2025/09/04
オールドモデルガンアーカイブ:世界をぶっ飛ばした.44マグナムの金属モデルガン【前編】
1971年、クリント・イーストウッドが映画『ダーティハリー』で.44マグナムのS&W M29をぶっ放してから、アメリカはもちろんのこと世界中に.44マグナムとM29ファンが爆誕し、大ブームとなった。もちろん日本も例外ではなく、そこに1975年から.44マグナムのスーパーブラックホークを使う超過激暴力刑事、加納錠治の活躍を描いた劇画『ドーベルマン刑事』(原作/武論尊、漫画/平松伸二)の週刊少年ジャンプ(集英社)での連載が始まり、さらに.44マグナム人気に拍車を掛けた。
※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※拳銃型の金属製モデルガンは、1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルであっても、経年変化等によって金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。
CMC
S&W 44 Magnum M29(1976)

●初めてリアルに再現されたS&Wメカ
映画『ダーティハリー』(日本劇場公開1972年)と、『ダーティハリー2』(日本劇場公開1974年)で.44マグナム人気が盛り上がり、MGCのプラスチック製.44マグナムが大ヒットしていた1975年、国際産業が最初の金属製M29「44コンバット・マグナム」を発売した。皆がその重さと存在感に驚き、大ヒット。しかしメカニズムは、MGCが1969年のニュー・チーフで確立した簡易S&Wメカと同じ(プラ44マグナムも同じ)だったため、金属モデルガン好きに多かったマニアックなファンにはものたりないものだった。
そこに切り込んだのがCMCだった。M29のモデルガンとしては最後発。金属製で1976年の発売。初めて、トリガーを引き切るまでハンマーをブロックするという安全機構「ハンマーブロック」まで再現した、本格的なS&Wメカを採用していた。原型製作は六研の六人部登さん。メカニズムはもちろん、耐摩耗性に優れる亜鉛合金の一種であるベーリック材の使用、トリガーピンを実銃同様別部品にするなど、攻めた設計。一方で、精度の低い量産モデルガンでは、リアルメカは作動が重くなる傾向があり、発火全盛期の当時は、価格が高めなこともあり、大ヒットとまでは行かなかったようだ。それでもマニアックなファンには受け、以後のリボルバーモデルガンの流れに一石を投じたことは間違いない。


DATA
主材質:亜鉛合金ダイカスト、ABS樹脂(グリップ)
撃発機構:シングル/ダブルアクションハンマー
発火機構:カートリッジ内発火
カートリッジ:インナーロッド方式クローズドタイプ
使用火薬:平玉紙火薬 2〜3粒
口径:.44マグナム
全長:
358mm(8 3/8インチバレル)
310mm(6.5インチバレル)
247mm(4インチバレル)
重量:
1,250g(8 3/8インチバレル)
1,150g(6.5インチバレル)
980g(4インチバレル)
装弾数:6発
発売年:1976年
発売当時価格:
8 3/8インチバレル 7,800円(カートリッジ6発付き)
6.5インチバレル 7,300円(カートリッジ6発付き)
4インチバレル 7,000円(カートリッジ6発付き)
※smGマークのあるもの以外は売買禁止。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
ハドソン
ルガー・スーパーブラックホーク 44マグナム 7 1/2インチ(1976)

●最初の量産スーパーブラックホーク
ダーティハリーの.44マグナム人気で盛り上がっていた1975年、劇画『ドーベルマン刑事』(原作/武論尊、漫画/平松伸二)の週刊少年ジャンプ(集英社)での連載が始まった。主人公の加納錠治は警視庁の凶悪犯罪専門の特別犯罪課の刑事で、愛用銃は.44マグナムのニュースーパーブラックホーク。過激なバイオレンス描写と、漫画らしい大げさな.44マグナムの超絶パワー表現が評判となり、.44マグナム人気にさらに拍車を掛けた。
M29で他社に後れを取ったハドソンは、一発逆転となるかもしれないもう片方の人気.44マグナム、スーパーブラックホークのモデルガン開発に乗り出した。当時はまだ金属製モデルガンが主流だったので、スーパーブラックホークは金属モデルガンで作られることになった。
設計を手がけたのは六人部登さん。ウエスタンアームズが実銃を取材して1975年に発売した、初めてのモデルガン化となる高級カスタムの真ちゅう製.357マグナム・ブラックホークを参考に、亜鉛合金のダイカストで量産に向くようにアレンジし、.357マグナムのブラックホークと、.44マグナムのスーパーブラックホークを設計したという。そのため一部のパーツはウエスタンアームズの真ちゅう製.357マグナム・ブラックホークと互換性があった。さらにはブラックホークとスーパーブラックホークの違いは、シリンダーにフルートがあるかないかと、カートリッジサイズのみで、ほかは同じサイズで作られていた。実銃のブラックホークにも.44マグナム口径があったようなので、あながちこじつけという訳ではないらしい。ただノンルートシリンダーはスーパーブラックホークから。
いずれにしても、44マグナムの金属モデルを求めていた人にはそれで充分。なにしろ一般庶民にも手が届く価格帯の量産モデルガン第1号。その後他社からも金属製の量産モデルガンが発売されたが、先手必勝の理どおり、一番売れたのはハドソンだったのではないかと言われている。




DATA
主材質:亜鉛合金
撃発機構:シングルアクションハンマー
発火機構:カートリッジ内発火
カートリッジ:インナーロッド方式クローズドタイプ
使用火薬:平玉紙火薬、のちにキャップ火薬
口径:.44マグナム
全長:データ表記なし
重量:1,000g
装弾数:6発
発売年:1976年
発売当時価格:7,500円(カートリッジ6発付き)
オプション:木製クルミ材グリップ 1,500円
※smGマークのあるもの以外は売買禁止。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
TEXT&PHOTO:くろがね ゆう
この記事は月刊アームズマガジン2025年10月号に掲載されたものです。
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