2023/08/16
「S&W M&P15」S&W初のアサルトライフルはライバル会社「コルト」の名銃であった【無可動実銃ミュージアム】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
S&W初のアサルトライフルは
ライバル会社の名銃
AR-15型ライフルは現在のアサルトライフルの世界において主流となっているものだ。アーマライトが誕生させ、コルトが進化させたARはパテントが切れた1977年以降は少数のクローンが作られる程度だったが、M4カービンの登場以降、数多くのメーカーからより高性能なAR-15型ライフルが発売され、今日の全盛期が到来した。人気は衰えることなく続き、とうとうコルトのライバルである大手ガンメーカーもAR-15型ライフルの製造に参加するようになる。
特に驚かれたのはコルトの最大のライバルであるS&WがAR-15型ライフルを発売したことであろう。両社は自社の個性を主張した製品で激しい競争をしてきたが、S&WがアレンジされていないシンプルなAR-15型ライフルを発表したことに市場は驚いた。これはS&Wが軍や警察が必要とするARを提供するための選択であろう。M&P15は自社で一貫した製造を行なっており、品質の高さとリーズナブルな価格でAR市場においてもセールスを伸ばしている。初のS&W製のAR-15型ライフルとしては大成功となった銃である。
S&W M&P15 自動小銃(#TP36274)
- 全長:813mm/883mm(ストック伸長時)
- 口径:5.56mm×45
- 装弾数:10/20/30発
- 価格:¥352,000
ブランドイメージを損なわないAR
S&Wは、20世紀に多くの名銃を生み出し高い評価とブランドイメージを築いた一大銃器メーカーだ。S&Wの歴史の中でリリースされた製品の多くがハンドガンであり、ライフルの製造はほとんど行なわれていない。
リボルバーでは王者となったS&Wではあったが、1980年代後半頃から始まったベレッタやグロックなどのハイキャパシティオートマチックピストルの台頭により、その地位が崩れ始める。2000年代に入り、いよいよ経営が危うくなってきたS&Wが起死回生の策として打ち出したのがM&P(Military & Police)シリーズである。
軍や警察などで要求される高品質な銃器を提供することを目的としたM&Pシリーズは、9mmオートマチックピストルのM&P9や.357Magを8発装填できるR8リボルバーといった大ヒット製品を生み出し、S&Wは経営危機の憂き目から脱することができた。だが、銃器市場で生き残るには確実に売れるものをリリースし続けていかなくてならない。
そこでS&Wは安定した人気があるAR-15型ライフルの販売を開始、M&P9ハンドガンとセットで警察機関に売り込みをかけた。凶悪犯がボディアーマーを装着していることが多くなった現代では、警察官が乗るパトカーにはショットガンとともにARライフルが常備されていることが多い。
これらのARは市街地で発砲することを前提としており、二次被害を出しにくいようセミオートオンリーかつ命中精度が高いことが求められた。S&Wはそういった需要を的確に見抜き、セールスを仕掛け、見事に成功した。
予算の限られた警察機関に合わせた性能の維持や購買意欲をそそる作りなど、要所を押さえたM&P15はプロが信頼をおくAR-15型ライフルである。銃身長は米国内で合法とされる16インチが採用され、基本的な仕様はコルトのオリジナルモデルや他メーカーのARクローンとほとんど変わらない。
AR市場では後発であることから、爆発的な人気とはいかないが品質に関する評価が高く、民間市場では今後時間を掛けてセールスを伸ばしていく銃である。ポピュラーになったARに無理なオリジナリティを加えることなく、顧客の要求を満足させ、作りの良さで自社ブランド力を出せたM&P15はS&Wの看板製品として長く続くであろう。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2023年9月号に掲載されたものです。
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