実銃

2024/09/23

WWⅡからベトナム戦争までアメリカ兵に使用されたカービン「US M1カービン」【無可動実銃】

 

US M1カービン

 

この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。

 

カービンの概念を変えたライフル

 

 M1カービンは後方部隊や支援部隊のために開発された軽量ライフルである。騎兵用ではないのにカービンという名称が付いた由来は、本来騎兵用小銃は歩兵用小銃との弾薬の共用を考慮されていない別系列の小銃であり、新しい.30カービン弾とともに採用されたことで、カービンの名称が継承されたのだ。

 

US M1カービン
戦時中の要望に応え銃剣を取り付けるためのタイプ3バンドが開発された。このバンドは既存のカービンの銃身に特別な加工をしなくてもリベットで固定するだけで装備できた

 

 制式小銃のM1ガーランドよりも短くて軽く、トンプソンより射程が長いM1カービンは、使い勝手のよさも相まって1941年から1945年8月までの大戦中に延べ600万挺が生産された。アサルトライフルの概念が誕生する以前ではあったが、戦場においてその必要性が認識され、M2およびM3カービンはすべてM1カービンがベースとなっている。  

 

US M1カービン
チャージングハンドルの形状はM1ガーランドのものを継承したと思われるほど似ている。ハンドガード後部の4つの穴は固定パーツを付けるためのリベット用の穴である

 

 1994年にM4カービンが採用されるまで、アメリカ軍の制式なカービン銃はM1カービンシリーズだけで、第二次世界大戦からベトナム戦争まで使用され続けた。アメリカ軍においてカービン銃が歩兵用小銃の主軸になる礎を築いたM1カービンは現在でも人気の高いライフルである。

 

US M1カービン

 

US M1カービン

  • 全長:905mm
  • 口径:.30Carbine(7.62mm×33)
  • 装弾数:15発/ 30発
  • 価格:¥297,000
  • 商品番号:【1669】

 

 

代替品から万能兵器への飛躍

 

 先に述べたようにM1カービンは後方部隊や支援部隊のために開発されたのだが、元々そうした部隊には自衛用武器として拳銃(M1911A1)が支給されていた。しかし、戦争の形態が変わるにつれて彼らが戦闘に遭遇する機会が増え、拳銃のみの武装では対応は難しくなってきたからだ。このことはすでに第一次世界大戦終了直後に訴えられていたが棚上げにされていた。その必要性が再びクローズアップされたのは第二次世界大戦開戦直前の1940年になってからである。

 

US M1カービン
初期のセーフティーはボタン式であったがマガジンキャッチとの誤作動が多くレバー式へ改修された。マガジンキャッチの「M」は30連マガジン対応型を示す刻印である

 

 こうした背景からM1カービンは拳銃の強化版といった要素が強く、制式小銃の代替品というより拳銃やサブマシンガンの代替品といったほうが近い。重量2.27kgはトンプソンM1A1の半分で、M1911A1の2倍程度しかない。.30カービン弾は.45ACP弾の2倍の威力と300メートルの射程距離を誇り、小銃的なフォルムから高い命中精度も期待できた。またコンパクトで軽量、リコイルショックが少ないことは空挺部隊が要求した条件にも合致していた。そればかりか、交戦距離の短い市街地戦やジャングル戦でも有効で兵士からの要望も多かった。その汎用性の高さは敵国であるドイツ軍ですら鹵獲したM1カービンの使用例があったほどだ。

 

US M1カービン
リアサイトは簡易型のタイプAと、上下左右に調整可能になった写真のマウント部が切削加工のものがタイプB、マウント部がプレス加工のタイプCの3パターンが存在している

 

 これらの特徴は現在のアサルトライフルに求められる要素にも通ずるものがあり、アサルトライフルの始祖であるドイツのStG44より先にM1カービンは登場している。拳銃と小銃の中間兵器と位置付けられるM1カービンは、現在の視点からすると軍用としてはパワー不足と認識されているが、民間向けや過度なパワーを求めない法執行機関向けとしては最適なライフルとの評価を得ている。

 

US M1カービン
年季の入ったストックは今も美しい光沢を放っている。米国武器省の検査印であるクロスキャノン刻印をわざわざ焼印で入れているのは何かしらの改修をした証であろう

 

 戦後のアサルトライフルの開発に消極的であったアメリカにおいて、M1カービンはその代役を担っていた。フルオート機能の追加もスムーズに行なわれ、M2カービンに進化したが外観上の変更は行なわれていない。M16A1が登場する1970年頃までM1カービンは現役であり続け、同時期に開発されたどの小火器よりも酷使されてきた。欲張らない控えめなキャラクターだが長きに渡って使われたことは、M1カービンが傑作銃であることを証明している。

 

US M1カービン
15発の装弾数はM1ガーランドの2倍の近い装弾数を誇る。あくまでも拳銃やサブマシンガンの代替品であったことから、これらと同様のマガジン形式が取られたと思われる

 

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TEXT:IRON SIGHT

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年10月号に掲載されたものです。

 

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