実銃

2024/02/12

風変わりなショットガン「Kel-Tec KSG」を解説! 【無可動実銃】

 

 

この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。

 

ショットガン界の風雲児

 

 風変りなブルパップショットガンはこのKSGが初めてではない。

 過去にはハイスタンダード10シリーズやマーベリックM88ブルパップといった似たコンセプトのモデルがあったが、モスバーグM500などの機関部をそのまま後方に配置したレイアウト変更型が主流であった。その点でいうとKSGは既存品からの派生型ではなく完全新規で製作された独自性のあるブルパップショットガンだ。

 

バレル直下に配置された円筒形のキャップがマガジンチューブのキャップだ。7発のショットシェルを装填するチューブマガジンを並列で装備させることでコンパクトな本体に見合わない大火力を実現させた

 

 さきの2挺も樹脂を多用した外観を持っていたが、世間からの印象は玩具っぽいというものに留まった。しかしKSGが登場した時代はポリマー樹脂全盛期であったため、世間からの見られ方は異なった。

 

 軽くて気温に左右されない最新のポリマー樹脂素材を多用し、クラシックなポンプアクションで確実な作動性を確保しながらもブルパップ方式と個性的なスタイルでこれまでのショットガンの殻を打ち破ったのがKSGだ。

 

 

Kel-Tec KSGショットガン

  • 全長:675mm
  • 口径:.12GA
  • 装弾数:7発×2
  • 価格:¥330,000
  • 商品番号:【8633】

 

 

個性的なスタイルと堅実性を兼ね備えた傑作

 

 製造元のKel-TecはKSG以前にもポリマー樹脂を多用した銃器の製造を多く行なっていた企業である。前身企業であるグレンデルでは先進的なポリマー製品をいくつか作り出しており、グレンデルP10ピストルなどは1980年代に製造されたポリマーフレームのオートマチックハンドガンであるにも関わらず、脱着式マガジンを持たない、クリップ装填式の構造であることなどが話題を呼び、同社を代表するモデルとなっていた。

 

装填の際はレバーによって左右のマガジンチューブの選択を行なう


 グレンデルからKel-Tecへと社名を変更してからも、他社にないユニークな銃器を製造してきた同社はガンマニアから「風変わりな銃」を作るメーカーとして認知されておりマニアックな人気を持っていた。

 そんなKel-Tecが満を持して開発したショットガンがKSGである。

 

トップレールは充分なスペースがあるので固定サイトから光学機器まで自由に選択できる

 

 ポリマー樹脂を多用し、期待を裏切らない個性的なスタイルはブルパップ方式の利点を活かし、バレル下へマガジンチューブを2本水平に配置することで装弾数を倍に増やした。作動メカニズムと機関部のレイアウトはシンプルなポンプアクション方式を採用し、作動の安定性を確保している。

 

グリップユニットは独立していてピンを抜けば簡単に分解可能。ピンを収めるためのホルダーも装備されている


 完全新規の設計ということから、安全装置などはアンビとなっており、空薬莢は下方に排莢される徹底ぶりだ。固定サイトなどは一切装備せずトップレールに光学機器を装着するのが前提の構造などは、現代銃器らしい割り切った選択である。フォア・アームで2本のマガジンチューブを保護し下部には任意でフォア・アームを付けられるなどのユーザーの銃器事情に合わせられる設計だ。複雑に見えても分解は非常に簡単で4つの基本コンポーネントに難なく分解できる。良いことばかりを並べたが欠点もある。

 

異物が入りにくいストック下部に排莢と装填を行なうためのスペースを確保。構えた状態での操作には訓練が必要だ


 左右のチューブから薬室へと送り込まれる装弾のセレクトは、切り替えレバーで行なうのだが、これが咄嗟の状況で素早く操作できるかは微妙だ。ショットガンは散弾やスラッグなど豊富な弾薬のセレクトにより、用途に合わせた使い方が可能な銃だけにこの点にはやや不安が残る。

 

 だが一目で未来を感じることができるKSGは発売以来人気が高く、市場でも品薄状態で現在ではプレミア価格でしか入手することができない状況が続いている。それほどKSGは所有者を満足させてくれる銃なのであろう。

 

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TEXT:IRON SIGHT

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年3月号に掲載されたものです。

 

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