2025/08/04
オールドモデルガンアーカイブ:革命を起こしたモデルガン 中編
今モデルガンは、撃って遊べるものから飾って楽しむものまで、高いレベルのいろんなタイプがある。しかしここにいたるまでには、様々なチャレンジや失敗、発明や工夫があった。そんな中から、あらためて歴史を変えたエポックメイキングなモデルガンを振り返ってみよう。
MGC
ハイウエイ・パトロールマン.41ヘビーデューティ・マグナム(1972)
プラスチック革命
モデルガンがリアルになってくると、これを犯罪などに悪用しようとする者が現れる。そして事件を起こし、ついに1971年、モデルガンは法律によって規制を受けることになってしまった。それは、金属製模造拳銃(ハンドガン)は銃口を閉塞し色を白または黄色(特例として金色も可)にしなければ所持できないというもの。未成年であっても、違反すれば懲役または罰金が科せられる可能性がある。
そこでMGCが打ち出したのが、革命的新機軸、プラスチック製のモデルガン。MGCは金属モデルの半額ほどの価格でデトネーター方式ブローバックを組み込んだオートマチックのSIG SP47/8と、スタート用雷管も使える豪快な発火が楽しめるリボルバー、ハイウエイ・パトロールマン(ハイパト)の2機種を発売した。
しかし最初は拒否反応を示す人が多く、なかなか受け入れてもらえなかった。軽い、おもちゃっぽい、手にしたとき冷たさがない…などなど。
そこでMGCは金属製プロップガンがなくなって困っていたTV・映画業界へ、プラスチックモデルガンを無償で提供するプロモーションを開始。結果、特に扱いが簡単だったハイパトがあちこちで使われるようになり、画面やスクリーンでよく見かけるようになった。クライマックスでは敵も味方もハイパトで撃ち合いするような状況も生まれるほど広まった。
するとプラスチックモデルガンも徐々に人気が出てきて、ついには大ヒット。ファンの間でも定番モデルとなった。
黒くてリアルな外観、銃口から発火ガスが抜け、汚れがたまりにくく、掃除も楽。しかも頑丈で容易に壊れず、プラモデル作りのノウハウがあれば、塗装をしたり、カスタム化も可能で、自分好みのスタイルにすることもできた。これは金属モデルだけだった時に比べると、大きな進歩であり、今につながる最初の一歩だった。
DATA 主材質:耐衝撃性ABS樹脂
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。 |




マルシン
ワルサーP.38 ショート・リコイルBLK(1980)
閉鎖系PFC革命
1977年の第二次モデルガン法規制により、モデルガンの主役がプラスチックに移りつつあった1980年、マルシンが衝撃のプラスチックモデルガンを発売した。それがニュー・ワルサーP.38ショート・リコイルBLKだ。
当時すでにキャップ火薬も発売され、オートマチックはブローバックが当たり前になっていた。そしてMGCのデトネーター方式は火薬のセットが簡単で、射撃後の掃除も楽だったことから絶好調で、S&WのM59などが大ヒットとなっていた。そこへマルシンのニューP.38の発売だった。もちろんブローバックだったが、前年に発売されたまったく新しいブローバックシステムの「P.F.C.(プラグ・ファイアー・カートリッジ)方式」の改良型が搭載されていた。撃発がデトネーターに被さったオープンなカートリッジ内で起こるのではなく、カートリッジ内の閉鎖空間で起こることから、のちに閉鎖系と呼ばれるようになる方式だった。当時は撃発音は大きくなかったが、大きなパワーが得られることから、そのまま長物への応用も可能な優れた方式だった。
しかもニューP.38には、ロック機構はないもののショートリコイルが再現されていた。またダブルアクションやデコッキング機構などの緻密なメカが正確に再現され、外観も実銃に忠実でプルーフマークやシリアルナンバーも打たれていた。外観も中身もそれまでで最高のP.38だと、多くのファンの心を鷲づかみにした。
マルシンはニューP.38の大ヒットで一気に知名度が上がり、ファンからの評価も高く、たちまちトップメーカーだったMGCと肩を並べるまでになった。そして、それ以降のブローバックは各社が競って閉鎖系のシステムを開発し、閉鎖系システムの戦国時代へと突入していく。デトネーター系ブローバックのパイオニアのMGCさえもが、1982年には閉鎖系のCP方式を開発し、ショート・リコイル・ガバメント(GM5)に採用している。それくらいインパクトがあった。マルシンはまさに歴史を変えた。

DATA 主材質:耐衝撃ABS樹脂
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※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
TEXT&PHOTO:くろがね ゆう
この記事は月刊アームズマガジン2025年9月号に掲載されたものです。
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