2025/09/05
オールドモデルガンアーカイブ:世界をぶっ飛ばした.44マグナムの金属モデルガン【中編】
1971年、クリント・イーストウッドが映画『ダーティハリー』で.44マグナムのS&W M29をぶっ放してから、アメリカはもちろんのこと世界中に.44マグナムとM29ファンが爆誕し、大ブームとなった。もちろん日本も例外ではなく、そこに1975年から.44マグナムのスーパーブラックホークを使う超過激暴力刑事、加納錠治の活躍を描いた劇画『ドーベルマン刑事』(原作/武論尊、漫画/平松伸二)の週刊少年ジャンプ(集英社)での連載が始まり、さらに.44マグナム人気に拍車を掛けた。
※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※拳銃型の金属製モデルガンは、1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルであっても、経年変化等によって金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。
マルシン
ルガー・スーパーブラックホーク(1977)

※写真のモデルは真ちゅうめっきが剥がれたため、金色スプレーで再塗装されています。オリジナルの表面仕上げではありません。
●1クラス上の仕様で逆転大ヒット
マルシンは、モデルガン創成期から中田商店の下請けとして活躍し、1973年からは中田商店の金型を引き取って自社ブランドでモデルガンを製造・販売し始めた。その後、M16A1やウージーなど話題となったモデルガンを発売したものの、当時はあまり注目されていなかった。
そんな1977年、モデルガン業界とモデルガンファンの間に衝撃が走った。2回目のモデルガン法規制が決定し、12月1日から施行されることになったのだ。これにより金属製モデルガンの大半が禁止となる。ただ、販売目的の所持を禁止するもので、施行の時点で持っているものは売買しないかぎり対象とならなかったことから、それまでに買っておこうと、日本全国で買いだめによる一時的なモデルガンブームが巻き起こった。
一方メーカーは、にわかモデルガン景気に沸く中、新規開発を控えることになり、おそらく1977年はそれまでのモデルガン史上、もっとも新製品発売の少ない年となった。
それでもマルシンは、法規制後も販売を続けられるリボルバーの新製品を発売することにした。それが.44マグナムのスーパーブラックホークだった。ハドソンのスーパーブラックホークが大人気となっている中、まだ勝機があると判断した。
マルシンは、あえて.357マグナムのブラックホークは作らず、銃身長も7.5インチのみとした。ただ差別化を図るため、パーティングラインや加工跡を消し、全体を磨き上げてピカピカの仕上げにした。ひと目でハドソンのものとは違うとわかるレベル。さらに当時はオプション扱いだった木製グリップを標準装備とした。これでハドソンより500円高いだけ。
これまた大ヒットとなった。ハドソンのスーパーブラックホークを買った人もあらためて買うほどの人気ぶり。これによりマルシンの名は多くのファンが知ることになった。




DATA
主材質:亜鉛合金
撃発機構:シングルアクションハンマー
発火機構:カートリッジ内発火
カートリッジ:インナーロッド方式クローズドタイプ
使用火薬:平玉紙火薬
口径:.44マグナム
全長:333mm
重量:1,155g
装弾数:6発
発売年:1977年
発売当時価格:8,000円(カートリッジ6発、木製グリップ付き)
※smGマークのあるもの以外は売買禁止。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
国際産業
ルガー・スーパーブラックホーク 44マグナム(1978)

●ド迫力の10 インチ・モデルでスマッシュヒット
国際産業は、.44マグナムブームが起きるといち早く金属製M29を発売し大ヒットを飛ばすなど、マーケットの動向を読むことに長けていた。
プラスチックモデルガンを積極的に進めていたMGCが、次の.44マグナムとして.44 オートマグのブローバックを発売した時も、すぐに対応し、同じ年の内に金属製の.44 オートマグブローバックを発売している。
スーパーブラックホークが人気になると、ハドソンが最初に金属モデルガンで発売したのを見ていて、国際産業は翌年の1977年にはプラスチックでスーパーブラックホークを発売している。これはもちろん1977年12月1日から施行される第2次モデルガン法規制をにらんでのことだろう。
そして新たな展開として、スーパーブラックホークの金属モデルまで、ほぼ1年後に発売している。これはプラスチックモデルを発売した最初からの計画だったのか、市場の動向を見ての判断だったのかはわからない。すでに二番手となったマルシンの金属製スーパーブラックホークが、ハドソンにはなかった美麗仕上げで大ヒットしていた後だ。入り込む余地があるとは思えなかった。しかし、驚いたことに、国際産業は10インチバレルというバントライン並みのロングバレルをラインナップに入れていた。超重く、モンスター級の大迫力。国際産業の金属製スーパーブラックホークでしか味わえなかった。
さらには、確認できていないのだが、プラスチック製スーパーブラックホークとパーツの互換性があるらしかった。もしそうならば、いわゆる着せ替えが楽しめたことになる。のちに他社で発売された金属とプラスチックの両方で作られたほかのモデルではそうなっていた。
自社で同じモデルをプラスチックと金属の両方で作るという手法の先駆けとなったのが、国際産業のスーパーブラックホークであったのは間違いない。まさにユニークなモデルガンだった。




DATA
主材質:亜鉛合金
撃発機構:シングルアクションハンマー
発火機構:カートリッジ内発火
カートリッジ:インナーロッド方式クローズドタイプ
使用火薬:平玉紙火薬
口径:.44マグナム
全長:335mm(7.5インチ)、400mm(10インチ)
重量:1,250g(7.5インチ)、1,400g(10インチ)
装弾数:6発
発売年:1978年
発売当時価格:7.5インチ 8,500円、10インチ 9,900円(各カートリッジ6発付き)
*10インチはつや消しの特殊めっき使用
※smGマークのあるもの以外は売買禁止。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
TEXT&PHOTO:くろがね ゆう
この記事は月刊アームズマガジン2025年10月号に掲載されたものです。
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