実銃

2023/07/15

【実銃】美しきレジスタードマグナムの魅力「S&W Model 27-2 8-3/8inch」【前編】

 

Original

S&W Model 27-2
8-3/8inch Barrel

 

 

 S&W Nフレームはラージフレームとも呼ばれ、Xフレームが登場するまで、同社最大のフレームであった。1907年の.44ハンドエジェクターに始まるNフレームは、パワフルな大口径アモが撃てることが特徴だ。

 

 1957年にモデル名を番号で表すようになった以降も、モデル20(.38-44)からモデル29(.44マグナム)まで、5種類の口径による10種類のラインナップを揃えていたことからも、その人気ぶりが伺える。中でもモデル27は“6連発のキャデラック”と呼ばれるほどの豪華版だ。

 今回はそんな1974年製モデル27-2、8-3/8インチ銃身モデルにスポットライトを当ててみたい。

 


 

S&W Nフレーム

 

 もはや“過去の遺物”とまで呼ばれているリボルバーだが、1980年代に射撃の世界に飛び込んだ私にとって、ホイールガン(リボルバーの別名)は信頼できる相棒であり数々の競技を戦ってきた戦友のような存在だ。

 

 渡米した当初、興味深く眺めさせてもらったポリスオフィサーたちの腰には、黒光りするモデル27や28、もしくはモデル581などが収められており、「やはり現実はリボルバーなのだなあ」と納得してしまった記憶もある。

 

1975年製 モデル27-2 8 3/8インチバレル。ちなみに重量は1,413g

 

 まず欲しくなってしまったのはモデル27だった。アリゾナ州で偶然知り合った大学のスクールポリスがこの5インチモデルをホルスターキャリーしており、非番の時に撃たせてくれるという大事件がその大きな理由であった。

 

このテイパードバレルの存在感は格別です。長すぎる? いいえ、適度に美しく長いのです

 

 シリンダーやマズル付近はホルスターウェアによるガンブルーの擦れはあったが、とにかくその美しさが際立っていた。深いブルーフィニッシュやトップストラップのチェッカリングなど、自分が所有していたモデル686と比べると、格の違いを目の当たりにしてしまった。そしてまたその撃ち易さが驚きだった。

 Nフレームから撃つ.357マグナムのリコイルたるや、もうスウィートの一言に尽きる。確かにデカくて重いが、リコイルはぐっとマイルドになり、Kフレームと比べるとそれこそ雲泥の差がある。

 

このままではスピードローダーも使えないし、ワイドトリガーでのダブルアクションはしんどいが、これはこれでいいのです

 

 スミス&ウェッソン(S&W)社が初めてのラージフレーム、スウィングアウトシリンダーリボルバーをリリースしたのは、1907年のことであった。

 

 その正式名称は“.44ハンドエジェクター”だが、ヨーク部分に設けられたシリンダーロックの存在から、“トリプルロック”もしくは“ニューセンチュリー”とも呼ばれていた。同社が初めてスウィングアウトシリンダーを発表したのは1896年の“.32ハンドエジェクター”と、1899年の.38口径“ミリタリー&ポリス”であり、.44ハンドエジェクターは、.44スペシャルと呼ばれる、パワフルな口径に耐えうるように大型かつ堅牢なフレームが与えられていた。

 


 1920~30年代になると、サブマシンガンやライフルといった重武装の凶悪犯に対抗するポリスにとって、.38口径リボルバーでは威力不足が問題になりつつあった。そこで1930年にS&W社がリリースしたのが、.38-44 ヘビーデューティ、.38-44 スーパーポリスと呼ばれるモデルだ。これは.44ハンドエジェクターを.38口径にリバレルしたもので、パワーアップした.38-44口径158gr弾を1,150fpsで飛ばすことができた。ちなみに.38スペシャルは同じ158gr弾で850fpsだ。

 

バレルのリブからトップブリッジまで入れられた、ファインチェッカリング。モデル27の証です。ホワイトアウトラインのリアサイトと、イエローインサートのフロントサイトも珍しい


 1935年には、ファイヤーアームズ界にエポックメイキングな出来事が起こる。S&W社がウィンチェスター社と共同して、“.357マグナムカートリッジ”を開発したのだ。これはポピュラーな.38スペシャルのケースを1/8インチ(約3.2mm)延長してパウダーを増量し、158grの弾頭を1,500fps(8-3/8インチ銃身から発射。ただし後に安全のため1,200fpsあたりまで減速された)で飛ばすという画期的なカートリッジであり当時、“最もパワフルなハンドガン”と呼ばれた。

 

カウンターボアードのシリンダー。カートリッジのリムまでしっかりカバーしてくれる。バレルのフォージングコーンの分厚さが、Nフレームの安心を誇示している

 

 当初S&W社からリリースされたリボルバーは“.357 Registered Magnum(レジスタード マグナム)”と呼ばれ、基本的にはカスタムオーダーベースで、バイヤーは前後サイト、銃身長(3.5~8.75インチ)、フィニッシュ、グリップの組み合わせをオーダーする必要があった。この“.357レジスタードマグナム”が、モデル27の原型となる。


 “.357レジスタード マグナム”は、1939年に5,200挺ほどを製造して、戦需生産が忙しくなったこともあり製造中止となった。これらの稀少なリボルバーは、ごく稀にオークションなどに現れるが、程度が良ければ2万ドル以上の価格を付けるレアアイテムとなっている。

 

.44スペシャルのモデル24(左)と、モデル27 3.5in(右)のシリンダー比較。多少のプレッシャーではびくともしない


 戦後になると、“.357マグナム”という名称で製造が再開され、3.5、5、6、6.5、8.375インチ銃身のモデルが存在した。1956年製造のモデルまでは、そのサイドプレート上部に固定スクリューのある“5スクリュー”とニックネームされる旧モデルで、1957年からは現在まで続くモデル27という名称になった。

 

 1954年には、.357マグナムの廉価バージョンとして各部の仕上げを簡素化し、サテンブルーフィニッシュとした“ハイウェイパトロールマン”が、4&6インチバレルでリリースされる。1954年だけで8,427挺が生産されたという記録があるので、これもポピュラーなモデルであったことがわかる。1957年からはモデル28と名前を変更し、1986年まで製造された。

 

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Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年4月号に掲載されたものです。

 

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