実銃

2023/06/14

フランスの名銃「FA-MAS」。ブルパップライフルの未来を切り開いたライフルを解説【無可動実銃】

 

 

この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。

 


 

フランスらしい洒落たライフル

 

 独特のスタイルから「トランペット」とも呼ばれるフランス軍の制式小銃FA-MASには、M4やAKとは違った魅力があるライフルだ。

 

 1960年代までのフランス軍の制式小銃は、7.5mm弾を使用するセミオートのMAS49/56ライフルとMAT-49サブマシンガンであった。どちらも信頼性の高い銃器ではあるが植民地での紛争でAKなどのアサルトライフルに苦戦したことから新たな小銃を開発することになった。すでにフランスの周辺国にはFALやG3など成功した小銃があったが、外国からの影響力より脱し、フランスの独自性を追求するド・ゴール主義によって外国製の武器を採用することは考えられなかった。

 

 

 開発時期が5.56mmへのNATO弾変更時期に重なることから5.56mmアサルトライフルとしては初期の部類に入る。加えて先進国では初のブルパップライフルの導入ということでFA-MASは世界中から注目を浴びた。未知の銃であったブルパップライフルの未来を切り開いた功績は高く、名銃といっても過言ではないであろう。

 

 

FA-MAS G2 コマーシャルモデル(#A00769)

  • 全長:750mm
  • 口径:5.56mm×45
  • 装弾数:20/30発
  • 価格:¥605,000

 

 

フランスを支えたアサルトライフル

 

 FA-MASにはM16やAKとも違いシンプルブローバックを改良したレバー遅延ブローバック方式が採用されている。これはブルパップのデメリットでもある排莢口が射手の顔の近くに配置されるレイアウトによる、騒音と吹き戻しの発射ガス減少を目的としたものだ。レバー遅延ブローバック方式では後退するボルトを強制的にレバーで遅延させ、発射ガスと発射音を前方に逃がすという作動を行ない、デメリットを克服した。

 

マガジンハウジング右側にSTANAGマガジン用のマガジンキャッチボタンが付けられたのが従来型のFA-MASとの違いだ。左利きの射手では誤作動を起こしそうである。また民間型のため、ストックの底部にあるコントロールレバーはオミットされている

 

 バレル本体にガスポートやレギュレーターを必要とせず、バレル自体も単純な構造であったが、使用する弾薬はアメリカ軍が当時M16で運用していたM193弾を想定したものであり当初は問題なかった。しかし、現在の標準仕様であるNATO弾を使用すると薬莢がちぎれて動作不良を起こすという問題が後々になって発生し、フランス国内で鉄製薬莢のNATO弾を生産し、他国製のNATO弾の使用を禁じる対処が行なわれている。

 

バレルはライフルグレネード用のリブのないストレートバレルとなっているが、これはコマーシャルモデルのG1と同じ仕様だ


 この問題に対処したのがG2モデルである。フランスのみでの使用ならば支障は少ないが海外販売を見据えた場合、薬莢切れ不良はネックとなった。マガジンも独自の25連マガジンでNATO標準のSTANAGマガジンも使用することができない。この問題は早くから認識されていたが、通常型のF1モデルを陸軍に全数納品するための生産コストが跳ね上がることからG2モデルの採用は、海外での活動や補給を受ける可能性のある海軍コマンドと海兵隊に限られた。

 

外部に飛び出したコッキングレバーをキャリングハンドルの内に配置したのはフランスらしい洗礼されたデザインである

 

 そのためG2モデルの生産数は少数であり、1万挺程度が軍用に製造され、海外向けにも少数が製造されたに留まっている。

 

本来のG2タイプと違い、F1タイプのトリガーガードが使われている理由は民間マーケットではF1タイプが人気のためであろう

 

 フランスの防衛企業GIAT(現Nexter)が小型武器事業を撤退する前に生産された最後のFA-MASバリエーションがG2モデルとなった。G2モデルの最大の長所は現行の5.56mm弾を発射できることにあるが、コマーシャルバージョンのG2モデルはフランス国内用の5.7mm×43(.222レミントン)と欧米ではポピュラーな.223レミントンで製造されているうえに、外観は陸軍型のF1モデルに近づけるなどマニア向けとなっている。
 

短い全長だがフルサイズ並みのバレル長を持つという長所を活かし、安定した射撃で高い命中精度を得るためにバイポッドを装備している

 

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TEXT:IRON SIGHT

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年7月号に掲載されたものです。

 

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