅を獲得した3選手全員が使用していたことから、フリーピストルの最高峰と称えられた名銃だ。
MGCは東京オリンピックの結果を受けて、古川選手の健闘を称え、ヘンメリーモデル100をモデルガン化することを決定した。仕様はほとんど手作りのようなスチール製の無可動カスタム。広告で購入希望者を募り、地域ごとに数を決めて抽選を行ない、当選者に配布(当時のMGCの表記)したという曰く付きのモデル。その数は30挺ほどだったとされる。
価格は、発売当時の大卒初任給が21,000円だった時代の6,000円。これは2023年の大卒初任給で換算すると68,000円くらいに相当する。無可動モデルでこの価格はかなり高いようにも思えるが、現在のプラスチック製フル機能のブローバック高級カスタムが160,000〜200,000円ほどすることを考えると、そうでもないのかもしれない。
このモデルと同時にスライドアクションのワルサーPPKベースのカスタム、ワルサーターゲットピストルも限定で30挺ほど作られ、抽選により7,000円で配布されたという。残念ながらボクは木製グリップしか見たことがなく実態はよくわからない。
ヘンメリーは弾が飛ばないどころか、ほとんど動くところのないソリッドモデル。驚きのシューティングカスタムだった。




※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
TEXT&PHOTO:くろがね ゆう
この記事は月刊アームズマガジン2025年7月号に掲載されたものです。
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