2025/09/21
造形と機能が交差する一挺 アーマライトAR10を無可動実銃で
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
ARファミリーの元祖
M16の元祖であるAR10は1956年に発表された。M14とほぼ同時期に開発された、アメリカの第一世代突撃銃である。アルミ合金と樹脂素材が採用され極めて軽量に仕上がっている一方で、射撃時の反動はマイルドで、フルオート射撃時のコントロールがしやすかった。その理由は設計当初から強力な.30-06弾を使用することを前提に設計されていたためで、イギリス軍に採用されたFALのようにフルオート射撃時のコントロールが困難という理由でフルオートが取り払われるということもなかった。


M1ガーランドの後継を決めるトライアルに参加するも、テスト中にバレルが破損する事故を起こして脱落し、ヨーロッパでは先に評価を得ていたFALに実績のないAR-10が勝つことはなかった。優れた性能でいくつかの国での採用を勝ちとったが、冷戦下における政治的な配慮や生産の遅延などの様々な理由でキャンセルが相次いだ。悲運のAR10の最大の功績は、AR15の成功に繋がる実績と改良の積み重ねであり、その経験をもってAR15を誕生させたことであろう。
- 全長:1,045mm
- 口径:7.62mm×51
- 装弾数:20発
- 価格:¥550,000
- 商品番号:【2637】
AR10が歩んだ流転の道
意外なことだがAR10の多くはアメリカ製ではない。アーマライトはアメリカに拠点を置く企業であるが、AR10を開発した時期は大規模な生産設備を持っていなかった。会社を立ち上げたばかりでAR-5がアメリカ空軍に採用されたことで、民間市場への参入は軍需での結果と評判を確立してからと判断し、設計に専念した。そのため、AR10はオランダのAIに製造権が売却され、AR10の量産はAIにおいてスタートしている。これはヨーロッパではまだアサルトライフルへの移行が終わっておらず、採用の可能性が残っていたからだ。AIにおいてAR10は改良が続けられて完成した。オランダで製造されたAR10は、メーカーの頭文字を冠して「AI AR10」と呼ばれ、1957年から生産を開始したが、オランダ政府はAR10の採用に難色を示した。本国での大量生産の見込みがなくなったことと生産ラインの構築の遅れから、AIがライセンス契約を打ち切られた1960年までわずか3年間しか製造されていない。その総生産数は1万挺以下で、軍用銃としては少ないがオランダ以外にも西ドイツ、オーストリアにも提出され、フィンランド向けにはソ連の7.62mm×39弾用に改造したものまで造られている。


最初に量産されたAR10はキューバ、スーダン向けで、その次の量産モデルは改良が加えられたポルトガル・モデルである。この他にも様々なバリエーションが存在するが、 プロトタイプやトライアル、試作等でごく少量が作られただけで、量産されたのは 第一世代と第二世代のポルトガル・モデルの2種類のみである。 なかにはカービンモデルや バイポッドが付属するモデルも存在したが、販売促進には役立っていない。AR10の権利がコルトへ売却されアーマライトがAR10に関与できなくなったことでAR10の歴史は幕を下ろされてしまう。しかし実際のAR10の性能は他のアサルトライフルと比べて遜色はなく、導入したところでは永く活躍を続けた。


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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2025年10月号に掲載されたものです。
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