2024/06/21
プラスチック銃器大国オーストリアのサブマシンガン ステアー TMP短機関銃【無可動実銃】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
プラスチック銃器大国オーストリアのサブマシンガン
ステアーはオーストリア軍の小銃を長きにわたり製造してきた老舗メーカーである。特にAUGはブルパップ式と樹脂製ボディというそれまでの軍用銃と異なる革新的な試みで成功を収めている。そのステアーが1990年代に入り対テロ任務や要人警護といった特殊任務向けに開発したSMGがTMPである。
当時のSMGのシェアの大半をH&K MP5が占めていた時代に敢えて登場しただけあり、MP5Kと同等の性能ながら小型、軽量かつ安価というアピールできるセールスポイントが充分にあった。
ところが時代はSMGからアサルトライフルに移り変わり、またソ連の崩壊に伴い西側諸国の国防費の削減と、安価な東側諸国の銃器が大量に市場に出回ったことからTMPのセールスポイントがかき消されてしまったのである。
このような状況下ではTMPの注文は少量に留まざるを得ずステアーでの製造は2001年で終了。その後、スイスのB&TにTMPの製造権利を売却。名称はMP9と変更され、一部改良が施されたものの現在も生産が続けられている。
- 全長:282mm
- 口径:9mm×19
- 装弾数:15発/ 30発
- 価格:¥550,000
- 商品番号:【8546】
ポストMP5を狙ったエポックメーキングなサブマシンガン
TMPはラージピストルと同等のサイズに重量1kg前後のマイクロSMGとして開発された。ボディ全体を強化プラスチックで構成し、内部パーツの点数も41点にとどめるなど徹底的な軽量化が図られている。
作動方式はマイクロロッキングラグをバレル側に設けたロータリーロッキング方式を採用している。作動プロセスは、まず弾の発射に伴いバレルガイド上部に設けられたピンがガイドとなってバレルがボルトとともに後退しながらバレルのみが回転。バレルが後退・回転し終えたところでボルトとの噛み合いが外れてボルトはさらに後退してエンプティケースを排莢。そしてボルトとともにバレルも前進し、ボルトが完全に閉鎖される直前にバレルが回転してボルトと噛み合いロックされる。
この一連の作動プロセスはMP5のローラーロッキング方式よりも部品点数が少なくて済む反面、ボルトへの負担が大きく破損の可能性もあった。ユニークな作動方式に加えてディスコネクターが水平方向に設置されるなど一般的なSMGよりも全高が抑えられている。
TMPは当初から追加アクセサリーの装着を想定しており、バリエーションが少なく済むコストパフォーマンスの高さも特徴であった。トリガーやセレクターなどの操作系はAUGに準じた方式が採用され、ステアーらしさを感じるところは、H&Kらしさを貫いたMP5と通じるものがある。
UZIのようにグリップ部分にマガジンを装填するデザインはハンドガンとしての役割も担わせようとしたことの表れであり、実際に携帯用のショルダーホルスターまで用意されていた。
2000年以降のSMG冬の時代の到来とともにTMPはMP5に取って代わることなくB&Tに売却されてしまった。B&TはサプレッサーなどをH&Kに供給しており、同社がMP5ではなくTMPを選んだということは、TMPがポストMP5としての実力を備えていた証拠と言っても過言ではないだろう。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2024年7月号に掲載されたものです。
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