2025/05/20
あの“バトルライフル”が、イスラエルでこうなった!
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
イスラエル初の統一されたライフル
ベルギーのFN FALは多くのバリエーションが存在する冷戦時代に広く採用されたバトルライフルだ。10ヶ国以上の国でライセンス生産され、西側陣営のスタンダードライフルとなったが、部品の互換性に関しては製造国によって違う。また、製造国の言語によって独自の名称で呼ばれておりイスラエルでは自動小銃を意味する「Romat」と呼ばれている。1948年の第一次中東戦争では第二次世界大戦の余剰銃器で武装していたが、1955年にFNFALを歩兵ライフルとして採用することを決定した。


イスラエルは当初、FALを非常に気に入り、小銃型とフルオートも可能な支援火器型の2種類を採用したが、1972年にはガリルに代替されてしまう。17年間とFAL系の使用期間としては短命に終わってしまったが、これは情勢によるものだ。1950年代に選択できるライフルとしてFALはベストな選択であった。現在でもイスラエル製のFALは、イスラエル国外で使用されているのが確認されている。
- 全長:1,078mm
- 口径:7.62mm×51
- 装弾数:20発
- 価格:¥330,000
- 商品番号:【9195】
イスラエルFAL自動小銃後期型
イスラエルにおけるFALの製造は順調だったわけではない。初期型は完全にベルギーのFNが製造を行なっており、最後までバレルやレシーバーはFNから供給されていた。そもそも当時のIMIにFALを製造する余裕はなかったが、アラブ諸国との戦争に備えてIMIが開発して成功させたUZI短機関銃のライセンスと引き換えに、FNからFALのライセンスを取得。イスラエル側は修理用スペアパーツの製造から始まりライフル製造のノウハウを学ぶことになる。


イスラエルのFALは、1956年の第二次中東戦争で初めて実戦投入され、1967年の第三次中東戦争の頃にはイスラエルの標準的なライフルとなったが、中東の砂漠では激しい砂の侵入により、作動不良を繰り返した。ボルトキャリアにスリットを切って砂が落ちるようにするイギリスのL1と同様の改良を行なったが、完全な解決策とはならなかった。1973年の第四次中東戦争まではイスラエルの標準的なライフルとして使用されていたが、ガリルの配備により段階的に廃止される。イスラエルにおけるFALは早々に見切りを付けられたかたちとなったが、これはイスラエルの特異な状況によるものだ。


イスラエル軍では機械化が進み、全長の長いFALは車輌からの下車・展開を遅らせ、車内での取り回しも困難であることが明らかになった。また対峙するアラブ諸国のライフルは悪環境に強いAKでは分が悪い。加えて有事の際に、弾薬を供給してもらえる唯一の友好国のアメリカと同じ弾薬を使わざるを得ないというのもあったからだ。建国以来、敵国に囲まれたイスラエルは自国の防衛に備え、兵士に有能な兵器を提供する必要があったからこそFALが選ばれた。欠点もあったが、それでも数度の紛争を勝ち抜いた雄姿は「自由世界の右腕」と呼ばれたFALを象徴するバリエーションモデルのひとつであろう。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2025年6月号に掲載されたものです。
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