2023/07/21
【実銃】意欲的で挑戦的なライフルを生み出す「DRD Tactical」の作り出した狙撃銃「KIVAARI」【前編】
DRD Tactical
KIVAARI
Takedown Rifle
.338 Lapuaマグナムカートリッジを一役有名にしたのは、やはり2009年にイギリス軍王室騎兵隊のCraig Harrisonがアフガニスタンで達成した2,475mの最長狙撃達成記録(当時)であろう。
このミリタリーのスナイパー向けに開発されたカートリッジには、.50BMGと.300ウィンチェスターマグナムの狭間を埋めるという役割もあった。1,000m以上を撃つスナイパーライフルといえばボルトアクションライフルが一般的だが、この.338 Lapuaマグナムを使用するARスタイルセミオートライフルも存在する。その1つとしてDRD Tactical 社のKIVAARIを紹介したい。
.338Lapuaマグナム セミオート
テイクダウンライフル
DRD Tactical社はジョージア州にあるライフル製造会社で、当初はUSミリタリーの各種ライフルのトライアルに積極的に挑戦していた。同社の製品は意欲的で興味深いラインアップなので、簡単に紹介しておく。
- APTUS(アプタス) 特許を取得している“インターナルリコイルシステム”によって、バッファーチューブ内にスプリングを必要とせず、ガスオペレーテッドで簡素化したメカニズムを持つ。DRD 得意のテイクダウンシステムを採用しており、5.56mmと.300ブラックアウトの2つの口径を60秒程でスウィッチすることができる。サイドチャージングハンドルは構えたままでも操作でき、ボルトと連動して前後しないので、煩わしさはない。
- PARATUS Gen2(パラタス ジェン2) APTUSの7.62mm/6.5クリードモア口径バージョン。
- CDR-15 AR-15のテイクダウンバージョン。10.5インチと16インチバレル、そして、5.56mmと.300ブラックアウト口径のスウィッチも、ツールなしで60秒以内にできてしまう。
- M762 AR-10のテイクダウンバージョン。通常のガスインピンジメントシステムを採用して、7.62mmと6.5クリードモア口径のスウィッチが60秒以内にできる。
APTUSとPARATUSは、アッパーフレーム内にリコイルスプリングがあるため、フォールディングストックを採用できるうえに、サプレッサー使用時に発射ガスの吹き戻しが顔面に来ないなど、いくつかの利点がある。
また同社のテイクダウンシステムは全くツールを必要とせず、バレルナットを手で締め付けるだけで、全長が半分になってしまう。当然のごとく小さくパッキングできるので、バックパックに収めてしまえば、外からはバトルライフルを持っているとは思えない。
そんなDRD Tactical社が昨年正式リリースしたのが“KIVAARI”(キヴァーリと読む)で、なんとその口径は.338Lapuaマグナムでありながら、得意のテイクダウンシステムをも採用している。
Kivaariというのはフィンランド語でライフルという意味であり、.338Lapuaマグナムカートリッジが最終的にはフィンランドで完成された(初期の開発はUSAベースのRAI社によって行なわれた)ことから名付けられたという。
DRD社いわく、“.338Lapuaマグナム口径を採用しながら、世界で最もコバート(秘かな、隠蔽した)な、セミオートマティック ガスオペレーテッド ロングディスタンスライフルである”ということになる。
元々DRD社は、M2ミリタリーやローエンフォースメントのスペシャルユニット用のライフルを開発してきており、KIVAARIはポータブルな移動手段を持つ、ロングレンジサポートウェポンとして位置づけられている。
.338Lapuaマグナム口径は、各国の特殊部隊において1,000ヤードを超える距離での効果的な運用がすでになされており、前述のクレイグ・ハリソン氏が2009年に達成した2,475mスナイピングは、その後3年以上も世界記録として破られることはなかった。
映画アメリカン・スナイパーで有名なUSNavy SEALのクリス・カイル氏も、2008年にイラクにおいてマクミラン Tac-338ライフルを使用して1,920m(2,100ヤード)のスナイピングに成功している。今や、.338Lapuaマグナム口径は世界の特殊部隊スナイパーユニットのスタンダードになっているといえよう。
但し、これはその精度には定評のある通常27インチバレルを持つボルトアクションライフルを使って、という前提がある。KIVAARIのようにテイクダウンした状態でAO(エリア オブ オペレーション:戦闘の場)までトランスポートしていき、組み立ててから運用するという前提であると、“One shot, one kill”が必須となるシークレットミッションには使いにくくなる。
逆に、セミオートであるが故の素早くスムーズなフォローアップショットが可能という特性は、中距離である500~1,000ヤード前後から部隊の侵攻をサポートするなどといったOver watch(遠くから見守りサポートする)任務には適しているといえる。
Photo&Text:Hiro Soga
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年9月号に掲載されたものです。
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